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蒼き夢の果てに
第6章 流されて異界
第101話 深淵をのぞく者は……
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「朝比奈さんもそうだったのですか?」

 予期せぬ方向から会話に加わって来る少女の声。その声は奇妙な余韻を持って、さほど広いとは言えない、この文芸部及び涼宮ハルヒの作り出した意味不明の同好会部室に反響した。
 少女らしく甘い、しかし、少し低い声。但し、この声はあまり聞いた事のない声。……と言うと嘘に成りますか。確かに、こちらの世界に来てからはあまり聞いた事のない声ですが、ハルケギニア世界では結構、聞いた事のある声でも有ります。
 ただ、向こうの世界の妖精女王(ティターニア)と比べると、この時までの彼女は何故か声が陰に沈み、少し作り物めいた雰囲気を伝えて来ている状態。何と言うか、ある種の人間から見ると鬱陶しく、そして、妙に加虐心を煽ると言うか、被虐的と言うか……。

 何にしても余り社交的ではない雰囲気が漂って居る少女には違い有りません。

「私も武神さんには何処かで会ったような気がしていたのですが……」

 弓月桜。それまで俺と同じように試験勉強をしていたはずの彼女が、机の上に広げて居た教科書とノートに向けて居た瞳を俺の方向へと向けて居る。
 そう言えば、確かに彼女にも俺の異世界同位体は出会って居たはずです。

 そう考えながら、ハルケギニアの妖精女王そっくりの少女へと視線を移す俺。多少、妖精女王の方が髪の毛が長いような気もしますが、それでも烏の濡れ羽色の艶やかな髪の毛。黒目がちの瞳。華奢な……強く抱きしめたら折れて仕舞いそうな身体。それでいて、かなり豊かなと言う表現がしっくりと来る胸。彼女の発して居るやや控えめな少女の雰囲気から、二人……ハルケギニアの妖精女王と弓月桜の間にはなんらかの関係が――

 但し、資料に因ると彼女と俺の異世界同位体が出会ったのは夜。更に、彼女は『がしゃどくろ』と言う幽鬼に襲われて精気を吸われ、気を失っていたはずなのですが……。
 そう考えながら、この場に居る関係者の内、その事件に最後まで関わった人物。ふたつ並べた折り畳み式の長机の向こう側、俺の正面のパイプ椅子に座り、少し強い瞳で俺を見つめる。いや、むしろ睨み付けている相馬さつきに対して瞳でのみ確認を行う。
 ……通じるかどうかは判りませんが。

 その俺の視線に気付いたさつきが、ゆっくりとその首を横に振った。彼女の長い黒髪が揺れる事さえない微妙な動き。殆んど首を振ったと言うよりも、視線のみを動かしたと表現すべきかすかな気配。
 多分、資料に記されている状況から考えると、弓月桜が遭遇した事件の詳細は本人には告げられていないと思います。そして、その事を不審に思われない為の、必要最小限の意識誘導的な魔法がその場では使用されているはずです。
 身を護る術を持たない一般人が関わると危険過ぎる世界ですから。俺の立って居る魔法に関わる世界と言うヤツは
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