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相模英二幻想事件簿
File.2 「見えない古文書」
U 6.6.AM9:25
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 朝食を頂いた後、私は館の周囲を調べるために外へ出た。
 この館の周りには、一見木々が鬱蒼と生い茂っているように見えていたが、その中を散策できるよう道が整えられていた。恐らくは、一部の木々を伐採しつつ作られたのだろう。無論、これを保つために庭師も雇っているのだろうと考えつつ歩いていると、目の前に三十歳前後の男性が姿を見せた。
 いきなりのことに私が目をパチクリさせると、その男性は「驚かせたようで、申し訳ありません。」と言って頭を下げた。
「いえ、こちらこそお仕事の邪魔をしたようで。」
 私はそう言いながらも、その男性を観察した。服装からして庭師のようだった。
「私は佐原と言います。このお屋敷で庭師として働かせて頂いてますが、貴方は…奥様のお客人ですね?」
「はい。私は相模と言います。こちらに来た時には必ず寄る様言われてましたので、休暇がてらにお邪魔させて頂いています。」
 私は笑みを浮かべながら、そう当たり障りの無い様に答えた。
 この如月家にはかなりの財がある。現在は投資家として知られ、それ故に知人も多い。こう言えば、大概は仕事上の知人か何かと考えるだろう。
「そうですか。では、貴方はご自分で会社を?」
「ええ…まぁ。小さいですが、警備会社をね。」
「へぇ…!それは凄いですねぇ!」
 そう話をしていた最中、道の先から会話を止めるように怒鳴り声が響いた。
「佐原、何油売ってるんじゃ!」
「あ…こりゃヤバい…。」
 声を聞いた佐原さんは、頭を掻きながら苦笑した。
「お仕事中に失礼しました。私は暫く厄介になってますので、また顔を会わせるでしょう。早く行かないと今にも跳んで来そうですから、早く行って下さい。」
 私も苦笑混じりにそう返すと、佐原さんは「すいません、失礼します。」と言ってそのまま走って行ったのだった。
「しかし…こんな広い土地、一体どうやって管理してるんだか…。この道だって端から草が生えそうだってのになぁ…。それにさっきの声…老人じゃなかったか?」
 私はそんなことをブツブツと呟きながら、周辺の調査を再開したのだった。
 暫く歩いて行くと、幾分拓けた場所へと出た。そこは休憩スペースの様で、中央には噴水が作られていた。座って休める東屋もあり、それは木材で作られた温かみのあるものだった。恐らくは、ここを作った時に切った木を使ったのだろう。
 だが…何だってこんな遊歩道みたいなもんがここにあるんだ?この館の主が散策するため…とは考え難いんだがなぁ…。だからと言って、町の人達のためってことはないな。ここは私有地なんだから、まず入ってはこないはずだし。
 私は不思議に思いつつ、目の前の噴水へと近付いた。周囲には彫刻が施され、中央には天使らしき像が据えられていて、如何にも外国趣味な噴水だ。
「ガブリエル…か?」

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