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フルメタル・アクションヒーローズ
第199話 茶番劇の始まり
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にしてはいけない少女の姿が。

「その大切な人のために、貴様は鮎子君を修羅道の道連れにするというのか」
「四郷には、辛い思いをさせるだろう。恨まれもするだろう。それでも俺はやらなきゃならない。そのために戦って死ぬなら、諦めもつく」
「――いい加減に、目を覚ませ。いかな『救済の超機龍』といえど、所詮は人の手で造られたカラクリの鎧に過ぎん。万人を救える、都合のいい神にはなれんのだぞ」
「だったら、演じ切るまでだ。都合のいい神、って奴をな。そのためなら、人間だって辞められる」

 そんなところにまで踏み込んだ俺さえ、支えると言った矢村や救芽井のためにも、ここで立ち止まるわけには行かない。
 テコでも動かない俺の姿勢を前に、向かい合う茂さんと、奥の入り口で見守る久水先輩は、見定めるように目を細めた。

「……呆れましたわ。人の話も聞かないで、もう決闘を始めるつもりですわね」
「お姉ちゃん、先輩は長旅で疲れてるはずじゃ……」
「――そのはずだけど、あそこまで言っといて今更止まるとは思えないわね。どっちも単細胞の大馬鹿だわ」

 久水先輩にエスコートされ、彼女の隣に移動した四郷姉妹は、固唾を呑んでこちらを見つめている。

「太陽に近づき過ぎた英雄は、得てして翼をもがれるもの。ここで引き返さねば、貴様も地に堕とされるぞ」
「上等。なら、その太陽とやらもブチ抜いてやるまでだ」
「――やはり、決心は固いか。ならば、仕方あるまい」

 そして、強硬な姿勢を崩さない俺を前に、茂さんは一歩だけ下がると――右手に巻かれた黄金の「腕輪型着鎧装置」を構える。
 アレが、例の「二号ヒーロー」って奴だな……!

「力なき正義は無力であり、正義なき力は暴力。少林寺拳法の理にもある言葉だ、貴様も知っていよう」
「……?」
「そう、正義は力によって守られ、力は正義によって秩序を得る。力がなければ、その正義は他の正義に蹂躙され、悪と見なされ破滅するのだ」

 茂さんの構えに応じてこちらも臨戦態勢に入るが、向こうは戦う気配を見せずに、諭すように語りかけてくる。

「それは、法整備が敷かれた現代においても変わらない。救芽井エレクトロニクスが正義を勝ち取り、軍事利用の魔の手から逃れられたのは、国連という力の傘に守られていたがために起きた奇跡に過ぎないのだ。それがなければ、救芽井甲侍郎はとうに暗殺され、着鎧甲冑の技術は戦闘用装甲服に成り果てていた。力が、正義を守ったのだよ」
「何が言いたい?」
「正義を成すのも壊すのも、結局は力次第、ということだ。松霧町に巣食う悪を力で粉砕した瀧上凱樹が、正義として認められていたように――貴様もまた、オレを屠ることで己の正義を証明しようとしている」
「妙なことを言う。それは、あんたも同じことだろうが」


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