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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第四話
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多いのに、その英雄は六十年も掛けて完結させた。それじゃあ途中から飽きちゃうよ。
 僕がそう言うと、祖父はいいかと諭すように前置きを置いて言った。

『確かに長い。普通のヒューマンが人生のほぼ全てを擲ってようやく完結した。でもなベル、その女子は世界中に知らしめたんじゃ。誰にでも英雄になれることを。まあ、あやつは死ぬその直前まで納得いってなさそうじゃったがな』

 何の才能も無い女の子が、世界中に称えられるほどの大英雄に。その言葉の響きは、僕の心に途轍もない衝撃を与えた。確かに長かったのかもしれない。確かに辛かったのかもしれない。でもその女の子は諦めずに進み続けたんだ。そして、誰もが憧れる英雄になったんだ。
 
 僕は無自覚に興奮しながら僕にもなれるかなと訊ねた。祖父は淡々と告げた。

『言ったろう。誰にでもなれると。だがベル、勘違いしてはならん。誰よりも英雄になることを望んだ奴が、英雄になるんじゃ。誰もが誰よりも英雄になりたいと願うから、誰もが英雄になれるんじゃ。ベル、お前にはその覚悟があるか』

 是非も無かった。大きく頷いて、その女の子の名前を聞いた。祖父はその時初めて、豪胆に笑って教えた。まるで自分の憧れる英雄を誰かに紹介するように、無邪気な笑みで。

『クレア・パールス。全くバカな奴じゃったよ』



 唐突に蘇ったその記憶はきっと、走馬灯と言うやつだろう。

「ほあああああああああああああああああああああああっ!?!?」

 脇目も振らず恥ずかしがることなくなりふり構わず絶叫しながら(ベル)はダンジョン第五階層のどこかを走り回っていた。
 訂正、逃げ回っていた。

『ウヴォオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 並みの冒険者ならばはだしで逃げ出す迫力を有しながら、そのモンスターは荒縄のように筋張った方と腕を隆起させ、踏み出された一歩によって蹄型に地面が陥没した。筋肉質な巨大な体に赤銅色の体皮。モンスターの代表格にも数えられる牛頭人体のモンスター《ミノタウロス》だ。

「な、なななななんでえええええ!? なんでこいつがこんなところにいいいいいい!?」

 前述の通り、ミノタウロスはモンスターの代表格を誇る強さを有している。その程はLv.2。下級冒険者と上級冒険者の境を別つ鬼門。
 そんなミノタウロスが何故か下級冒険者たち御用達の第五階層に現れ、僕のことを見つけた瞬間猛烈な勢いで追いかけてきた。気のせいかもしれないけど、このミノタウロスも物凄い必死のように見えた。きっと僕の目があまりの自体に幻覚を見たんだ。そうに違いない。

 僕はミノタウロスと運命的な出会いを果たすためにダンジョンに潜り込んだ訳じゃないんだぞ! 僕は可愛い女の子と運命的な出会いを果たすために潜ったのに、もう僕の
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