第四十三話 踏み絵
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ら融資を受け更にフェザーン商人から借金をしていました」
そんな不機嫌そうな顔をしないでくれ。借金をしたのは俺じゃないんだから。何で俺がこんな思いをしなけりゃならないんだろう……。
「金融機関から受けた融資はフェザーンの投資会社に預けられ運用されるか、或いは貴族自身が企業を営む事に利用されます。そこから得た収益が貴族達の遊興費になるわけです。投資会社も決して貴族達に損はさせません。損をさせれば貴族達は二度と金を預けなくなりますからね、信用にも関わります。フェザーン商人が彼らに融資するわけですよ、返済の当てが有るのですから」
目の前の二人は黙ったままだ。面白くない話だからな、怒鳴り出さないだけましか。
「来年から決算報告書と資産目録の作成と公表が義務付けられます。そうなればこれらの事が平民達の知るところになる。その時、何が起こるか……」
「暴動が起きかねんな」
義父殿が言うとリッテンハイム侯が頷いた。その通りだ、本来なら領地開発に使うべき資金を遊興費を稼ぐために使っていたのだから。それでも足りずに借金までする阿呆もいる。せめて利益を領内開発に使ってくれれば……。無理だよな、平民なんて貴族にとっては虫けらだ。
「それで公はこの事態、如何すべきだと考えているのだ?」
「……何もしないというのも一つの選択肢として有ると考えています」
「……」
二人が顔を見合わせている。
「現状では資金の回収は出来ません。強制的に回収すれば帝国は大きな混乱に見舞われるでしょう。これは財務省も同意見です。おそらくフェザーンも混乱するでしょうし、その混乱は同盟にまで及ぶ筈です。そうなれば銀河系全体に混乱が及ぶ事になる」
どうにもならない。帝国から資金をフェザーンに預けフェザーンがそれを運用するという金融システムが出来てしまっている。止めればフェザーンはとんでもない資金不足に陥るだろう。
「だから何もせず暴動が起きるのをただ待つというのか」
「……」
「公、何を考えている?」
リッテンハイム侯の声には咎めるような色が有った。怒っても無駄だよ、俺も怒ってるんだ。
「暴動が起きた時点で政府が介入します。そして状況を調査し“施政宜しからず”と判断して取り潰す」
“馬鹿な”、“何を考えている”と二人が呆れた様な声を出した。声だけじゃない、視線もだ。まるで気でも狂ったかとでも言いそうな目だ。
「取り潰した貴族の財産は全て帝国政府の物になります。貴族の経営する企業、投資した資金全てがです。事実上回収したと言えるでしょう」
「それは……」
俺が何を考えたか分かったのだろう、二人の顔が強張った。
「領地も接収されますから直接税も増収となりますし領地経営が出来ない貴族達を淘汰する事にもなります。財政再建と貴族階級の質の劣化の防止、一挙両得
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