暁 〜小説投稿サイト〜
藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
V 同日 PM.8:39
[3/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
て思う余裕も無かった。遊びにくる人達が皆、ずっといる家族の様に思ってたんだ。
 だが、ある日。そこへ一人の女性が現れた。その女性は家へ来るなり、母に向かって罵詈雑言を吐きかけた。父が止めに入ったのだが逆効果で、止めに入った父にさえも罵声を浴びせ、俺はそれが嫌で口を出したんだ。
 その女性が叔母と知ったのは後のことだが、あの時、叔母が俺の言葉をどう受け止めたかは分からない。ただ、俺が口を出した直後、彼女は黙ったまま出ていってしまった。その数日後には、彼女の主人が訪れて母と父に平謝りをしていたが…。
 あの時以降、何回か叔母と会っているが、今一つ馴染めないままでいる。まぁ、悪い人じゃないんだが、どこかしらに壁を感じてしまう。俺自身、見掛けは外人だからな。そのせいかも知れないが…。
「だが、あれは騒ぎを収めようとしただけだ。特に善意を持って言ったというわけじゃない。」
 俺が溜め息混じりにそう言うと、今度は今まで黙っていた父が言った。
「京。そんなこと考えずに言ってしまうのが、お前の良いとこなんだ。それに救われたのは、なにも文子だけじゃない。お前は知らず知らずの内に、多くの人を癒しているんだぞ?それがどれだけ素晴らしいことか分かるだろ?」
 父がそう言うと、アウグスト伯父も微笑みながら頷いていた。だが、アウグスト伯父は直ぐに陰りを帯びた表情になり、そして俺に言った。
「これが…お前の母がわしらに告げずして婚姻を結ぶしかなかった理由じゃ。わしらはの、"邦人"をどう解釈すべきかに悩んでおった。それで文化圏と宗教圏の違いではないかと考え、基本的に白人以外とは関わらせなんだ。じゃが、とある親族の晩餐に招かれた際に、アンナは京一郎君と出会ってしもうた。元々無理なことは承知しとったが、こうも容易く運命に飲み込まれようとは…。」
 まるで苦痛にでも耐えるような表情で、そうアウグスト伯父が言った。俺はそんなアウグスト伯父へ返した。
「これは伯父様方のせいではありません。いいえ、最初から誰のせいでもないんです。神が運命を定めることはありません。ですが、そうならなければならないものもあるんです。イエスが死を受け入れたように、我々もまた、それに倣わなくてはならないのかも知れません。」
 今まで、自分が何であるのか気にはしていた。いや、そうじゃない…。自分が普通ではないことに目を背けていた…と言うべきだろう…。
 もし、今まで起きた事件の全てがそんな俺のせいだとしたら…。俺はこの先どうすべきか?
 思えば大学のあの事件以来、俺はこの手の事件に巻き込まれ続けてきた。何故だ?
 確かに…あの時、あの印を俺は打ち消すことが出来た。あの時以来、俺の音楽はなぜか悪意を払拭する力を宿したように思う。
「だったらあれは…やはり俺のせいだったのか…?」
 俺がそう一人呟く
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ