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至誠一貫
第一部
第六章 〜交州牧篇〜
七十六 〜新天地〜
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連れられ、執務室に入った。
「早速ですが、土方様にお願いがございます」
「何か?」
「はい。士武と私で、任地を交代したいと思います」
「ふむ。お前がこの南海郡に、士武が交趾郡に、という訳だな?」
「そうです。交趾郡は私が長らく郡太守を務めてきた地、それに比べてこの南海郡は州都がありながら、政情が安定しているとは言えません」
「……なるほど」
「士武の力不足という面もありますが……土方様がこの番禺に留まられるのであれば、その方が諸事都合が良いかと存じます」
 ふむ、理には適っているな。
「朱里、どうか?」
「はい。士燮さんは交趾郡だけでなく、この交州全体に通じているご様子です。私もその方がいいと思います」
「稟も同じか?」
「そうですね。歳三様が交趾郡に向かわれるのであれば別ですが、それは効率面から言ってもあまりお勧めは出来ませんね」
「他の者もそれで良いか?」
「風は賛成ですよー」
「私もそれが良いかと」
「私も山吹(糜竺)さん達に同意です。ただ、各郡の見分はしておいた方が宜しいかと思います」
「愛里(徐庶)の申す通りだな。では士燮、郡太守交代は私から朝廷へ奏上する。それで良いな?」
「はい、ありがとうございます」
 何やら含むところもありそうだが、問い質しても答えまい。
 まずは、この地の事を詳しく把握する事に努めねばな。
「では山吹、風。お前達二人で他郡の見分を行え」
「わかりました」
「御意ー」
「愛紗、鈴々、二人に同行せよ」
「はっ!」
「応なのだ!」
 この面々ならば、何があっても切り抜けられるであろう。
「紫苑。此方に向かっている劉焉軍、この番禺に向かうように伝えてくれぬか?」
「畏まりましたわ」
「お言葉ですが、歳三様。もうこの交州警備という名目は失われています。無闇に迎え入れるのは如何かと」
「稟の申す事も尤もだ。だが、いくら勅命での行動に非ずとは申せ、そのまま返せば劉焉の面目が潰れかねぬ」
「……そうかも知れませんが」
 あまり、気が進まぬか。
「心配致すな。率いるのは紫苑が良く知る将なのであろう?」
「ええ。……その隙につけこんで何かを企むような、卑怯な真似をするような者達でない事は、私が保証します」
「では、朱里、星。二人は劉焉軍を出迎え、番禺まで同行致せ」
「はい、わかりました」
「御意!」
「これで良いな?」
 稟は、しっかりと頷いた。
 杞憂に過ぎぬとしても、稟の慎重さは好ましきもの。
 紫苑を信じぬ訳ではないが、軍師としての判断は尊重すべきだ。

 山吹らは準備を整え、その日のうちに出立して行った。
 私は愛里、彩と共に、交州事情について士燮から説明を受けている。
「ふむ、交易はかなりの規模に上るのだな」
「はい。南方との行き来が盛んで
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