暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
GGO
〜銃声と硝煙の輪舞〜
現れた悪意
[1/5]

[8]前話 [1] 最後 [2]次話
まず光があった。

重い目蓋をこじ開け、奇妙な意識の剥離感に頭を悩ませながら、レンは目を覚ました。

―――こ、こは……。

転移の時に感じる、軽い眩暈のようなものではない。頭蓋骨を開けて直接脳髄を掻き回されたような激しい頭痛と嘔吐感を堪えながら、少年は辺りを見回した。

周囲は、地平線まで広がる荒れ果てた荒野だった。丈の低い細草が洞に響くように悲しげな音を立てる風にさわさわと揺れ、ところどころから突き出した高さ二メートルほどの岩塊が天を染める毒々しい黄色と赤の中間ぐらいの色を鈍く反射していた。

空一面を覆うどんよりとした曇り空を鈍く痛む頭と眼でぼんやりと眺めていたレンは、そこでようやく自分の身体が自由に動かせないことに気づいた。いや正確には、身体本体は身じろぎくらいできるのだが、手足だけが言うことを聞いてくれない。

首を巡らせると、すぐさま納得することになる。

現在レンは、一定間隔を開けてランダムに地面から生えている大岩に身体を固定されているのだ。それも、ロープなどという心温まる手段ではなく、四肢の先端を針で串刺しにするという方法で。

そこまでを視認した時、灼熱のような痛覚の本流が頭に雪崩れ込んできて、あやうくレンは舌を噛みかけた。必死に噛みしめた歯の間からくぐもった悲鳴が漏れる。

なぜだ、というのが喘ぎながら思った思考だった。

確か自分は、準決勝が終わり、待機空間を経て転移させられたはずである。ということは必然的にここは決勝のステージということになるが、それにしては開始早々岩に張り付けになるというのはどういうことだ。

なにより――――

「――――――――ッッッァアアあああああああぁぁァァッッ!!!」

ヴシュッ!という柔らかいものが引き千切れるような音とともに、少年は鋭利な針が突き刺さったままの両手を岩から引き抜いた。その軌跡を追うように鮮やかな紅が宙空に輝線を引く。

この痛み。

ことここに至って、ようやく少年の脳は正常に現状の異常性を再認識した。

仮想空間での《痛み》というものは、常に制限されているものである。それはなぜかというと、痛覚を現実とほぼ同レベルにすると、仮想から現実へと帰還した時にその痛みが引き継がれてしまう可能性があるからだ。

だが、今レンが感じている痛みは、まぎれもなく現実とほぼ同じ。

こんなことをしでかす方法はただ一つ。

そこまでを少年が胸中で叫んだ直後、ゴバッ!!という大気が引き裂かれる恐るべき音が間近で炸裂した。

音が死んだ。

景色が引き伸ばされるような感覚とともに一切の音が消え、数瞬の遅れを経て身体がバラバラになりそうなほどの衝撃が襲った。

「ごッォ……がああアアァアァァァァァアアッッッ!!!?」

受け
[8]前話 [1] 最後 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ