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雲は遠くて
10章 信也の新(あら)たな恋人 (5)
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モテープや、ライブハウスなどから、新人を発掘し始めたので、
白石愛美(しらいしまなみ)は、大好きで、社会活動や、
チャリティー活動をしている誠実さでも、尊敬する、
マライア・キャリーの、My All(マイ・オール)を歌った、
デモテープを、モリカワ・ミュージックへ送ったのであった。

そのデモテープが、モリカワの社長の長男の、
モリカワ・ミュージック・課長の森川良(りょう)に、
感動とともに、絶賛されて、認められたのだった。
森川良は、課長の森川純(じゅん)の兄である。

「それでは、みなさま、お待たせしました。
ごゆっくりと、お楽しみください。
日本に(あらわ)れた、若干(じゃっかん)20(はたち)の、
天才的、アーチスト、白石愛美(しらいしまなみ)
松下陽斗(まつしまはると)との、ライブです。
歌う曲目は、マライア・キャリーの名曲の数々です!

ドラムは、ベテランの綱樹正人(つなきまさと)
女性コーラスは、青木エリカ、本間ともみ、相沢理沙のみなさんです!」

1階と2階のフロア、会場全体から、ゆったりとした気分で、
飲食を楽しんでいる観客たちの、歓声と拍手がわきおこった。

「わたし、いくら、がんばっても、マライア・キャリーのような、
歌唱力では、歌えないだろうけど、
わたしも、カーリー・レイ・ジェプセンや、
テイラー・スウィフトのような、シンガーソングライターにはなりたいの」

そう、大沢詩織が、川口信也の耳もとにささやいた。

「詩織ちゃんなら、だいじょうぶだと思うよ。
おれも、がんばるから、おたがいに夢を追っていこうぜ」

「うん・・・」 詩織の(ひとみ)が、少女のように、(かがや)いた。

「川口さん、詩織ちゃん、おれも、がんばるから」と、岡もほほえんだ。

静まりかえった会場の、ステージから、松下陽斗(まつしたはると)
ピアノだけが鳴りひびいた。

1曲目の、『 Without You 』のイントロであった。『 Without You 』は、
1994年、 全米3位を記録した。
『生きてゆけそうもない、あなたのいない人生なんて。
何もする気もおきない・・・』と、失恋の、失意の歌で、
人生のどん底に落ちている、その心情を、詩情豊かに、歌いあげた
名曲だった。

2曲は、『My All 』だった。『My All 』は、1998年、全米3週連続1位
であった。『抱きしめてもらえるのなら、命をかけてもいい。思い出
だけでは生きてはいけないわ』という、女性のせつなる心情を、
高貴なまでに、神聖なまでに、歌い上げている。

15曲を歌いあげたあとの、アンコール曲は『Hero』であった。
『自分自身を見つめて、勇気をだして、そのとき、真実は
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