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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十六話 要塞攻防戦(その1)
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す。予備を投入しましょう。それ以外味方を救う方法はありません」

帝国軍は誤った、あのままならこちらに打つ手はなかったのに。帝国軍はあの艦隊を見殺しにすべきだったのだ。混戦に持ち込めばトール・ハンマーは撃てない、こちらにも勝機はある。
「待機中の艦隊に命令。直ちに出撃して帝国軍を攻撃せよ」
グリーンヒル参謀長の命令に艦隊が動き出す。その時だった、オペレータが悲鳴を上げる。
「イゼルローン要塞が! 主砲を発射しようとしています!」

どういうことだ? この距離ではあたらない。いや帝国軍が巻き添えを食う。
「敵艦隊、天底方向に急速移動!」
「トール・ハンマー、来ます!」
続けざまにオペレータが声を上げる。白く輝く巨大な光が要塞より発射される。何を狙ったのだ?

「! やられた」
「どうした。ヤン大佐」
「参謀長、やられました。あれを見てください」
私は味方の予備部隊を指差した。動き出したはずの艦隊はバラバラになっている。

「どういうことだ? 一体」
「トール・ハンマーです」
「トール・ハンマー? しかし射程内ではなかったはずだ」
「そうです。しかしトール・ハンマーが来ることで反射的に回避行動を取ってしまったのです」
「ばかな…」
「あれをご覧ください」
「!」

敵艦隊は天底方向に移動し味方部隊を攻撃している。最初にいた小部隊と合流し圧倒的な攻撃をかけてくる。壊滅状態になるのも時間の問題だろう。
「敵は最初から艦隊を天底方向に移動させるつもりだったんです。但し艦隊を出せばこちらが予備部隊を出すのもわかっていた。だから…」
「時間を稼ぐためにトール・ハンマーを撃った。予備部隊はこれまでの経験からトール・ハンマーが来ることで反射的に回避行動を取ってしまった……」
「はい」

沈黙が落ちた。司令部内も皆沈黙している。味方部隊を助ける事は出来ない。
予備部隊が味方部隊を助けるには艦隊を再結集しイゼルローンの要塞主砲の死角から近づかなくてはならない。それまでに味方部隊は一方的に撃たれ壊滅状態になるだろう。ミュッケンベルガー元帥だろうか? そうは思えない。どうやら敵には恐ろしく切れる相手がいるようだ。まさかトール・ハンマーを時間稼ぎに使うとは……。

■ ジークフリード・キルヒアイス

「見事だな、そう思わないかキルヒアイス」
「はい。まさかトール・ハンマーを時間稼ぎに使うとは思いませんでした。ミュッケンベルガー元帥でしょうか」
「まさか、こんな事が出来るのは…あの男だけだろう」
「ヴァレンシュタイン准将……ですね」
「ああ」
「彼は俺に味方を作れと言っていた。必ず奴を俺の味方にしてみせる。俺を認めさせてやるさ」
「はい……」

■ヴァレリー・リン・フィッツシモンズ
 
司令部内には
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