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相模英二幻想事件簿
File.2 「見えない古文書」
U 6.6.AM9:25
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「刑事の刑って字に部屋の部って字でオサカベって読むんじゃ。」
「この町に、その姓は多いんですか?」
「いや、ここだけじゃよ。元々は長い壁と書いとったらしいが、字を変えたと聞いとる。」
 私は首を傾げた。なぜ長壁を…刑部に変える必要があったんだ?全く違う字だ…変える必要性は無かった筈だが…。
 私は少しばかり考えたが、直ぐにそれを中断した。この話は、今の私の仕事には関係ないのだ。飽くまで如月夫人の依頼で来ているのだから、刑部家の内情まで詮索することはない。
「それじゃ、明日にでも伺ってみます。有り難う御座いました。」
 私がそう言って話を終わらせようとした時、木下さんは私へと小声で囁くように言った。
「お前さん…七海嬢ちゃんのことで来なすったんじゃろ?」
「どうしてそうお思いで?」
 私は何ともない風に問い返した。ここで「はい、そうです。」とは言える筈もない。ま、大半の使用人は気付いているだろうが、私自身には守秘義務がある。その為、私自身が肯定するわけにはいかないのだ。
 私から問い返された木下さんは、それでも声を潜めながら私に言った。
「お前さん…もしそうだったら、充分気を付けなされ。前に呼ばれた者等もお前さんと同じ態度を取っておったが…二度と帰って来なんだからな…。」
「帰って…来なかった…?」
 今度は私が声を潜めた。どうやら穏やかな話では無さそうだったからだ。
「途中で帰ったんじゃないんですか?」
「いいや…荷物もそのままに、忽然と姿を消したんじゃ。財布もそのまま残っておったそうじゃよ。警察は行方不明事件として調査しとったんじゃが…未だ見付かってはおらん。」
 そんな話…結城にすら聞いてないぞ…。まさか、この行方不明者まで探せってことなのか?
 あの結城がこのことを知らない筈はない。私だって毎日のニュースは欠かさずチェックしている。なのに…私にこの情報が何一つ入らなかったのは、一体どういう理由なんだ?全く入らない…なんてないだろうに…。
「だがのぅ、その事件は山向こうの町の話として伝えられとったっんじゃ。」
 私はますます理解に苦しんだ。この町の事件の筈だが、それが一山越えた町の話になんて…。
「何故…そうなったんですか?誤報道…ということなんですか?」
 訝しく思い、私は木下さんへと尋ねた。すると、彼は首を横に振ってこう言った。
「奥様の従兄弟を、お前さん知っとるかね?」
「いえ…。」
「飯森前首相じゃよ。」
 私は絶句してしまった。まさか…ここでこんな大物の名前が出るなんて、思いもよらなかったからだ。
 飯森前首相…彼は一度限りでその座を降りたが、その在任中に様々な改革を行い、その全てを成功させた人物だ。現在でも政界に多大な影響力を持ち、その力で影から政界を操っているとさえ言われている。
 だ
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