暁 〜小説投稿サイト〜
ウルトラマンゼロ 〜絆と零の使い魔〜
深淵-アビス-part2/奈落の底
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言い合いをするようになっているからそんな気が起きていない。
「元気ない?舞台で疲れちゃった?」
「ま…まぁ、ね。慣れないことだったから。ハルナはどうだった?」
顔を覗き込んできるハルナに緊張を覚えつつも、サイトは問い返した。
「私もちょっと疲れてて…打ち上げを抜けたのもそれがあるの。
でも、残念だったな…せっかくウェザリーさんがヒロインに選んでくれたのに」
そうだ、ハルナはリッシュモンの事件の直前に足を切ってしまったのだ。演技中に影響を及ぼす可能性があるという指摘で、ルイズが代役でノエルを演じたのである。
「でも、ルイズが思った以上にヒロインやってくれたのが救いだったな。目的のバックも取り戻せたし」
「…うん」
ルイズは自分たちでも、ウェザリーさえもほぅ、と関心を寄せたほどの演技力だった。自分でも鼻を高くしているくらいの自信もあり、ハルナは元から彼女がノエル王女を演じるべきだったのではないか?舞台の目的はウェザリーが預かっていたハルナのバックだが、そんなことも考えていた。
でも、それでも演じてみたかった。あの大舞台で、隣にいる、ちょっと鈍感で抜けているけど、勇敢で頼もしくて、誰よりもかっこいい…この少年と一緒に。
「ねぇ、平賀君」
「ん?」
「ここで、やってみない?」
「やるって、何を?」
「劇。ノエル王女とケイン王子の二人きりのシーンだけでも。せっかく練習したんだもの、ルイズさんに敵わなくても、やりたいの」
「…ああ、わかった。やってみるよ」
サイトは彼女の姿を見て、頷いた。少しでも、この暗い気持ちを晴らしておきたいと思っていたからかもしれない。
二人は、二人だけの『双月天女』を演じた。
演じたのは、最後の…ノエルがケインからの告白の返事をしようとしたところで、彼女の母国の兵士が攻めてきた、あのやり取りだ。


「ここなら、しばしの時間を稼げよう」
「王子、私はやはり帝国に戻りましょう。私が戻りさえすれば、この戦は収まるはずです。王子のお命も、お父様たちにお願いしてご助命を申し出ます」
本番と異なり、ハルナが演じるノエルが言うと、サイトの演じる王子が首を横に振る。
「だめだ、姫。それでは僕は君を失うことに…」
「ですが、このままでは王子は国とお命…すべてを失ってしまいます!」
「王国がなんだというのだ…死がなんだというのだ!僕にとって君を失うことは…死や亡国よりも恐ろしい」
「あぁ、王子!ですが…」
ケインはノエルに向けて言葉を続ける。
「愛しい人…君への愛はそれだけの価値があった。
だが、せめて最後に…君の返事を聞きたかったが…もう時間がない。城は時期に崩壊する。僕のことは忘れ、去りたまえ。君はあの兵たちに迎えられ、女王として生きるんだ」
城から去るように言うが、ノエルは去らなかった。

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