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執務室の新人提督
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を吐いた。
 空を見上げると、もう紅い色に染まっている。あともう少しすれば夜の帳が下りるだろう。つい数ヶ月前までは、この夕焼けの時間が長かったことを思いながら、飛龍は弓道場から見えるグラウンドを見た。
 そこに、雲龍姉妹の上二人と龍驤の姿が見える。茜色の空を舞うのは、雲龍達の式神戦闘機だろう。龍驤のそれに比べれば、空を奔る姿の精度がまったく違うのだ。
 それを腕を組んでじっと見つめるのは、龍驤だ。
 彼女達は戦闘機の運用方法が葛城とは違うタイプなので、指導艦は龍驤などの式神タイプの艦娘になる。
 
 と、龍驤と飛龍の目があった。
 龍驤はバイザーを脱いでそれを振った。雲龍達も飛龍に気付き頭を下げる。飛龍はそれに一礼返して再び葛城の背に目を戻した。
 その細い肩がどこか寂しげに見えるのは、果たして飛龍の錯覚だろうか。
 一人、姉達から離れて弓を構える葛城を、飛龍は不憫に思い慌てて首を振った。
 
 飛龍からすれば、雲龍達は妹と呼べる存在である。改飛龍型とも称されえる雲龍達に、飛龍が思う事は実に多い。そうでなければ、葛城の指導を進んで担当してはいないだろう。
 弓を使う艦娘は多い。赤城をはじめ鳳翔達軽空母にも居るのだから誰でも良いのだ。
 それでも、飛龍は志願した。戦闘機を把握できず、どこか寂しげな葛城を放っておくなど彼女には出来なかったのだ。
 
 ――でも、もう嫌われてるかもしれないなぁー。

 訓練の度、飛龍は葛城にきつく当たっている。それを愛の鞭だ、と胸を張って言えるほど飛龍は厚顔無恥ではない。ただ、それでも厳しくあたらなければ葛城の為にならないのだから、飛龍は現在のスタンスを崩せないのだ。
 おもしろい物で、これは瑞鶴なども同じである。葛城の指導であるなら、まず彼女こそが一番相応しい筈であるのに、瑞鶴は一切関わらないのだ。
 
 ――私が訓練をつけたら、きっと甘くなります……それは葛城の為にならない。だから飛龍さん、お願いします。

 そう言って、二人だけの時に瑞鶴は飛龍に頭を下げたのだ。
 嫌われ役を押し付けたという事を、瑞鶴は頭を下げることでしか償えないと肩さえ震わせたのである。その想いが如何程の物であるか、飛龍には痛い程分かった。
 葛城達は、瑞鶴にとっても可愛い妹分なのだ。それも自身を慕う葛城などは、本当に瑞鶴からすれば妹同然だろう。

 この鎮守府は確かに自由度の高い平和な場所だ。
 主である提督に似たせいか、個性的な艦娘が多くそこに漂う空気はどこか緩く穏やかだ。それでも、艦娘は戦う為の存在である。
 穏やかで、緩やかで、甘くあって、それで誰もが強くなれるのならそれで良いだろうが、しかしそんな訳がない。
 戦場はどんな存在にも平等だ。一瞬の隙が命を奪い、僅かな甘さが誰かを傷つける。新兵
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