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至誠一貫
第一部
第四章 〜魏郡太守篇〜
五十二 〜洛陽へ〜
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袁家に生まれ、期待を一身に背負ってきましたわ。名家に相応しいのは華麗さと優雅さ。……ずっと、そう信じてきましたの」
「だが、斯様な名家ならば、人もいよう。貴殿の心がけ次第では、学びようがあったと思うが」
「そうかも知れませんわね。……今にして思えば、わたくしの周りには、わたくしを褒めそやす者ばかりでしたわ」
 恵まれ過ぎた環境。
 周囲の者も、それに咎めぬ者ばかりであったのであろう。
 だが、この戦乱が収まらぬ世で、今のままの袁紹では……立ち行かぬな。
「土方さん。わたくしは、どうすれば宜しいのでしょう? もう、わからなくなりましたわ」
「……まず、ご自身で考えられよ。私は、貴殿に指図や指導をする立場ではない」
「…………」
「洛陽までの道中、また話す機会もあろう。一度、自分を見つめ直す事だな」
「自分を、見つめ直す……」
「然様。一度に多くの事を考えても、泥沼にはまるだけだ。宜しいな?」
「わかりましたわ……」


 その夜。
 執務室で愛里(徐庶)や朱里と話していると、
「土方様。典韋、と言う者が来ておりますが」
 兵が、そう伝えに来た。
「うむ。此処へ通せ」
「はっ」
 愛里と朱里が、眼を合わせて頷いた。
「歳三さん。例の子ですね?」
「はわわ……。わ、私もここにいていいんでしょうか……?」
「そうだ。二人とも、良いな?」
 私は、短く答える。
 そこに、典韋が案内されてきた。
「土方さま。先ほどは、失礼しました」
「いや。鈴々と文醜が迷惑をかけたな。此方こそ、済まぬ」
「い、いえ、そんな。……ところで、そちらの方は……?」
 私は、二人に眼で促す。
「わたしは、徐庶と言います。歳三さんのところで、文官をさせていただいています」
「わ、私は諸葛亮といいましゅ。……あう、また噛んじゃった」
「ありがとうございます。私、典韋って言います。宜しくお願いします」
 自己紹介を交わし、少しばかり雑談となる。
 ……しかし、三人とも見事に小柄だな。
 並べてみても、ほぼ同じ背格好だ。
「典韋。出立は明朝だが、準備は良いか?」
「あ、はい。荷物は全部、まとめてきました」
「そうか。今宵は城内に泊まるが良い。部屋は用意しておいた」
「え? そ、そんな、申し訳ないです」
「いや、雇う以上、その程度は用意するのが当然だ。気にするな」
「ありがとうございます」
 律儀に、典韋は頭を下げる。
「今日はもう休むが良い。兵に部屋まで案内させる」
「わかりました。では、お先に失礼します」
 典韋が出て行った後で、朱里はふう、と息を吐いた。
「どうだ、朱里?」
「は、はい……。私や愛里ちゃんの事を、どこか探るような感じがしました」
「ふむ。愛里は?」
「そうですね。身のこなしにも隙があ
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