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Raison d'etre
二章 ペンフィールドのホムンクルス
2話 白崎凛
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 特殊戦術中隊には、用途に応じた様々な訓練室がある。
 自主的な訓練に向けていくつか屋内の訓練室が開放されており、一部の熱心な中隊員たちは足繁く通っている。
 その訓練室から、威勢の良い声が響いている。第三小隊長である佐藤詩織のものだった。
「やぁっ!」
 掛け声と共に、詩織が竹刀を振りあげて突撃する。
 切っ先の向こうには静かに竹刀を構える桜井遊の姿。
 真っ向から詩織の太刀筋を横に弾く。男女の膂力差が如実に現れ、詩織の瞳に驚きの色が浮かぶのが見えた。
 彼女のバランスが崩れたところに、間髪おかず竹刀を叩きこむ。打撃を正面から受けた詩織が後方に倒れ込んだ。そのまま受け身を取る余裕もなく床に転がる。
 小さく呻く詩織のもとへ、慌てたように駆けつける。
「ごめん! 大丈夫?」
 詩織は打ち付けた左肩を押さえて恥ずかしそうに頷いた。
 優が手を差し伸べると、彼女は無言で手を取る。男性恐怖症である事を感じさせない自然な動きだった。
「青春だねー」
 第四小隊長の黒木舞がその様子を見てからかうように言った。隣には、不機嫌そうな華の姿がある。それから、興味なさそうな各小隊長たち。
 詩織は舞の言葉を意に返さず、しなやかな動作で小隊員達の元に戻った。ただ、頬の赤らみだけは隠せなかったようだった。
 定期的に実施している小隊長クラスの自主訓練だった。優は特別に招待を受けて今回から混ざる事になっている。
「次はボクだね」
 舞が竹刀を手に取り、防護服を着用する。彼女は散歩に行くような軽い足取りで、優の前に進んだ。
「行くよ!」
 宣言とともに、舞が地を蹴る。早い。間合いが一瞬で詰まり、舞の竹刀が優に迫る。
 咄嗟に横に飛び、舞の一撃を避ける。舞はそれを予想していたように第二撃の準備に入った。
 今度は避け切れないと判断し、優は咄嗟に舞の足を払った。バランスを崩し、舞の身体が傾いていく。
 直後、強烈な強打音が響いた。舞が転倒間際に竹刀を横に振り抜き、優の腹部に打撃を与えたのだ。優が低い声をあげて膝をつく。舞も優を追うように、盛大な音を立ててそのまま転倒した。
「……大丈夫かな?」
 華が動かない二人を見て呟く。防護装備があるとはいえ、衝撃を全て緩和することはできない。
「桜井君!」
 華が二人の元に駆け寄る。優は呻きながら「大丈夫だよ」と強がって笑みを浮かべた。
「ボクの事は誰も心配してくれないわけ?」
 舞がうめきながら抗議する。
 華はそれさえも無視して、優を抱えた。
「やっぱり、近接戦闘訓練は危険なんじゃないでしょうか? 訓練で怪我をして、出撃できなくなったら元も子もないような……」
 詩織が言う。それは、他の小隊長も薄々気付いていた。訓練である
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