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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第101話 深淵をのぞく者は……
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。そして、さつきが首を振ったと言う事は、彼女は有る程度、弓月桜に対して意識誘導の魔法を使用した、と言う事の現れだと思います。

 この世界の裏側は魔法が存在していながら表面に現れて来る事がないのは、この辺りにも理由が有りますから。それに科学万能だと思われている世界で、魔法の実在を本気で説いたとしても世間一般で信じられる訳は有りません。
 一応、そう言う方向にある程度の情報操作が行われて居ますから。
 普通に考えるのなら、魔法の実在を真面目に論じたとして、その是非を論じるには余程好意的な相手からでも証拠の提示を要求されるはずです。

 まして今回の弓月桜の場合には、その後に過去=歴史が改変され、一九九九年の七夕の夜に起きた事件から派生する一連の事件は起きなかった、とされる歴史による上書きが行われた以上、弓月桜にも平等にその事件の夜の記憶が、別の記憶へと差し替えられているはずなのですが……。

 しかし……。

「今年の二月に、部活で帰りが遅く成って……」

 貧血を起こして居た所を、相馬さんに助けて貰った事が有ったのですが。
 弓月さんが俺を見つめながら。……そう、確かにこの時、彼女は俺を真っ直ぐに見つめて居た。今までならば少しずれた位置――直接の視線を床に落とし、少し上目使いで俺の顔色を窺っているかのような視線を向けるだけで有った彼女が。

「その時に居た相馬さん以外の二人の内の一人が、武神さんに似ているような気がしていたのです」

 まるで悩み続けていた数式が突如解けた……解けて仕舞った数学者の如き清々しい表情をした彼女。それまでのやや暗い……翳のある表情も悪くはなかったのですが、それでも矢張り、少女はこう言う明るい表情をしている方が良い。
 今回の場合は、直接危険度が少ない内容――少なくとも、世界がもう一度黙示録の未来に向かう危険性を孕んだ内容ではないだけに、そう言う気楽な感想が頭に浮かぶ俺。

 それに……気を失って居たようだ、とは言っても、確実にそうだと誰も確認した訳じゃない。一時的に回復した後に再び気を失った可能性はゼロでは有りませんし、資料に因るとその事件に関わった三人の人物。俺、長門さん、それにさつきが一同に会しているこの場所、と言う条件も有りますから……。
 朝比奈さんが妙な事を言い出した直後、と言う状況的な条件も作用していると思いますし。
 まして、異世界同位体の俺の髪の毛が蒼などと言うファンキーな色ではなかったと思いますが、夜の闇に覆われた世界。更に意識が朦朧としている状態ならば、全体の雰囲気から俺に似ている、と彼女が感じたとしても不思議では有りませんから。

 しかし……。どうするか。
 彼女。弓月桜が俺に関する記憶を持って居る理由も、おそらく朝比奈さんの理由と同じ物でしょう。ただ、彼女
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