暁 〜小説投稿サイト〜
ダタッツ剣風 〜悪の勇者と奴隷の姫騎士〜
第二章 追憶のアイアンソード
第26話 父の面影
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「……!」
「……来たか、勇者」

 やがて、激戦のさなか。兵達の剣戟を背に、竜正は戦乱の渦中で帝国兵を蹴散らすアイラックスと遭遇する。
 馬上から、迫る雑兵を大剣で一掃していくその姿は、有無を言わせぬ絶対的な「武力」を物語っていた。足の負傷をものともしないその勢いは、周囲を圧倒し続けている。

 再びあいまみえる、帝国の勇者と王国の英雄。その双方が持つ力を、本能で察したのか。
 両軍の兵達は戦いを続けながら、導かれるようにその場から離れていく。竜正とアイラックスを、円で囲うように。

「……君には、引き寄せられるものがある。同じ髪の色だから、勇者だから……ではない。上手くは言えないが……暖かい何かを、私は君に感じている」
「……」
「だからこそ、冷徹な眼で剣を振るう今の君には、違和感を感じてならない。まるで、負の感情だけを引き出されているかのような……そんな、不自然さがある」
「だとしたら、何だというんだ」
「――その原因が何かはわからない。だがもし、君が帝国に脅されて戦っていることが原因だと仮定するならば……私はやはり、君と戦わずに済む道を探そうと思う」

 アイラックスは、気づいていたのだ。竜正が抱える闇の存在に。
 だが、それが剣の呪いによるものとまでは知らぬ彼は、竜正に渦巻く負のオーラの原因が帝国の圧力によるものだと判断していた。
 無論、戦争へ参加していること自体は紛れもなく竜正自身の意志である。だが、勇者の剣が齎す呪いの力がなければ、こうも簡単に人を斬ることは出来なかっただろう。

 当たらずも、遠からず。そんなアイラックスの判断を前に、竜正は唇を噛み締める。いっそまるきり見当違いな答えを出してくれた方が、少しは楽になれたかも知れなかったのに。

「私には君と同じ年頃の娘がいる。あの子が笑顔で暮らせる世界を守るためにも、私はこうして戦っているのだ。――大人として、騎士として。私は、次代を担う子供達を守りたい。……その中には、きっと君もいるはずだ」
「……いるわけがないだろう。俺はもう何人も、人を殺している。俺自身の意志で俺のためだけに、何人も。そんな奴が、そこにいるはずがない。絶対に」
「違う。――君は、好んで人を殺せる人間ではない。そんな人間が、辛そうな顔で剣を握れるものか」
「……!」

 自身の声を拒み続ける竜正に、アイラックスは真摯な眼差しを注ぎ――馬上から飛び降りる。螺剣風で貫かれた足で着地しながら、表情一つ変えない彼の姿に、竜正は思わず目を奪われてしまった。

「強者こそが正義と信じて疑わぬ、帝国の思想に凝り固まってしまえば……君はその胸に残された温もりも失ってしまう。子供が子供を殺す、そんな時代を作ってしまう。私は――君も、救いたいんだ」
「……バカなことを言うな! 俺を救
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