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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第三十六話 要塞攻防戦(その1)
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、准将はミュッケンベルガー元帥に指揮権の委譲を願った。信じられない、何考えてるの、この子。 
「控えよ、准将。半病人の分際で無礼だろう。その体で何が出来る」
「…二時間でよいのか」
「閣下!」
「はい。二時間で結構です」

 元帥はシュターデン少将が止めるのも構わず、准将に話しかける。表情は厳しいが怒りはない。ただじっと准将を見ている。准将も元帥から視線をはずさない。周囲はみな呆然としている。私もだ。
「…二時間で勝てるのか」
「はい、勝ちます」
「負けは許されぬぞ」
「はい。勝ったら一つお願いがあります」
「……」

「いえ、小官個人のことでは有りません」
「そうか……。よかろう、任せる、二時間だ」
「はっ」

「要塞内総員に伝達。一撃を覚悟せよ」
准将が最初に下した命令は周囲を唖然とさせるものだった。しかしその直後、オペレータたちが警告の叫びを上げる。
「ミサイル来ます!」
「迎撃光子爆弾発射します!」
「間に合いません!」

 その声と共にイゼルローンに衝撃が走る。爆発光が白く光り私たちの視界を焼く。さっきの命令はこれがわかっていたの?
「一体何が起きたのだ! 何故判らなかった!」
シュターデン少将の怒声に答えたのは准将の静かな声だった。
「反乱軍がトール・ハンマーの死角からミサイル攻撃をかけてきたのです。正面の敵の動きは囮です」
「囮…」
「反乱軍、来ます!」

ワルツを踊っていた同盟軍が要塞主砲の死角からせまる。司令部の総員が准将を見る。しかし准将は何も言わない。
「何をしている! 命令を下さんか!」
「その必要は有りません。あの通りです」
「!」

二千隻ほどの艦隊が天底方向から同盟軍を打ち崩していく。避けようとすればトール・ハンマーの射程内に入ってしまう、逃げられない。
「卿が手を打ったのか」
「いえ、あれはミューゼル少将です。彼ならこの程度は言われなくてもやるでしょう」
ミューゼル少将、准将が天才だと言っていた少年だ。でも私には准将の方が怖い、全てを見通しているとしか思えない。

「閣下、艦隊が出撃許可を求めています」
「出撃を許可します。但しトール・ハンマーの発射命令がすぐ出ます。その場合、速やかに天底方向に退避することを伝えてください」
トール・ハンマー? 射程内には同盟軍はいないけど? 大丈夫なの准将、熱でおかしくなってない?

■ヤン・ウェンリー

 味方の攻撃部隊は敵の小部隊の攻撃を受けて一方的に打ち砕かれていく。全く巧妙で効果的だ。このままではどうにもならない。しかしあの艦隊とて無限に戦えるわけではない。どうする、ミュッケンベルガー元帥、見殺しにするか。
「帝国軍、イゼルローン要塞より出撃して来ました」
「グリーンヒル参謀長、チャンスで
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