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フルメタル・アクションヒーローズ
第156話 古我知剣一の戦い
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り……剣一の方へと向き直った。
 その姿はさながら戦場に赴く武士の様相であり、容赦なく照り付ける日光を浴び、彼の装甲も黄金の如く輝いている。

 関節の隙間からは、旧式ゆえか人工筋肉を機能させる電線が露出しているが――そのような弱点を感じさせない「戦士」としての荘厳な姿が、そこにあった。

 戦場でこれほど目立つ格好はないだろう。しかし彼はそれを一切苦にすることなく、数多の死線をかい潜ってきたのだ。

 一切の驕りを見せない真摯な眼差しが、それを裏付けている。

「……『新人類の巨鎧体』を造った米軍の産物、か。毒を以って毒を制す――とは、よく言ったものよ」
「瀧上凱樹を憎んでいながら、その力に繋がる兵器を使っている。……そういう意味では僕もあなたも、完全に彼を拒むことは出来ないのかも知れません」
「違いない。この世で唯一憎んだ日本人と、同じ系統の力を行使して国を守ってきた……とはな。笑いにもならん」

 互いに共通する「汚点」。「兵器を纏った姿」を見せ合うことで浮き彫りとなったそれを改めて認識し、二人は同時に自嘲の笑みを浮かべた。

「――実を言えば、私にも僅かに日本人の血が流れていてな。戦時中、我が国が植民地として支配されていた頃のことだ。祖母が命の恩人だったという日本人医師との間に、私の実父を授かったのだよ」
「え……!?」
「戦乱の中、行方知れずになった祖父に代わって、私の父は軍人の家系に引き取られ――そして、私が生まれた。しかし父は、日本の医師だったという祖父の言葉を、晩年まで覚えていたのだよ。『どんな時代や状況でも、誰かを助けることを忘れるな。お前に助けられた誰かが、お前が生きた証になる』、とな」
「誰かを、助ける……」

 時代や状況を問わず、誰かを救うことを常に心掛けよ。――と訴えかけるような言葉を受け、剣一は自分と共に瀧上と戦い、彼すら救おうとした少年の背中を思い浮かべた。

 ……まるで「あの子」のようだ、と。

「祖父がどのような人物だったかは、今となっては知る術もないが――この言葉は気に入っていてな。今では姫様をお守りすることこそが、『私が生きた証』だと思っている」
「その姫様と共に、破滅に向かうことが――『守る』ことだとでも?」
「同じ『守る』という言葉でも、私と貴殿とでは解釈が異なるのだろう。貴殿は『命』さえあれば『生』と見做せるのだろうが、私にとってはこの国で生まれ育ち、この地を愛している姫様の『想い』こそが、姫様にとっての『生』なのだよ」

 白銀の仮面の奥で剣一は鋭く目を細め、狩人のような眼光をジェリバン将軍にたたき付ける。
 当の将軍はその殺気を一身に浴びていながら、涼しげな佇まいで彼と向き合っていた。

 在るべき姿や誇りを失い路頭に迷うくらいなら、愛する故郷と
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