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青い春を生きる君たちへ
第15話 破綻
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間違えてしまった人生、こだわってなどいられない……


「……なぁ、本当に頼む。お前が俺に借りがあると思ってるなら、負い目があると思ってるなら、今は黙って俺の頼みを聞いてくれ。どうしても、どうしても必要なんだ」
《……》


電話の向こうで、町田の舌打ちが聞こえた。続けてゆっくりと吐き出されたため息が、呆れを表していた。


《……そこまで言うなら、しゃあないな。親父に聞いといちゃるわ。またメールでお前に送っちゃる》
「できるだけ早く頼む。……ありがとう」
《礼ら言わんでええわい。……でもな、これでホンマに、俺とお前は貸借りなしやで。むしろ俺が貸しとるくらいやわ。やから、俺からの言うことも聞けよ》
「……分かった、聞くよ」
《絶対、絶対にヤケになんなよ。ほんで、来年の春の甲子園、俺らの野球見に来い。そん時までに堅気やなくなってたり、くたばっとったらぶっ殺すからな》
「……くたばってたら、お前が殺すのも無理だけどな」


電話越しに、小倉と町田は笑いあった。それはかつてと同じような、屈託のない笑いのように、小倉には感じられた。もしかしたら、自分がそう思っただけの話かもしれないのだが、それでもこの笑いを、小倉は疑う気にはなれなかった。



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町田からのメールは案外早く、翌日の夕方には送られてきていた。拓州会は関東の暴力団で、いくつかのダミー企業の集合から出来ているという点では他の暴力団と変わらない。その本部事務所の住所も、検索してみれば不動産会社が入っている事になっているビルだった。逃亡生活を送っている田中に、それほど時間の余裕があるとも思われず、小倉は早速、そこに赴く事にした。

電車にいくらか揺られて着いたその街は、郊外の廃れた街だった。みすぼらしくなった建物に、やたらキツい色の古いネオンサインだけが輝く、小汚い街。いかにも爪弾き者の吹き溜まり感が出ている街に、自ら足を運ぶことは今後無いだろうが、小倉はこれが最初で最後になる事を祈りながら、一歩を踏み出した。


「あぁ?」


怪しげな店の呼び込みを振り切りながら辿り着いたそのビルの入り口詰所には、警備員の代わりに柄の悪い若者が入っていた。煙草の煙をプカプカさせながらガンを飛ばしてくる相手に対し、小倉がどうしたものか、と迷っていると、ちょうど良く、小倉のスマホが音を立てた。画面には、田中智樹の名前。


「言われた通り、今事務所の前だぞ」


素早く電話に出て、いきなり言った小倉に対し、田中は電話越しにヒュウ、と口笛を吹いた。


《さすがだ。この通話をスピーカーに出してくれ。後は俺が話す》
「分かった。俺は、使者だもんな」



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