序章
妖精の尻尾 《前》
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、豊満な胸の谷間が覗いていた。
ベルトの右側には金銀の鍵の束を、左側には自衛用の鞭を装備した少女―――ルーシィは、店主の言葉に溜め息をつく。
「あーあ……無駄足だったかしらねえ」
「まあまあ、そう言わずに見てってくださいな。新商品だってちゃんと揃ってますよ」
せっかく来た客を逃す訳にはいかない。
店主が取り出したのは、文庫本ほどのサイズの箱のようなもの。
「女の子に人気なのは、この“色替”の魔法かな。その日の気分に合わせて…」
言うが早いが箱を開き、中のギアをくるりと回す。
すると、緑に近い色合いの魔法陣が展開し、キラキラとした光が店主を包み込んだ。
「服の色をチェンジ〜ってね」
「持ってるし」
服の色を変えてポーズを決める店主だが、ルーシィは聞いてはいるものの見てはいない。缶の上に変な顔の人形を乗せたような見た目の魔法アイテムを「何コレ」と呟きつつ棚に戻す辺り、彼女の興味は店主には微塵も向いていないのだろう。
そんな彼女相手に崩れ落ちた店主だったが、まだ諦める必要はない。ルーシィがダメなら、もう1人を狙うまで。
「でしたら、これなんてどうでしょう?最近男性に人気で」
「必要ない」
が、そのもう1人はルーシィ以上に店主に冷めていた。商品を見る事無くぶっきらぼうに言った連れに、先ほど店主の勧めを見る事なく拒否したルーシィでさえも振り返って溜め息をつく。
「ちょっとニア、せめて最後まで聞きなさいよ」
「聞いたとしても買うつもりはないんだ。だったら聞くだけ無駄だろう」
そもそも興味もない、と続ける青年―――ニアは固まった店主を一瞥すると、店の棚1つ1つから何かを探すように目線を彷徨わせる。
紺色のパーカーのファスナーを上を僅かに残して締め、小さく開いた箇所からはやや明るいグレーのインナーが覗く。黒のズボンのポケットに手を入れ、色味を抑えた水色のスニーカーを履く足は音を立てずに店内を歩いていた。紺色のフードと濡れ羽色の長めの前髪の奥、澄んだ水色の目が商品を眺めては視線を外す。
「それより、目当てのものは見つかったのか?」
「あ、そうそう!!あたし、門の鍵の強力なやつ探してるの。そっちにある?」
「…いや、見た限りはない。ただ、お前が探してた小犬座の鍵ならあるけど」
「え!?」
ニアが指す棚に駆け寄り、じっとガラスの奥を見る。いくつかの銀色の鍵が並ぶのをじっくり見つめながら、3つ目の鍵がルーシィの欲しがるそれだった。
「あっ、白い子犬!!!」
「そんなの全然強力じゃないよ」
「気にするな、この街に来るまでもずっと探してた鍵なんだ…で、買うのか?」
「もちろん!!!」
弾む声と満面の笑みで頷いて見せると、ニアは「そう
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