暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアートオンライン 無邪気な暗殺者──Innocent Assassin──
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〜銃声と硝煙の輪舞〜
戦場の少女達
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全な無装備で挑ませるという、あまりにも高難易度なこのクエストは、当然のようにクリア者がいまだかつて存在しない。

軍隊格闘術(アーミーコンバティブ)》スキルを上げて挑んだ猛者連中もいたらしいが、しかしそれにしても相手は完全武装しているテロリストだ。一般エリアのモンスター達とは比べ物にならないほどの高度なシステムアルゴリズムに、予測ができないランダム行動。言っては何だが、勝てる要素があるわけがない。

よって運営側である《ザスカー》はプレイヤー側に配慮してか、一つだけウィークポイントを設定したのだ。

それが『連携の稚拙さ』である。

装備、頭脳、能力値。全てにおいてエリアモンスターの中では最高クラスに設定されている彼らではあるが、しかしその装備のレア度に反してその連絡ツールは前時代的な無線機一つだ。しかもひとりひとりに支給されているのではなく、数人に一人というずさんさだ。

だから二人が立てた作戦は、基本的には単純だ。気取られないよう船内を闊歩する黒尽くめ達を観察し、無線機を持っていない個体を発見、追尾して独りになったところを襲撃する。これによって、こちらのダメージは極力下げ、確実性は増す。しかし、この作戦は精神力を多大に消費するのもまた事実。正直、あとニ、三戦が限界なのかもしれない。

もしヤバくなったら無理矢理にでもリラに押し付けよう、と決心をして曲がり角を右に折れる。

身体能力も高く設定されているテロリスト達の足音は、すでにもうかなり近づいてきていた。鉄板を靴底が叩く音も乱暴さを増し、かなりの不安を掻き立てる。心臓に悪い。

「ミナッ!ここ!」

二人が滑り込んだのは、火災発生時の緊急用に消火ホースが納められているスペースだ。こういう時には、アバターがR系なのが心底ありがたい。ホース込みでもかなりの大きさだったボックスの中は、どうにか二人分を許容してくれた。

先に入ったリラになかばヒップアタックでもするかのように身体を押し付け、慎重に扉を閉める。

「ぶべっ!ちょ、ミナ……!あんた、ケツが当たってるっつーのッ!!」

「け、ケツとか言わないッ!」

バタバタバタ!!という音がすぐそばまで来た。

一瞬だけ息を詰め、今の会話が聞こえていたのかもしれないとか恐怖するが、しかしその心配は幸いにも杞憂に終わる。

『――――げッ!…や……ぞッッ!!』

システムに設定された敏捷値を全開にしているとしか思えないほどの速度で黒尽くめ達が通過していく。金属製の扉のせいで大半がかき消されている口調は、かなりの焦燥と、そして微かな――――恐怖が見え隠れしているようだった。あくまでモンスター扱い、AIではない。それなのに、だ。

その声には明らかな、そして耐えがたい《ナニカ》があった。

「……
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