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SNOW ROSE
兄弟の章
Z
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「今…何と申した…?」
 フォールホルスト男爵は、信じられぬといった顔をして聞き返した。
「はい。ジョージ・レヴィン様がお亡くなりになりになられました。」
 男爵に問われ、執事は再度淡々と答えた。
 答えを聞いた男爵は、軽く頭を横に振って顔に手を当てた。
「ドナ周辺の山道にて、馬車が谷底へ落下したものとの報告を受けております。その地の医師からの報告では、ほぼ即死だったとのことにございます。」
 やはり淡々と答える執事に、男爵は苛立ちを覚えた。
「何故だ!ジョージが何故に死なねばならんのだ!彼は稀に見る天才であったのだ。そして何より、弟のために苦労を惜しまぬ心優しき者であったのだ。なのに…!」
 男爵も分かってはいる。執事は如何なる時であろうと平静であらねばならない。
 この執事とて、ジョージがどういう人物か知っているのだ。男爵の弟の葬儀の際の、あの晩餐にも同行していたのだから。
 そして、あの演奏に涙した者の一人でもあるのだ。
「葬儀は…済んでおるのか?」
「はい。ドナの街にて五月十九日に、彼の祖父母及びメルテ村民の手により執り行われたそうであります。その後、遺体をメルテの村へ移すために翌日に出立したとのことでございます。」
「分かった。」
 そう言うや、男爵は椅子から立ち上がり、執事に向かってこう告げた。
「楽団員全員を召集し、それぞれに旅支度を整えさせよ。私はサンドランドの店に行く。帰りしだい出発するゆえ、馬車を用意して急がせろ。」
 そう告げ終えると、男爵は部屋を出ていった。

 その頃、サンドランドの店では騒ぎになっていた。
「何で彼のような人が死ななくちゃならないんですか…!?」
 涙を流しながらサンドランドの前で怒鳴っているのは、後輩のメルデンだった。
 彼にとって、ジョージは尊敬できる先輩であり、目指すべきべき目標であり、そして頼れる兄のような存在でもあった。
「メルデン…君の心は痛いほど分かる。皆だってそうだし、私だってそうなんだからね…。彼ほど真直ぐに生き、心優しき人間はそうは居ないだろう。彼は真剣だった。それは自らのためでなく、病気がちな弟のためだった。その弟が亡くなってしまい、今度は…。」
 その場にいた誰もが思っていたことであった。
 コック長のアッカルドなどは、ジョージの死を伝えられてからと言うもの、気力を無くして椅子に座ったまま動かないでいた。
 いや、他の従業員達も皆そうであった。口々にジョージの思い出を回想しあっている有様で、とても営業どころではなくなっていたのである。
 たった十数か月働いただけの人物。しかし、ジョージはこの者達に愛されていたのだ。
 店の中だけではなく、この店を訪れた客や仕入れにくる商売人、買い物に行った店の人達にすら好かれていた。
 それは正しく
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