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正義と悪徳の狭間で

作者:紅冬華
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原作前 編
ロアナプラ編
  原作前編 第2-R話 夜間航路

 
前書き
少しかけたので、投稿しておきます。

もう少し、設定詰めるの雑にした方が良いのかなぁ… 

 
乾ドック脇のスペースにアイシャが車を止める。
カラシニコフをつかんで降車し、近くを見回す…問題なさそうだと、合図を送る。
アイシャが装備と荷物をまとめて降りてくる。
「ありがと」
「いえ」
そういいながら自分の荷物をおろし、アイシャが車にカギをかける。
今から取引や顔合わせを兼ねた三泊二日(二泊目以外は往復のラグーン号で泊まり)の出張になる。
…出張先は管轄地域なので追加手当てはつかない。

「ようアイシャ、相変わらず良い時間だな」
二階入口が開き、スキンヘッドの黒人が現れ、階段の上から声をかけてきた。
このスキンヘッドの黒人こそダッチ、ロアナプラ一の個人運送業者、ラグーン商会の社長である。
「こんばんは、ダッチ。今日もよろしくね」
「ああ、まかせとけ、すぐにでも出港する。出港後、打ち合わせに行く」
「了解よ、ダッチ。行きましょう、レイン」
アイシャに連れられてドッグに入っていった。



船に行くとベニーが乗降口に立っていた。
「やあ、アイシャ、レイン。船室まで案内するよ、一応規則だからね」
「こんばんは、ベニー、よろしくね。この前の部品の調子はどう?」
会話をしながら案内されるままについていく
「ああ、やっぱり純正品は素晴らしいね、予算が許すなら全部とっかえたいくらいだよ」
「丸ごと機材更新の工事でも請け負うけど?」
「冗談!他人に機材を触られるのも許せないのに、人任せで総とっかえとかありえないよ。
そういえば、僕に手解き頼むかも、って言ってたけどレインのセンスはどう?」
ああ、この前のあいさつ回りの時の話か

「そうねえ…」
そういいながらアイシャは私を見る…話して問題ない、と軽く頷く。
「まあ、あくまで私の感想だけど、センスとしては素晴らしいものを持ってるわ。
今はまだ勉強中だけど…来年の今頃にはどこまで伸びてるか。
ま、貴方のいう所の『ハッカーと呼べる最低限の力量』しかない人間の感想よ」
「そうか、なら育ち方次第では、オフの日に付き合ってみてもいいかな。
さ、ついたよ」
ベニーに促されて船室に入る。

荷物を置いて席に着くとラグーン号が動き出し、
私たちが入ってきたのとは別のハッチからレヴィが入ってきた。
「ベニー、交代だ。ダッチと交代だとよ」
「了解、じゃあまたね」
そういってベニーは船室を出て行った。
「さ、お二人さん。特にアイシャならほっといても問題ねぇとおもうけどよ、
一応規則ってやつだ、ダッチとの打ち合わせまでは監視下にいてもらうよ」
レヴィ姉さんが肩をすくめながら言った。
「わかってるわ、時間がかかるようなら先に夕食にするけど」
「あーいや、すぐにベニーと交代してくるって言ってたぞ」
「そう、じゃあ待ってましょうか」

と、アイシャが言ったとき、ベニーが出て行ったハッチからダッチが入ってきた。
「いや、もう来た。第二キャビンで話をしよう」
「了解、それじゃあ、また後でね」
アイシャはそう言ってダッチの後について出て行った。


私は背嚢から屋台で買った甘いミルクティーを移したペットボトルと本を取り出す。
「相変わらずだな、レイン」
「何が?」
広げた本から目を上げてレヴィ姉さんの顔をみる。
「…甘ったるいドリンクがお気に入りのお子ちゃまが、お堅い本読んでるところが、だよ。
レインお前は一体何になりたいんだ?」
紫煙の溜め息と共にレヴィ姉さんが言った。

「さぁ?わからない」
「なんだそりゃ」
私の不機嫌そうな声色がかえってきた。

「将来ずっとガンマンであり続けるかはわかんないし、続けられるとも限らない。
だから潰しが効くように…って建前が聞きたい訳じゃないよね?」

レヴィ姉さんはタバコを吸いながら、続けろと眼差しで言っていた。

「基本的には単に楽しいから。それ以外に理由なんている?」
「…楽しいってその本がか?」
「うん、この本『も』ね。
勉強も鍛錬も、その『実践』も…酒も、騒ぎも、賭け事も…全部『好き』か『やらなきゃいけない中で一番マシ』だからやってることだよ。
とくにコンピュータ関連は楽しいし、裏表どっちの社会にとってもこれからどんどん伸びる分野だと思うから」
「それは、コレを握る事も、か?」
レヴィ姉さんがソード・カトラスをコツコツやりながら言った。
「…珍しいね、過去や心に踏み込んだり、踏み込まれるのは嫌いって言ってなかった?」
その問いかけに対するレヴィ姉さんの答えは沈黙だった。
「まあいいけどさ。私はガンマンは天職だと思う、というか『コレを握っているために』私はここにいる。
ガンである必要はないし、使う事が仕事である必要はないけど、武装とその行使の自由は欲しいかな」
「そっか…わるかったな、変な事を聞いて」
「別に、話したくなければ話してないから気にしないでいいよ」
しばしの沈黙が流れる…話は終わりだと理解して本に目線を戻し、読み始める。


視線を感じながら読書を続けていると扉が開き、アイシャとダッチが帰ってきた。
「おう、レインは相変わらず読書か、今日は何を読んでいるんだ?」
ダッチが気楽な世間話、と言った感じで聞いてくる。
「トリマルキオの饗宴」
「ああ、サテュリコンか。わかってるとは思うがあの成金野郎の言う事を鵜呑みにするなよ?」
「もちろん、そこら辺の解説付きのやつだから」
「何なんだ?その…トリなんとかの饗宴って…また哲学かなんかか?」
「ローマ時代の風刺小説よ、まあ古典文学ってやつ」
「…面白いのか?」
「うん、今のところは。好みはあるけど他人が良い思いしてるのを見るのが許せない、ってわけじゃないなら楽しめると思う」
「笑いどころも皮肉もなかなかのものだし、私は好きよ」
「ま、二千年前からいまだに受け継がれている作品って事はあるぜ、俺の好みじゃねぇけどな」
アイシャに続いてダッチも肩をすくめて言う。



その後、アイシャとダッチの軽い雑談(と、言う名のローマ時代の西洋古典文学談義)が発生し、私は読書に戻っていた。
暫くすると、ベニーから早く戻ってきてほしい、と言うお達しがあったらしく、ダッチとレヴィ姉さんはキャビンを去って行った。
私とアイシャは屋台で調達してあった揚げパンの夕食を取りながら打ち合わせをすることにした。
「さてレイン、明日は現地時間の朝5時に迎えの船と会合予定よ。
だから4時半までには移動準備を整えておくこと、基本的には襲撃なんかはラグーンに任せる事になってるけど、すぐに動けるように爆睡はしないようにね」
「了解です、その後アンブレラ構成員が管理するWBI社所有の施設から上陸し打ち合わせ後、商談を4件ですよね」
「そうよ、まあ案件としては私のボスがメインで交渉して私はそのサポート、レインはいつも通り、後ろに控えて牽制と警戒をお願い、詳細は明日の朝食時にボスを交えて。
その後、上陸した施設に帰還し1泊、能力査定のために0600に出発、別の施設に移動してその後、自由時間。
1800より、雇用契約成立に伴う『入社式』を『本社社員』の方立会いのもと行って、夕食会。
そのまま、深夜にラグーン号に回収してもらって帰宅予定ね」
「はい」
アイシャは小さく頷き、書類を3枚くれた。
「多分、だけど自由時間は散歩と買い物位しかできないから訓練施設でみれる…まあ、うちの商品の方向性と、宿泊施設にある店舗の一覧よ。
それと、昼食…十中八九査定の合間に食べる事になるでしょうけど…の希望調査表、今回は基本セットは無料、追加なんかは自腹になるから注意してね。
提出は明日の朝に、商品の方も希望を提出しておけば時間の節約になるわ」
私は渡された書類に目を落としながら、甘い紅茶をすすった。 
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