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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第八十七話 第七次イゼルローン要塞攻防戦(その3)
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に対し攻撃を加える」
「閣下、お待ちください。要塞が落ちている可能性があります」
「分かっている、オーベルシュタイン大佐。敵を要塞方面に押し込むようにして攻める。要塞が反乱軍に対して主砲を撃てば味方、撃たなければ敵だ」

ラインハルト様はゼークト提督に時計とは逆周りに外側から敵艦隊を要塞方面に押し込むように攻めるように指示を出した。ラインハルト様は更にその外側から敵を押し込むつもりだ。
「ファイエル」

ラインハルト様の命令と共に主砲が斉射される。閃光が煌めき、スクリーンが一瞬白光に包まれた。眩しいほどだ。反乱軍の中性子ビーム砲が発射されたのだ。
「エルラッハ少将に命令、攻撃せよ」

「敵ミサイル群、接近」
「囮ミサイル、発射します」
「主砲斉射」

命令と報告が慌ただしく交錯する。エルラッハ少将率いる分艦隊が敵に喰らいついた。ゼークト提督も敵を押し込み始めた。敵は少しずつ後退し始める。もう直ぐ主砲射程圏内に入る。もう直ぐ分かるはずだ、どちらだ。

主砲射程圏内に入った。誰もが要塞主砲に釘付けになった。オペレータの声が響く。
「主砲発射準備に入りました!」
「要塞は生きています。味方です!」
艦橋内に歓声が上がる。ラインハルト様も顔を紅潮させている。

「勝ったぞ、キルヒアイス」
「はい」
喜んだそのときだった。緊張したオペレータの声が上がる。
「新たな敵発見!味方後方を遮断しようとしています!」

瞬時に艦橋が凍りついた。確かに一個艦隊ほどの敵が要塞の陰から現れ後方を遮断しようとしている。馬鹿な要塞は味方ではないのか。それになぜ要塞は主砲を撃たない? 何故だ?

「キルヒアイス、してやられた……。要塞は落ちている」
ラインハルト様の顔が苦しそうに歪む。
「閣下ゼークト提督から通信です」

オペレータの声にラインハルト様は気を取り直してスクリーンを見る。
「閣下、あの敵は小官が一隊をもって止めます。閣下は前面の敵を何とか振り切り後退してください」

ゼークト提督は死ぬ気だ。この状態で前面の敵と新たな敵に対処しようなどと不可能だ……。
「ゼークト提督。それは許可できぬ」
「しかし」
「今あの敵に向かえば要塞主砲を浴びる事になる。主砲を避ければ間に合わぬ。それに要塞を良く見よ」

「!」
要塞内から新たな敵が出てきた。
「分ったか、要塞内にも敵がいるのだ。このまま撤退戦を行なう。それしか手が無い……」

凍りついた艦橋にラインハルト様の声が流れる。酷い戦いになるだろう。生きて帰れるかどうか。絶望が胸を押しつぶす。アンネローゼ様、私に力をください。ラインハルト様を守る力を……。


■ 帝国暦487年4月24日 15:00  イゼルローン要塞  特設任務部隊旗艦 ヒューベ
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