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東方大冒録

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幻想郷の希望、幻想入り。

 
前書き
暗基君が幻想入りします。 

 
前回のあらすじ。

暗基は八雲紫と会ってしまった。

「……!?」

暗基にとって、今のこの状況はなぞ以外の何物でもなかった。まず、八雲紫は東方Projectというゲームその他2次元の中の存在である。この現実世界にいるわけがない。だが、今こうやって自分の目の前に存在している。特に家の玄関を使った風もない。もし玄関を使って家の中に入ったのであれば、母親か亜月がわかっているはずだ。

「ふふ、いろいろと考えているようね?」
「……」

紫はまるで暗基のすべてを見透かしているように暗基に問う。それに対し、暗基は質問で返す。

「いくつか質問いいか?」
「えぇ、かまわないわ」

ここでひとつずつ、的確な質問をしていけば、今目の前にいる八雲紫が本物なのかを見分けることができると考えたのだ。暗基は紫?に質問を始めた。

「まず一つ目だ。お前は何者だ?」
「私は、八雲紫。妖怪の賢者とも呼ばれているわ」

一つ目の質問に対しては……、まぁ誰もがそう答えるだろうという答えが返ってきた。

「二つ目。お前の能力は何だ?」
「あら、能力の存在は知っているのね?」
「答えてくれ。お前の能力は何だ?」
「そう急かさなくてもいいじゃない? まぁいいわ。私の能力は、『境界を操る程度の能力』よ」

二つ目。まぁそう答えなければいけない質問だ。知っていれば誰でも答えられる。

「三つ目。これは質問というよりはお願いだな。スキマを作ってみろよ」

といったあたりで、下から声が聞こえてきた。

「零ー! なに一人でしゃべってるのー?」

母親の声だ。そして、階段を上がってくる音がする。

「や、やべぇ!? おい、そこの自称八雲紫!」
「自称とは失礼しちゃうわね?」
「そんなことは今はどうでもいい! 隠れろ!」
「あら、お母様にご挨拶したらだめかしら?」
「いいから隠れろ!!!」
「はいはい、分かったわよ」

すると紫はちょうど自分が入ることができるだけのサイズのスキマを作りだし、中に潜り込んだ。それと同時に、

「入るわよ?」

ガチャ。

母親が暗基の部屋の中に入ってきた。そして暗基の前に立ち、心配するように声をかける。

「な、なんだよ?」
「誰かいたの? 白羅くんもう帰ったんじゃなかった?」
「あぁ、白羅はもう帰ったよ。今のは独りごとだよ」
「にしてはずいぶんと大きい声だったけど?」
「なんでもないさ。気にしなくてもいいよ」
「そう? なら、いいんだけど……」

といいつつ暗基の母はまだ疑っているような目つきをしている。が、それもすぐになくなり、部屋から出て行った。

部屋のドアが閉まると同時にスキマが開き、紫が現れた。

「さぁ、これで私を本物の八雲紫と認めてくれる?」
「……あぁ。現物見せられたら、認めるしかねぇな」
「ありがとう、零君。さて、これからが本題なんだけど」
「その前にちょっといいか?」

早速本題を話そうとする紫を暗基は止めた。

「今みたくうちの親がまた来ないとも限らないから、場所を変えたいんだけど、いいか?」

ということだった。その都度母親が来て話を中断するのも嫌だと暗基は思ったのだ。すると紫は、

「……、うふふふふふ!!」

突然笑いだした。

「な、何だよ突然笑い出して!? 気味悪……あっ、ごめん」
「あら、ずいぶんひどいことを言うのね……。さすがの私もちょっと傷ついたわよ……」

思ってしまったことを思わず口に出してしまった。
しかし紫は、口ではそんなことを言っているが、実際のところ、「いつもだし慣れてるわ」と顔が言っていた。そこは突っ込まないことにする。そんなことよりも、暗基は紫が突然笑ったことが気になった。

「どうして笑ったんだよ?」

暗基が聞くと、紫は開いた扇子で口元を隠し、妖しい目つきで暗基を見ながら言った。

「そう言うのなら、黙って幻想郷に来ていただいたほうがいいじゃない、と思っただけよ。ごめんなさいね」
「……、は?」

紫の口からなんか、聞いてはいけない言葉を聞いた気が……。

「げ、幻想郷に、行く、だと?」
「えぇ」
「おれがか?」
「えぇ」
「なぜそうなる?」
「その理由をこれからここで話そうと思ったんだけど、お母様にたびたび来られるとまずいんでしょ?」
「いや、それはそうだが……」
「だから、直接幻想郷に来ていただいて、お話しようと思っていたのだけれど……、いやかしら?」
「……」

正直暗基は返事に困った。
軽い返事で「行く」といった場合、自分はこの世界から忘れ去られるのではないか、もう二度とこの世界に戻ってくることができなくなるのではないか。
だがもし仮に「行かない」といった場合。ひょっとすると他の東方二次創作作品の中にある、「外来人を呼んで幻想郷を救ってもらう」的な展開だったとしたら、おいしいポジションをいただけるのは確かなのだから、そのチャンスを捨ててしまうことになってしまう。

「どうすればいいんだ……」
「……、そうね……。これなら、だいぶ決心が固まるんじゃないかしら?」

すると紫は暗基に一枚の写真を渡した。暗基はその写真に写っている人物をみて、驚愕した。

「こっ、これ……!!?」
「やっぱりそうだったの……。そう。その写真の人物は、暗基優理亜(くらきゆりあ)。貴方の死に別れのお姉さんよ」

その写真に写っていたのは、暗基の5つ年上の姉、優理亜であった。優理亜は2年前に交通事故にあってしまい、命を落としてしまっている。その優理亜の写真を、なぜ紫が持っているのか。

「なんで……!?」
「優理亜はね。この世界で死んでしまってから、魂だけが幻想入りしたのよ。なぜかね。死んでしまっているから、真っ先に閻魔のところに行くことになった。そして裁判を受けて、死んでしまったときと同じ姿で転生することを許可された。それがその写真の姿」

暗基は紫の話を聞き漏らさんと集中して聞く。

「そして私や博麗霊夢(はくれいれいむ)霧雨魔理沙(きりさめまりさ)を中心に、幻想郷の住人と仲良くなっていった」
「……」
「そして、今この暗基優理亜は、異変を起こしている」
「はぁ!!?」
「信じるか信じないのかは貴方次第だけれど、どうする?一度来て、話しの続きを聞くのか、それとも信じずに、この世界に留まるのか」
「……、そんな事言われちまったら、断るわけないじゃねぇか」

暗基はすぐに答えた。

「行くぜ、幻想郷に。案内してくれよ」
「分かったわ。ごめんなさいね。貴方を誘導するようなことをして」
「いや、これはおれの意思だ」

そして紫はスキマを作り出し、中に入った。

(にわかには信じがたいけど……、この目で確かめてやる!!)

暗基も遅れてスキマの中へと入っていった。 
 

 
後書き
暗基が幻想入りしました。

次回、どんな異変なのかという説明と、いよいよ、大冒険に出発します! 
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