暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第40話 王宮の死闘
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れる寸前、というところで上昇が止まり、あとは落ちていくだけ……と見られた瞬間。ダタッツは体を上下に半回転させ、両足でシャンデリアを蹴り付けたのだ。
 彼に蹴られたシャンデリアは墜落し、テーブルに激突して破片を撒き散らす。それを目くらましに使いながら、ダタッツはヴィクトリアめがけて急降下していくのだった。

 女騎士の予測を上回る速さで、黒髪の騎士は彼女に向かい接近していく。なんとかそれに対応しようと、彼女は回避の姿勢に入った。
 しかし、ダタッツの真の攻撃は、ただ加速を付けて上空から襲い掛かることではない。

「――飛剣風《ひけんぷう》『稲妻《いなづま》』ァッ!」

 ダタッツは空中で飛剣風を放つと――再び体を半回転させ、今度は片足の前足底で剣の柄頭を押し込んで行く。さながら飛び蹴りの姿勢で、剣に片足の先を乗せるような格好で。

 そうして飛剣風の威力にダタッツの体重が加わると――剣の速度はさらに高まり、巨大な矢となってヴィクトリアに襲い掛かるのだった。

「……くッ!」

 その一閃は、彼女の想定を遥かに超えている。彼女は悪い予感を覚え、回避に移ろうとするが――稲妻の如き剣の弓矢は、それよりも速く床に激突するのだった。
 衝撃の余波でテーブルや椅子は吹き飛び、周囲に撒き散らされて行く。

「うわぁあ!」
「くぅッ!」

 その破片の猛襲は、ある程度離れていたダイアン姫とロークにまで及んでいた。ダイアン姫は盾で凌ぎ、ロークは懸命に頭を抱えながら地に伏せてやり過ごしている。
 やがて、その余波が静かになり――土埃が徐々に晴れて行くと。二人はハッとして前方に視線を移す。

 鍔近くまで深く突き刺さった予備団員の剣と、その柄頭を踏みつけているダタッツの足。それが土埃の中から伺えた瞬間、ダイアン姫達は悟った。
 ヴィクトリアは、あの凄まじい一閃を――かわしたのだと。

「避けたってのかよ!? アレを!」
「ダタッツ様、危ないッ!」

 それを脳で理解した瞬間、ダイアン姫はヴィクトリアの反撃を予測し、声を上げる。――だが、当のダタッツ本人はそれに気づいていないのか。困惑した表情で、足元を見つめていた。

(馬鹿な……。俺は確かに、彼女の手にある勇者の剣を狙った。狙いは完璧だったはずだ。なのに、なぜ……!)

 飛剣風「稲妻」は城内に侵入してきた外敵を排除するために編み出された飛剣風の派生技であり、投剣術の中でダタッツが最も得意とする技でもある。屋内でしか効果を発揮できない不便さはあるものの、条件さえ揃えば無類の威力と速さを併せ持つ技だ。
 それを使っていながら……外してしまった。百発百中であるはずの、稲妻を。

 そのショックゆえか……彼は技をかわされた危険性を理解していながら、暫しの間動けずにい
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