暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第三章 贖罪のツヴァイヘンダー
第40話 王宮の死闘
[4/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
た。
 そして――土埃の奥から。

「ぬぅあぁああッ!」

 突如姿を現したヴィクトリアの、雄叫びが轟き。鬼神の如き形相で、その姿が飛び出てくる。
 その叫びでようやく我に返ったダタッツは、反射的に深く床に刺さった自分の剣を抜こうとする――が。それよりも彼女の反撃の方が速かった。

「ぐあッ……!」
「ダタッツ様!」
「帝国勇者ぁ!」

 脇腹に強烈な回し蹴りを喰らい。予備団員用とはいえ、鉄製の鎧を纏っているはずのダタッツの体が、紙切れのように吹き飛ばされて行く。その衝撃で、手にしていた予備団員用の剣は棒切れの如くへし折られてしまった。
 壁を突き破り、王宮から転落する彼が、武器庫の屋根に墜落していく。その様を目撃したダイアン姫とロークは、揃って悲鳴を上げた。

「がぁあぁああッ!」
「やめっ――!」

 間髪入れず、ヴィクトリアは勇者の剣を振りかざして壁に空いた穴から飛び降り、武器庫に落ちたダタッツを追う。それを引き止めようと叫ぶダイアン姫の声など、気にも留めていない。

(なんてパワーだ……んっ!?)

 一方、ダタッツは墜落して行くさなかで、ヴィクトリアの圧倒的な力に驚嘆していた。少なくとも単純な膂力だけなら、神に力を授けられた超人である勇者すら凌いでいる。
 ――その時だった。逆さまの体勢で武器庫に落ちて行く彼の視界に、地上の惨状が映される。残骸や倒れた騎士が死屍累々と転がっている地獄絵図の中には――彼の師の姿もあった。

(バルスレイさん……!)

 全身を瓦礫に打たれ、力無く倒れ伏している師匠の姿に、ダタッツの体が熱を帯びて行く。

 自分に対して無理解であっても。剣を交えた先にある価値観しか持たない、無骨な男であっても。

 彼は、アイラックスを殺したショックで錯乱する自分を、懸命に助けようとしていた。自分を独りにさせまいと、赤マフラーを託してくれた。
 その想いだけは、今もダタッツの心に確かに染み付いている。だからこそ、今も彼がくれたマフラーを使い続けているのだ。

 そう、そんな彼の不器用さも含めて。伊達竜正は、バルスレイを師として――父代わりとして、愛情を抱いている。

「――ヴィクトリアァッ!」

 だから彼は――自分の行いを、一瞬だけ棚に上げて。ヴィクトリアへの怒りに、眉を顰めるのだった。

 そして、その怒りを帯びた眼差しを浴びる彼女は勢いよく飛び降り、武器庫の屋根に空いた穴に入り込んで行く。
 一寸先が見えない、闇の空間に踏み込んだ彼女は――。

「ふん!」
「くッ!?」

 勇者の剣を叩き落とそうと、闇に紛れて背後から斬り掛かったダタッツの一閃を、背を向けたままあっさりと受け止めるのだった。
 武器庫に保管されていた、正規団員用の剣を握
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ