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雲は遠くて
61章 美しさや愛を大切にする生き方
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61章 美しさや愛を大切にする生き方

 11月22日、北北西からの冷たい風が吹いているが、
昼間の気温は18度以上と、暖かなよく晴れた土曜日。

 川口信也と新井竜太郎たち、9人は、JR 新宿駅 東口から徒歩で15分、
1.2キロメートルほどの、池林坊(ちりんぼう)に向かって歩いている。

 その9人は、新井竜太郎、川口信也と妹の美結(みゆ)と、
美結の彼氏の沢口涼太(りょうた)
清原美樹と美樹の親友の小川真央、真央の彼氏の野口翼(つばさ)
美樹の彼氏の松下陽斗(はると)、信也の彼女の大沢詩織だった。

 池林坊は、裸電球に照らされた、レトロ調の屋台が立ち並ぶ、
独特な雰囲気の店で、その創業36年の店には、それに魅せられて通う、
有名人や文化人たちも多い。信也と竜太郎も、よく行っては歓談する居酒屋である。

 店のオープンは4時30分で、クローズは翌朝5時という店である。

 信也たちは、5時に店内に入って、予約していたテーブルに落ち着いた。

 「美結ちゃん、真央ちゃん、涼太さんの主演の、エタナールのCMは、
毎回、その続きを見るのが楽しみだって人が多くて、大評判なんですよ。
おかげで、エタナールのイメージや知名度のアップがすごいんです。
エタナール全店の売り上げの倍増が続いているんですよ。あっははは」

 竜太郎がそういって、わらう。

「そうなんですかぁ!うれしいわ!」と、川口美結は魅力あふれる満面の笑み。

「それはおれもうれしいです」と、美結の隣の席の沢口涼太が、はにかむようにわらった。

「わたしもエタナールさんのお仕事に出られて、
そのおかげで、最近お仕事が増えているんです!」といって微笑む、小川真央だった。

 エタナールのCMに出演中の3人のうち、沢口涼太と川口美結は、
エタナールの芸能事務所のクリエーションに所属している。
エタナールの副社長の竜太郎が恋心を抱いている小川真央は、
川口信也や清原美樹と同じ事務所のモリカワ・ミュージックに所属している。

「いつも思うんですけど、竜太郎さんと信也さんって、本当に仲がいいんですね!
このお店も、やっぱりお二人でよく来るんですかぁ?」

 グラスに入った生レモンハイをおいしそうに飲みながら、清原美樹がそういった。

「はい、はい。美樹ちゃん、よく聞いてくれました。しん(信)ちゃんは、ミュージシャンという、
芸術家でしょう、おれは実業家ってところで、芸術家にはなれない男だから、
ちょっとその点は悔しいんですけどね!あっはっは。
でも、美樹ちゃん。おれのやっている事業にも、芸術の創造に不可欠な、
ブレイク・スルー思考が大切なんですよ。ブレイク・スルーって、前例のないことや、
誰もやらないことをや
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