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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
外伝 黒の修羅 前編
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「物事の善悪に目を向けたとき、負戦にもそれなりの楽しみ方というものがある。―――が、しかしそれは、人類の存続という前提があったらればこそ。
 この戦い、確かに詰まらぬし、それを指揮する連中もまた詰まらん人間どもよな。」

「中佐、それはどういう……」

 先ほどの一向に議論を纏めれぬ帝国軍将校らを思い浮かべて山吹の中佐は鼻で笑う。
 その意味を問わんと黒の少女が問うた。

「例えばだ、伊上少尉。避難する民間人の護衛、それを一切無視しそのリソースを前線投入や物資輸送に割り振った場合、我が軍の戦果はどれ程になると思う?」
「そんなことが許されるはずは―――」

 帰ってきたのは問、しかも答えが明瞭過ぎるが、決して選んではいけない想定だ。

「許されるさ、我らが守るべきは日本国民とその益に限定される。この国の人間を守るのはこの国の軍隊の仕事だ―――覚えておくといい、国際社会において守るべきは人道などという影も形もない幻想ではない、損得勘定のみだよ。
 それをはき違えては、真に守るべきモノを殺す事にしかならない。」
「じゃあ見殺しにしろと……避難民の中には小っちゃな子供だっているのに。」

 苦虫を百匹ほど纏めて噛み潰したような苦々しい表情で黒の少女が言う。
 其れを興味なさげに聞いていた黒の青年は“愚かな”という感想を抱く。

「君のいう事は良くわかるぞ少尉、善でありたいその願いは人として至極真っ当だ。
 だが実際、善には犯せぬ非道がある。取れぬ手段が多い、枷が多い。……故に善は悪に対し常に不利だ。
 だがな、善であり続けるが故に滅びてしまえば、それは無責任という悪だ。」
 「だから私たちは今必死に戦っているんじゃないですか!!」

頑張ったのだから認められるべきだ、頑張ったのだから成果がついて然るべきだ。
――彼女の言葉にはそういう前提が見え隠れする。
実際、彼女はその費やした労に見合うだけの結果を今まで得てきたことが多いのだろう。

その才、努力、強運それらは認めよう、彼女の力は一級品だ。
だが、そうはならない事態は常に付き物なのだ―――いくら頑張っても報われない、そんなことはザラにある。

必死に戦った、だが尚足りぬ場合―――余計なものをそぎ落とすしかない。


「ゆい、ではお前は日本のいま、笑っている日本の子供たちがその目前で親兄弟を食い散らかされて―――その絶望と恐怖の中で生を終えるのを良しとするか?」
「それとこれとは話が違うよ!!!」

我慢の限界、今自分たちが置かれている状況をそのままに口にした。


「同じことだ、今ここで日本と無関係な人間の命と、俺たちが守るべき命。その差は明瞭だろ。」

「同じ命なのに差別しろっていうの!?」
「朝鮮人と日本人だ、そ
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