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ランス 〜another story〜 IF
第7話 魔人ホーネット
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 だが、ホーネットは笑っていた。否定されたのは一度ではないから判っていた、と言わんばかりに。

「ええ。その様ですね。少々疲れ具合が見えますので、そうではないか、と。……ですが、私は貴方の前だと 心が安らぎます。とても楽しい気持ちになれる。心から笑う事が出来るんです。……それを、持っていた人がユーリと言う人間でした。私達は少々、特別な関係でしたが。私にとってはかけがえの無い存在。かけがえの無い人でした。……そんな雰囲気を纏っているのが 貴方なのです。違うと否定されるのに……不躾ではありますが、許してください」
「人に頭を下げるなど止めてくれ。……上位である魔人がする事ではない。ホーネットがそれをしていては示しがつかないだろう?」
「そう、ですね。それもあると思い、私はサテラ達を先に行かせました。貴方と話をしたかったから」

 ホーネットはそっと空を見上げた。この蒼く広い空のしたで、また出会う事が出来たという幸運をかみしめる様にそっと目を閉じる。

「私は難しい立場にいますから。今の魔王様の様に 自由気ままでに行動する訳にはいきません。……この平和も何時までもつか判らない現状ですので」
「……だろうな。ランスはもうそろそろか?」
「はい。進行しています。……最近は特に機嫌が悪く、誰も傍に寄せません」
「ビスケッタはどうだ? 彼女の甲斐甲斐しい世話だったら」
「はい。最低限してくれてとても助かってはいるのですが……」
「……そうか。人の身でありながら そこまで尽くす彼女には脱帽だ」

 ふぅ、と息を吐くゾロ。
 人間界において最高潮と言って良いメイドがビスケッタ。ご主人に尽くす事を喜びとし、全てのメイドとしてのスキルが備わっているスーパー・メイド。彼女と唯一張り合う事が出来る存在と言えば、まだとある 家を守り続けているメイド・クラリスくらいだろう。……そのクラリスと言う少女についてはまた後々に……。

「それとヒララレモンの消費がここ数日で数倍から数10倍に跳ね上がりました」
「本格的な魔王化……か。判った。教えてくれてありがとう。感謝する」
「いえ……私が好きでやっている事です。……魔王様を、裏切る行為に違いないのですが、貴方の前では私は私を偽る事は出来ません」

 少しだけ苦しい表情。その背徳に呵責を感じているのだろう。如何にランスとは言え魔王は魔王。自分たちの主なのだから。

「叶うのであれば、貴方(ユーリ)の傍で一緒に冒険をして、世界を見て回りたい。まだ知らない場所へ行ってみたい……といつも夢想をしている程です。……ふふ。そんな事が実現すれば、違う戦争が始まってしまいそうですが」
「―――あー、それは確かに。あの男(・・・)を慕う娘は数多くいたから」



――今ならよく判る。本当に罪な男だ
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