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藤崎京之介怪異譚
外伝「鈍色のキャンパス」
0.prologue
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奏も第一人者で、多くの論文も発表している。
「藤崎君。良ければ、六時位に大ホールへ来るといい。今日はオルガンの点検をするから。」
「見学させて頂けるんですか!?」
 俺はあまりのことに驚いた。普通、学生でもそうそうオルガン検査は見学出来ない。精密さが要求され、よほどの知識がなくば立ち会えないのだ。
「君はもうプロのレベルだ。何の問題もない。いずれオルガニストになるのだから、君も遣ることになるしの。」
「お願いします!」
 俺がそう返答すると、宮下教授は笑いながら「それじゃ、待っとるぞ。」と言って立ち去って行ったのだった。
 教授が立ち去った直後、それを見計らっていたかのように二人の人物が俺の前に姿を見せた。
「京…お前、宮下教授にあんなに気に入られてるなんて…。」
「そうだぞ。あの教授がオルガン検査を学生に見学させるなんて…前代未聞だからな…。」
 俺の前に現れたのは、トラヴェルソとブロックフレーテを専攻している小林和巳と、ヴァイオリンとヴィオラ・ダ・ガンバを専攻している鈴木雄一郎だ。二人ともサークル仲間で、大学の外でも演奏している。無論、河内も一緒だが。
「お前ら…レポートは済んでるんだろうな…?」
 俺は嫌な予感がしたため、半眼で二人へと問い掛けた。この二人…レポート提出の期限破り常習者なのだ…。
「勿論!終るわけないって!」
「右に同じ!」
「帰れ!」
「怒っちゃ嫌ん。」
「気色悪いから…。とっとと帰ってレポート済ませろよ…。」
 全く…この二人には困ったもんだ。
 この二人、こんなではあるが、かなりの才能がある。ただ…どうも課題として出されるものは、一気に遣る気を減退させるタイプの人種のようで、いつも教授達に目を付けられているのだ…。
「あ、いたいた。小林!ブロックフレーテとトラヴェルソの歴史的関連性についてのレポート、明日の夕方までだからな!次遅れたら…フフ…。」
「……。」
 小林を呼んで言ったのは、庄司春華教授だ。女性であるが、話し方は聞いての通り…まるで男性だ。それを言えば男尊女卑になるため、面と向かって言いはしないが…顔立ちはかなりの美人だ。言葉遣いさえどうにかなれば引く手数多だろうに…。と思っていると、次は相方を呼ぶ声が…。
「鈴木!レポートを明日迄に仕上げろ!遅れたら単位やらんからな!」
 こちらはかなり怖いお方…。ヴァイオリンと指揮を教えている椎名一教授だ。宮下教授が若い頃、高校の臨時教員で音楽を教えていた時の教え子で、齢五十を越えている。
「椎名教授…正直、ヴィオールの歴史全般ってのはキツイんですけど…。」
 冷や汗を流しながら鈴木がそう言うと、椎名教授は眉間に皺を寄せて返した。
「今更何を言っとる。お前はな、もう少し弦楽の歴史を見つめるべきだ。なぜ現在の形になったのか、なぜヴィ
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