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ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第44話 ダタッツ剣風
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ならなかった。

 ダタッツと名を変えた帝国勇者は身を挺してババルオから王国を救い――民を守るために自分が狂わせた盗賊達とも戦ったと聞く。ここに来る途中、城下町の男達に手料理を振る舞う少女が、そう話していた。
 その上、自分との戦いにおいても。彼はあくまで自分を殺さないために、当たるはずの技を外して自分の剣にかかった。
 勇者の力を振りかざす外道――という評判とは対極の位置にいる。勇気と慈愛に溢れた若者を呼ぶ、という勇者召喚の言い伝え通りの人物だった。
 帝国勇者は――悪などではなかった。それは、直に剣を交えた今なら痛いほどにわかる。

(帝国勇者! あなたはなぜ……どうしてッ!)

 だが、だからこそ。そんな彼が帝国勇者として自分達を追い詰め、父を奪った張本人であるという事実を受け入れることができなかった。
 その苦悩から逃れるために、彼女は憎しみに走り――勇者の剣に囚われてしまったのだ。

「……もう、いい。私を離さない憎しみの力が正しいか。多くの命を奪っていながら、今になって正義面するあなたが正しいか。全ては、この戦いが――次の一撃が教えてくれる」
「そうだな――ッ!」

 その時。一歩踏み出そうと進み出たダタッツは、突然崩れ落ちるかのように片膝を着いてしまった。
 十字に刻まれた胸からは、今も絶えず鮮血が滴り、その傷の重さは確実に彼の命を蝕んでいる。あらゆる箇所がひび割れている予備団員の鎧からも、彼が背負うダメージの深さが伺えた。

「ダタッツ様ぁっ!」

 ダイアン姫の悲痛な叫びに応える余力もなく――満身創痍の黒髪の騎士は、荒い息で肩を震わせながら、光を失わない瞳で目の前の敵を狙う。
 だが、敵はヴィクトリアではない。その心を黒く染める、勇者の剣だ。

「もういい! もういいですから、逃げてくださいダタッツ様! そんな身体で、ヴィクトリアを倒せるはずがありませんっ!」
「……ダイアン姫。過去がどうであれ、今のジブンは王国に仕える騎士の端くれ。ここで引き下がるわけには、行かないのです」
「なら、わたくしはあなたの任を解きます! あなたなどクビです! もう、わたくしを守る資格はありません! だから早く逃げて――」

「――クビだろうと! 資格がなかろうと! 俺は必ず君を守るッ!」
「……!」

 その瞳に宿る光は、どんな言葉でも揺るぐことなく、ただ前だけを見つめている。今までとは違う、力強いその宣言にダイアン姫は言葉を失い――同時に、頬を熱く染める。
 一方で――ふらつきながらも立ち上がり、両手剣を再び構えるダタッツの姿を見遣るバルスレイは、焦りを胸中に滲ませながら、この死闘の行方を見つめていた。

(ダタッツ。お前は、まさか……!)

 その予測は――次のダタッツの行動で的中するこ
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