二章 ペンフィールドのホムンクルス
2話 白崎凛
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為、ESPエネルギーは一切使っていない。実戦で訓練の成果が出るとは到底思えなかった。しかし、ESPエネルギーを使った模擬戦闘を行うのは危険すぎる。
第二小隊の姫野雪が鈴のように良く通る声で口を開いた。
「機械翼のテストパイロットをしている職員が、モーションスーツで位置情報を取り込んで擬似的空戦を計算機にさせている、と聞いた事があります。情報部に新しい訓練シミュレーターを提案させましょう」
誰からも反対意見は出なかった。
雪は中隊の中でも異質な存在だ。
白色の長髪と、赤い瞳。異国じみた容姿がどこか人を寄せ付けない雰囲気を放っている。
「ん……」
優が頭を抱えて起き上がる。大丈夫か、と心配する少女達に優は笑顔を作って頷いた。
ふと、視線を感じて優の視線が壁際に移る。
すぐに第六小隊長の白崎凛(しらざき りん)と目が合った。
僅かな時間、優は凛の吸い込まれそうな黒い瞳に見入った。凛はすぐに視線を外し、つまらなさそうに外を眺める。
優は首を小さく傾げた。
凛もまた、姫野雪のように人を寄せ付けない雰囲気を纏っている。
しかし、雪のようにただ容姿が風変わりなわけではない。凛の場合はどこか不良じみた攻撃的な態度が原因だ。
どちらも中隊の実力者であったが、浮いた存在だった。
────────── 2章 ペンフィールドのホムンクルス
訓練後、優は一人で廊下に出た。他の少女たちは中でまだ雑談を続けている。
シャワーを浴びる前に渇いた喉を癒そうと自販機に向かうと、基地内では珍しい男性の姿があった。情報部の主任である斎藤準だ。優がここに来た時に本部内の案内をしてくれた人で、数少ない男性の知り合いだった。
「よっ、また新しい女の子ひっかけたんだって?」
準がからかうように話しかけてくる。優は苦笑して「またって何ですか」と抗議の目を向けた。
「そういう、斎藤さんはどうなんですか?」
準には付き合っている女性がいた。同じ情報部の田中幸枝。過去に一度だけ会った事があって、大人びて綺麗な人だった、と優は記憶している。
「婚約したよ」
思いがけない返答に優は取り出した財布を落とした。
「おめでとうございます。田中さんも物好きですねー」
「素直に祝えよ。ところで、財布変わったんだな」
財布を拾おうとしていた優の動きが止まる。
「女の子は現金より、プレゼントを渡された方が喜ぶぞ」
その言葉を吟味し、意味をすぐに悟る。
優は驚きを隠せず、弾かれたように準の瞳を見た。
「知っていたんですか?」
「あぁ。一部始終が街の防犯カメラにばっちり映ってた。消しといたけどな。」
準は手に持っていたコーヒーを一口飲んで、話を続け
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