暁 〜小説投稿サイト〜
銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十七話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その3)
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
……。この速度なら要塞まであと二時間程度だろう。しかしその二時間がとてつもなく長く感じる。できる事なら無事で居てほしい。攻防戦の最中なら二個艦隊の救援は決定的な役割を果たすはずだ……。


■ 帝国暦487年4月24日 12:30  イゼルローン要塞  特設任務部隊旗艦 ヒューベリオン ヤン・ウェンリー


「閣下、各艦隊配置に付きました」
「そうか、ではもう一度救援要請を出してくれないか」
私はグリーンヒル中尉にゼークト提督への救援要請を出すように命じた。

スクリーンには第五艦隊、第十艦隊が映っている。両艦隊とも、「D線上のワルツ・ダンス(ワルツ・ダンス・オン・ザ・デッドライン)」を踊っている。

この状況を見ればローエングラム伯は要塞が未だ落ちていないと思うだろう。いや、落ちていない可能性があると思うはずだ。必ず第五、第十両艦隊に攻撃を加える。それが起きればこちらの勝ちだ。何もせずに後退されるのが困る。

ビュコック提督たちがイゼルローン要塞攻略戦に加わるのをフェザーンの目からどう隠すかが問題だった。こちらの情報を帝国に流されては困る。結局、訓練と称して三月初めにイゼルローン回廊方面に移動させ待機させるしかなかった。

彼らは既に二月近く作戦行動中だ。その一方で私の特設任務部隊がイゼルローン要塞を攻略するとさり気無く情報を流した。うまく騙されてくれたようだ。

本当なら敵の戦力を集結させるのは邪道だ。敵は分断して倒す。しかし今回はその邪道を行なう必要がある。ゼークト提督にはローエングラム伯を連れて来て貰わなければならないのだ。二個艦隊あれば要塞を救える、そう思わせることがこの作戦の要だ。

ヴァレンシュタイン大将、彼の弱点はローエングラム伯だ。彼は気付いていないのだろう。あるいはローエングラム伯を信頼しているのか。だから一個艦隊で遠征に出した。千載一遇の機会だ、この機にローエングラム伯を倒す。後方に居て前線に出てこないヴァレンシュタイン大将を倒すにはそれしか方法は無い……。



■ 帝国暦487年4月24日 13:40   帝国軍総旗艦 プリュンヒルト  ジークフリード・キルヒアイス


イゼルローン要塞が見えてきた。要塞の前面で反乱軍の艦隊が展開している。主砲射程距離ぎりぎりのところで「D線上のワルツ・ダンス」を踊っている。要塞は落ちていないのか? 一時間程前の救援要請は本物なのだろうか。

要塞に傷付いた様子は無い。付近の宙域にも艦船の残骸は無い。要塞は生きている? オペレータの声が艦橋に響く。
「敵戦力、二個艦隊です」

二個艦隊、約三万隻か、ほぼこちらと同数だ。
「敵艦隊、要塞主砲射程圏外へ後退します」
敵は要塞から離れつつある。 要塞は味方なのか? 罠か?

「直ちに敵
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ