暁 〜小説投稿サイト〜
Element Magic Trinity
折れ曲がりストレート
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る必要はないじゃない。孫が祖父の心配するのは当たり前なんでしょうから」
「……」
「安心なさいな、マスターは元気よ。あれ以降発作もないし」
「…そうか」

そう呟いた顔が少し安心したように見えて、少し驚く。かつてなら、ギルドにいた頃の彼であったらこんな顔はしなかった。ギルドで一番の天敵であるティアに気づかれてしまうような安堵なんて、絶対に顔には出さなかったのに。
だから、こっちもらしくない言葉を吐いてしまったのだろう。

「…心配なら、会わせてやってもいいけど。破門中だろうと身内が会うのを咎めやしないでしょう。マスターが渋るようなら殴ってでも連れて行くし」
「お前が殴ったらそれで死にそうだけどな」
「私は拳より蹴りの方が主体だから死にはしないわ、…それで?どうするの」
「……会わねえよ、会う気もねえ」

ふぅん、と、持ちかけて来たくせに興味なさそうな返事を返して、ベンチの上で膝を抱える。下手をすればスカートの中が見えてしまいそうだが、特に気にする様子はない。黒いタイツに包んだ脚を抱えて、「そういえば」と思い出したように呟いた。

「アンタ、私の事名前で呼ぶのね。女王様はどこ行ったのよ」
「どう呼ぼうがオレの自由だろ。…それに、それはお前もだろうが」
「…ふん、今のアンタを七光りって呼ぶ必要はないもの」

小さく鼻を鳴らして「余計な事聞いたわ」とぶっきらぼうに吐き捨てて視線を逸らす。仲が悪いとはいえ何年もの付き合いであるラクサスには、それが照れ隠しなのだとすぐに見抜けた。とはいえ、それをわざわざ指摘してやる理由もない。ティア=T=カトレーンというのは、彼女を怒らせずに済む選択肢があるなら、例えそれでこちらが負けるとしても迷わずにそっちを選ぶべき相手なのである。
だからラクサスは彼女の対応に関しては何も言わず、

「そういやお前、言ったよな」
「何が」

破門されてからずっとどこかに引っかかっていた、あの一言について、

「オレを“七光り”って呼ぶ理由があるって」

尋ねれば、群青の瞳が僅かに見開かれた、気がした。








「オレはラクサス、ラクサス・ドレアー!よろしくなっ」

そう言って、無邪気に笑って。握手を求め手を伸ばした姿を覚えている。結局その手を掴むどころか触れる気すら起きなくて、ちらりと目を向けただけでこちらの興味は尽きてしまったから、言葉すらまともに返さなかった。
妹に代わるように対応していく兄の陰に隠れるように位置をずらして、たった今耳に入った少年の名前を脳の余白に刻む。


ラクサス・ドレアー、兄の二つ年上。
使用魔法、現段階では不明。
明るく無邪気、人懐っこい。苦手なタイプ。

それだけ。





「どうじゃ、ティア。ギルドに
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