第156話 古我知剣一の戦い
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共に朽ちるか。地位や名誉をなげうってでも、命だけは助けるべきか。
その解釈と価値観の差異は、共通している部分が多いはずの二人の溝を、際限なく広げていく。
「……まぁ、いいでしょう。それが正しいか否かは、この決闘で決まる。この戦いは、あなたが望んだことだ」
「その通り。いざ尋常に――参る」
こうなっては、もう戦いは避けられない。一触即発となった二人は、互いの得物を静かに構えるのだった。
剣一は、青白い電光を纏う短刀を。ジェリバン将軍は、幾多の戦車や兵器を砕いてきた、黄金の拳を。
「――お互い、準備は出来たと見ていいな?」
円形の舞台から僅かに離れた位置に立つ和雅は、互いの構えを見て静かに口を開く。風が靡く音と、砂が地面に擦れる音のみが聞こえているこの空間の中で、両者はゆっくりと頷いた。
王族の権威が消え去るか。国そのものが死に絶えるか。その決断が、この闘いで下されるのだ。
どちらに転ぼうと、必ず何かが犠牲になる。果てしなく重い、何かが。
それだけに、この二人を包む空気の険しさは、尋常ならざるものだった。
限界以上に張り詰めた両者の眼光が、互いの様子を鋭く見据えている。ほんの僅かな挙動も、見逃すまいと。
「――言っておきますが、いかに性能差があろうと、僕は手は抜きませんよ」
「構わんよ。それだけで勝てるつもりで、いるのであればな」
剣一の啖呵に対するジェリバン将軍の反応は薄い。そんなことは何の問題にもならない、と云うように。
「……?」
この返事を受けた剣一は、僅かながら戸惑いを隠せずにいた。
彼の身を包む「必要悪」の装備は、一年と少し前に開発されたばかり。対してジェリバン将軍の「銅殻勇鎧」は、十一年前に米軍から渡されて以来、僅かな改良も施されていない。しかも長い間の戦闘により、鎧の節々には痛ましい傷痕も伺える。
剣一から見れば、時代遅れの老朽品そのものなのだ。にもかかわらず、彼はそのハンデについて何の反応も示さずにいる。
――あんな骨董品のような装甲で、何の苦もなく自分を倒せる気でいるのか。それとも、自分の知らない最新兵器でも隠し持っているのか。
ジェリバン将軍の真意を探ろうと、剣一は思考を巡らせる。
だが、答えを出せるだけのヒントが得られることはなかった。
彼がこうして逡巡している間も、ジェリバン将軍は寸分も構えを崩すことなく、整然とした様子で剣一を見つめている。
「では――始め!」
そして剣一の悩みを他所に、風の囁きが止まる瞬間。
和雅の叫びが、この緊迫した世界に突き刺さる。
次いで、風に流されていた砂の動きが止み、時間が止まったような錯覚が辺りを包み込んだ――刹那。
「シャアァアア
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