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ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第40話 王宮の死闘
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!?」

 ヴィクトリアは少し離れた自分の剣を拾いにいくことが危険であると判断すると、テーブルを縦にひっくり返し――ダタッツに向けて蹴り飛ばしてきたのだ。
 それに気づいたダタッツは素早く跳び上がり、迫り来るテーブルをかわす。だがジャンプに専念する余り着地を誤り、尻餅をついてしまった。

 そして、その不意打ちを辛うじてかわし、彼が立ち上がる頃には――すでにヴィクトリアも、勇者の剣を拾い上げていた。

 ……一方。その戦いを見つめ続けていたダイアン姫とロークは、双方の戦い振りに驚嘆している。そして、埋め難いレベルの違いを肌で感じていた。

「す、すげぇ……あいつ、あんなに強いヴィクトリア様が相手なのに、全然負けてねぇ……!」
「……きっと、血の濃さが原因なのでしょう。ダタッツ様は異世界からやってきた――いわば、純血の勇者。ヴィクトリアは確かに先代勇者の末裔ではあるけれど、勇者の血はダタッツ様に比べれば薄い。だから勇者の剣も、本来の性能が発揮できないでいる……」
「じゃあ、あいつは死なずに……済むってことですよね!」
「……ええ。けれど……」

 現状、戦いは拮抗している。純血でない勇者の末裔が勇者の剣を握っている今なら、魔物との交戦経験がないダタッツでも、この邪剣に打ち勝ち、ヴィクトリアを救い出せるかも知れない。
 だが、ダイアン姫には一抹の不安があった。その原因は、ダタッツが戦いの最中に取った行動にある。

(あれほど危ない状況でありながら、ダタッツ様はヴィクトリアを丸腰で取り押さえようとしていらした。普通なら確実に殺められるような局面でも、仕掛けることはなかった。まさか、ダタッツ様は……)

 その先にある、仮説。それを脳裏に描いた姫騎士は、青ざめた表情で黒髪の騎士を見守る。自分の胸を熱く、甘く焦がした、あの凛々しい横顔を。

「……なら」

 ダイアン姫の思案を尻目に、ダタッツは鋭い表情のまま次の攻撃に移る。飛剣風の体勢に入った彼は、真正面から技を繰り出す――と見せかけ、水平に薙ぎ払う一閃で椅子を弾き飛ばした。
 それを見切っていたヴィクトリアは難なく椅子を切り払う。……しかし、その時すでにダタッツは高い位置にまで跳び上がり、天井のシャンデリアに迫ろうとしていた。

(シャンデリアを背にして私の視界をくらませた上で、高所からの飛剣風――といったところか。安い手段に出たものだ)

 ヴィクトリアに動揺の色はない。すでに飛剣風を破ったことがある彼女には、そのような小細工は通じない、という自負があった。
 ――だが。

「帝国式《ていこくしき》――対地投剣術《たいちとうけんじゅつ》ッ!」
「ぬッ!?」

 ダタッツの小細工は、ヴィクトリアの予想をさらに凌ぐものであった。
 シャンデリアに触
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