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Muv-Luv Alternative 士魂の征く道
外伝 黒の修羅 前編
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かりするよ、と同僚に愚痴っていたのを聞いた記憶があった。

(………俺何ぞさっさと見捨てれば此奴も自由な身の上なのに、物好きな女だ。)

「お集りのお歴々の方々よ。もう少し意義のある議論を成しませぬか?」
「これは発花(たちばな)どのそれはどういう意味でしょうか?」

 声を発したのは山吹を纏う斯衛軍人であった。

「ええ、皆さま先ほどから目的にバラつきが見受けられます。先ずは退くか攻めるか、それを択一せねばならないでしょう。」
「其れは尤もだ、国連上層部からは徹底抗戦という指示を受けてはいるが……正直、既存戦力では不可能に近い。」

「ならば、我が日本帝国と国連の利害は一致しています。日本は未だ本土防衛の体制が整ってはいない。
 ならば、我が国には一日でも多くの猶予が必要なのです。其の為にも攻めるしかないでしょう。」
「しかし山脈が……」

「ではここで退いたとして一体何処で巻き返しを行うつもりなのですか?幸いなことに平野周辺は山脈、光線級から隠れる場所は幾らでもある。
 みなさん、BETAの多くがハイヴ建設に費やされている今こそが彼奴等を足止めする好機!ここで退けば奴らの増殖を許し、半島そのものが日本への橋頭堡(きょうとうほう)となる。」

 山吹を纏う斯衛の軍人、この遠征部隊の指揮官である発花中佐が一同を見渡しながら丁々発止に紛糾する議論を纏めていく。

「退くだけでは意味はありません、時間を、猶予を稼いでこそ我らの勝利への鍵となる。」
「しかし……主力の中韓連合軍は山岳地帯での戦闘に不慣れだ、装備・練度のバラつきが激しい国連軍も難しいだろう……我が軍も難民の護送で手一杯だ。」

 トンネル封鎖作業、それは周辺の山越えをしてくるBETAを排除しつつ、内側からも出てくるBETAを相手にしながら一か所にとどまり続ける……という事だ。
 大量のBETAの蠢く真っ只中で足を止める危険性―――並みの部隊では不可能だ。

「ご安心を……山岳地帯での超密集格闘戦。我ら斯衛が最も得意とするところです。」


 並みいる日本帝国軍将官、彼らを前に斯衛軍遠征部隊の将は宣言した。






「――――」
「詰まらなさそうだな柾。」

 上官である発花中佐が警護役であった己に語り掛けてきた。

「結論が最初から決まっている割に長い会議を見物させられたのです、それくらいは大目に見てください。」
「こら!忠亮ッ!!―――中佐申し訳ありません!この人には私からよく言い含めておきますので。」

「よい、伊上少尉。彼の言い分も尤もだ、確かに詰まらぬ会議ではあった。」

 正直な心境を口にした己を黒の少女が口を酸っぱくし、代わりに謝罪を述べる。
 しかし、上官である彼は同じ意見のようだった。
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