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ソードアート・オンライン‐黒の幻影‐
第2章 夜霧のラプソディ  2022/11
12話 生存者達
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けるなんて思わなかったヨ。いやー、世の中狭いもんダ」
「やっぱり知り合いだったか」
「知り合いというよりは、情報を持ってただけだけどナ」


 苦笑いを零しながら、アルゴは森を見る。どこか睨み付けるような視線は、ただ景色を眺め見ているだけとは思えない。


「………あの子達は、オイラの《攻略本》の不備でメンバーを一人亡くしてるんダ」
「不備?」


 《アルゴの攻略本》は、アルゴが情報源とする某ベータテスターから取材、得た情報を編纂、製本してNPCショップに委託配布している、新規プレイヤー達への攻略指南書である。精緻に纏め上げられた内容は、階層における地形にはじまり、ショップの品揃えから、出現モンスターの特徴やクエストの情報、果ては別冊形式でフロアボスまで網羅される珠玉の逸品である。第一層ボス攻略までに多発したプレイヤーの死亡もまた、この攻略本の出版があってからは大幅に犠牲者を減らしている。その実績からくる信頼度は最早プレイヤー間では不動のものであり、バイブルとしても名高い。
 そんなベストセラー出版者の口から出た《不備》の単語に、思わず眉間に皺が寄る。アルゴだって人間である以上は何かしらの取りこぼしはあるだろうが、それが死に繋がるほど重大なものであるならば簡単に見逃してしまうだろうか。その認識と現状の齟齬が、俺の中では違和感となっていた。こうして場所を移動してから話し始めたのだって、人死に関連の話題故に、ヒヨリに聞かせないための配慮なのだろう。ヒヨリでは、誰であれ人の死は重く受け止めてしまう。俺以上に深刻に捉えてしまうだろうから。


「まあ、正確にはモンスターにイレギュラーなスキルがあったんダ。エルフ系のオフィサーに、周囲から同種族の小隊を呼び寄せる特殊スキルがあったらしイ。死んだその子は、膨れ上がったエルフの部隊からの撤退中に転んで、あの子達を逃がすために自分を切り捨てさせたらしい。第三層に進出して初の犠牲だったナ」
「そうか………」


 気の利いた言葉も思い浮かばず、彼女達の身に起きた不幸に圧倒されていた。仲間を生かすために死んだプレイヤーに弔意を表するような奇特な真似は出来ないが、それとは別に、残されたあのPTの今後が案じられた。
 同時に、思考する。オフィサーと名の付くエルフは、どちらの陣営であれ装備した武器に対応したソードスキルと《指令》スキルを習得している。《指令》スキルとは先に体験した通り、自身の率いる小隊に及ぶ範囲支援効果を付与するものだが、厳密には発動範囲自体は距離ではなく、《オフィサーが視認し得る範囲での友軍モンスター全て》であり、そこに距離も数も制限されていない。オフィサー自体が出現率がやや低いモンスターであるという点と、霧に鎖された森の中で数体の集団で行動していることを鑑みて、本来ならば
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