アインクラッド 後編
それが、本当のわたしだから
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んなこと。……でも、それが一番なんだって、わたしはずっと自分自身に言い聞かせてきて……結局、ずっと孤独なのは変わらなかった。マサキ君に助けられた時に、それが分かったの」
――でも。それを変えてくれた。
わたしは顔を上げ、マサキ君の両目を真っ直ぐに見つめる。
「その後、マサキ君に色々なところに連れて行ってもらって。多分それがなかったら、わたし、今頃もまだ、あのアパートでうずくまってた」
――本物の絆と引き合わせてくれた。
「シリカちゃんや、ピナと出会えたおかげで、わたしは知ることができた。本物の友達も、わたしがしてきたことが、無駄じゃなかったってことも。それに、ちゃんと伝えなきゃ、自分の心は相手には伝わってくれないってことも。……それを知れたから、わたしは立ち直れたんだ」
――目の前の、あなたが。
「マサキ君。わたしのことを助けてくれて――」
――だから……。
「――“ありがとう”」
それは、わたしの人生で一番心のこもった言葉だっただろう。自分でも驚いてしまうくらいにすんなりと形にできたわたしの心が、染み渡るような響をもってわたしとマサキ君の間の空気を温かく揺らした。するとマサキ君の表情に、ほんの少しだけ驚きの色が浮かび上がって――
「……そう、か」
返って来たのは、おおよそマサキ君のものとは思えないほどに穏やかで、温かみのある声だった。細められた切れ長の瞳と羽毛のように軽く持ち上げられた口の端の自然さは、それが彼本来の表情なのだと言うことを表すのに十分だった。昨日、意識を手放す寸前に垣間見たのは、この微笑だったのだ。
「あ……」
その瞬間、わたしは直感的に理解した。「素直になれない刀使い」が誰なのか、そして、わたしの心臓を高鳴らせている、この感情が何なのかを。
そっか……そうなんだ……。
最早わたしの左胸は、これまで気付かなかったことが信じられないくらいに早鐘を打ち鳴らしていた。わたしはそれから数秒間、胸の奥底から全身へ向けてほっとするような温かさが流れて行くのを、その甘くて穏やかな流れに浸りながら感じ入っていた。この空間にわたしとマサキ君がいて、その間を時がゆったりと流れていくことそれ自体が、わたしの胸に収まりきらないほど幸せで、愛おしかった。ウォルニオンさんにプロポーズした時のタカミさんの心境も、ひょっとしたらこんな感じだったのかもな、と思った。
――よしっ!
わたしはその上に手を重ね、受け取ったマサキ君の不器用な優しさをそっと抱き締めてから、両手をテーブルの上について立ち上がる。
「決めた! わたし、お礼に晩御飯作ったげる!」
「……は?」
「だから、晩御飯! あ、心配しなくても大丈夫だよ? わたし、これでも料理スキルにはちょっ
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