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藤崎京之介怪異譚
last case.「永遠の想い」
V 同日 PM.8:39
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之介…お前のせいではない。そう思うことこそ、人の身にあっておこがましいというものじゃ。」
 俺の心を見透かしたように、アウグスト伯父がそう言った。
「しかし…。」
 アウグスト伯父の言葉に返そうと口を開きかけた時、それを遮るように奏夜が俺へと言った。
「兄貴。兄貴は誰かを殺したいと思うほど憎んだことあるか?」
「いや…それはない…。」
 奏夜の問いに、俺は複雑な気持ちで答えた。今まで、奏夜が俺にそんなことを問うことなんてなかったから。
「だったら、兄貴は善なんだと思う。俺は…そんな憎しみを持ったことがある。いや…世界の殆んどの人間はそうじゃないか?それもまた人の感情だし、全くそれがないとは言い切れない。俺が見る限り、兄貴にはそうした邪な感情が極端に薄いんだ。だから…神への信仰心、愛が揺らがない。」
 奏夜はそう言って、どこか寂しそうに微笑んだ。
 すると、今度は宣仁叔父が言った。
「そうだな。私達でも憎しみを捨て切れているわけではない。だが、京之介には生まれながらにして、他者への愛が備わっていたように思う。」
 皆はそう言っているが、俺はそこに違和感を感じた。なぜ…そんなことを言うのか分からない…。
 確かに…俺は人を殺したいほど憎むと言うことはなかった。しかし…それが善であると言えるのだろうか?
 否。それは断じて違う。
 俺はただ、運が良かっただけなんだ。だから今までそういう感情を持たずにいられただけなんだ…。
「僕は…そんな大層な人間じゃない。単に運があっただけだ。」
 俺が自嘲気味にそう言うと、奏夜はつかさずそれに返した。
「兄貴。文子叔母さんと初めて会った時のこと、覚えているか?」
「…ああ。それがどうかしたのか?」
「あの時、文子叔母さんは母さんのことを酷く罵った。だけど、兄貴はこう言ったんだ。"貴女は母さんが嫌いなんですか?それとも異国の方が嫌いなんですか?それとも、自分が嫌いなんですか?"ってな。」
「そんなこと…言ったかな…。」
「言ったんだよ。そしたら文子叔母さん、今度は兄貴を罵り始めはしたけど、次の兄貴の言葉で黙っちまったんだ。"人は生まれる時、時も場所も人間関係も選ぶことは出来ないんです。それは罪なのでしょうか?もしそうだとしたら…とても哀しいですね…。"」
 そうだ…そんなことを言った気がする…。
 あれは高校へ入ったばかりの頃。その時は丁度、父と母が揃って家に帰ってきていた。
 あの当時、両親は親戚とは疎遠だった。いや、わざとそうしていたんだ。二人の結婚は、双方の親戚一同には歓迎されていなかったからだ。
 そんな家族でも、一部の親戚や友人達は歓迎してくれ、実家には毎日のように誰かしら遊びに来ていた。
 父と母には、それだけの人脈があったのだ。
 そんな中で育った俺は、淋しいなん
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