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ソードアート・オンラインー神速の剣士

作者:秋馬
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第四話

「……ラウ!おいブラウ!」

誰かが私の体を揺する。体中がびりびりする。

「んぅ……、……クライン?」
「目ぇ覚ましたか、ブラウ!」

目の前にはむさ苦しい顔があった。

「……こういう場面ってさ、かわいい女の子が起こしてくれるはずじゃない?」
「オレで悪かったな。まあこれでも飲めや」

からからと笑いクラインは私に小瓶を差し出した。私はそのハイ・ポーションを口に含み飲み込む。相変わらずの不味さを感じつつ隣を見ると、キリトがアスナに看病をしてもらっている。
私たちがキリトたちの方へ行きクラインが遠慮がちに声をかける。

「生き残った軍の連中の回復は済ませたが、コーバッツとあと二人死んだ……」
「……そうか。ボス攻略で犠牲が出たのは、六十七層以来だな……」
「こんなの攻略なんかじゃない……ただの自殺だよ」

私の絞り出したような台詞。頭を振り大きなため息をついてクラインが訊いてきた。

「そりゃあそうと、オメエら何だよさっきのは!?」

私とキリトは顔を見合わせ難しい顔をした。

「……いわなきゃ……ダメ?」

私が上目使いでクラインを見ると(私の方が身長が低いので必然とそうなる)クラインが顔を赤くした。一瞬デレっとしたがブンブンと顔を振り

「ったりめえだ!見たことねえぞあんなの!それにブラウの大剣技!!普通の大剣スキルにあんな連続技なんてねぇだろ!」

と言った。

「……エクストラスキルだよ。まあブラウまで持ってるとは思わなかったがな。俺のは《二刀流》」
「私は《瞬剣》っていうスキルなんだ」

どよめきが部屋のみんなに流れる。
興味があると大きく顔に書いたクラインがせき込むように言った。

「しゅ、出現条件は」
「わかってりゃもう公開してる」
「気づいたらすでにあったんだよねぇ」

まぁそうだろなあとクラインが唸る。
たぶん私とキリトとあと食えないあの人のスキルは習得者一人のみの《ユニークスキル》だと思う。あぁあ、今日から私たちの秘密が世間に流れると思うと憂鬱だなぁ。

「ったく、水臭ぇなオメエら。そんなすげえ裏技黙ってるなんてよう」
「本当はバレたら周りがしつこく聞きにくると思ってもう少し秘密にしたかったんだけどね」
「同じく」

ボヤくクラインに私たちは言う。

「ネットゲーマーは嫉妬深いからな。俺は人間ができてるからともかく、妬み嫉みはそりゃああるだろうなあ。それに……まあ、苦労も修行のうちと思って頑張りたまえ、若者よ」

楽しそうに笑うクラインを見て「勝手なことを・・・・・・」とキリトが呟く。

クラインが生き残った軍の人に上官?に伝言を伝えるように言い帰らせた。そして両手を腰に当ててこちらを再び向く。

「オレたちはこのまま七十五層の転移門をアクティベートして行くけど、お前たちはどうする?」
「パス、疲れた。片手剣の耐久度もやばいから研ぎに行かないと泣く羽目になりそう」
「俺も任せるよ」

私たちの言葉にそうか、と一言言い仲間に合図をして階段へ向かった。
私も用事を済ませてホームで早く寝ることにしようと重い体を持ち上げる。

「アスナ、悪いけどここで解散したいんだ。まぁ実力はボス戦で見せたし勘弁して」
「うん。わかったわ」
「でキリト。私はしばらくゆっくりするよ。まあ次のボス戦は参加するだろうけど……」
「了解」
「何かあれば連絡頂戴ね」
「気をつけろよ」

私の言葉に二人は返事をする。キリトの心配に私は大丈夫と笑顔を見せ外に出てクリスタルを使用した。
光が体を包む前に後ろを振り返るとキリトがアスナを抱きしめていいムードになっていた。

「よかったね二人とも……」

誰に聴こえるでもなく口が自然と動いた。幸せそうな二人の笑顔に感じた胸にちくりとした痛みを無視し視線を外した。
やがて完全に光が私を包み、景色が変わっていく。
私は現在四十八層主街区《リンダース》を歩いていた。目的地はアスナに教えてもらい、今や私やキリトなどが通う《リズベット武具店》。
目的地の水車が目印の可愛らしい店である、私は早足で店に向かい中に入る。そして店から

「いらっしゃいませ!」

と明るい声が聞こえた。どうやらちょうどお客の対応が終わったみたいだ。
私は声の主に声をかける。

「やっほーリズ!売り上げに貢献しにきたよ」
「なんだブラウか。で、今日はどんなご用で?」

店の主……リズベットの素っ気ない態度に

「なんだっでヒドいなぁ、せっかく友達が来たんだからもうちょいリアクションがほしいなぁ。出来ればキリトと同じ待遇希望」

と皮肉を混ぜて返した。その言葉にムッとしたリズは「うっさいオトコオンナ」と言ってくる。うーん。リズは相変わらずだなと思いつつ、ここに来た本来の用事を伝える。

「あー、はいはいじゃ、すぐに始めるから工房にいらっしゃい」

と言って工房に入っていく。私も後に続き中に入るとリズは回転砥石の前に行き私から片手剣とついでにお願いした両手剣を預かって丁寧にソレを研いでいく。
やがて研磨が終わり、鞘になおして剣を渡した。代金を払い、メニューウィンドウを開いて剣を元に戻す。するとリズが話しかけてきた。

「あんた、結構消耗してたね。ソレどうしたの?装備も秘蔵の大剣だし」
「あぁ、ちょっとボスを一狩りね……」
「ボス!?でもだってボス攻略戦はまだで、それに対策とかもってアスナが……」
「《軍》の人たちが前線にきていきなりボス戦をしてさ、壊滅しかけたのを私やアスナ、キリトにその他七名で救出!でそのままボスを退治したってわけ」

一度一呼吸を置き、そのまま続けて理由を話した。

「その時に大勢の前でスキルを使ったからキリトと私の秘密は世間にバレる、それならもうコレを装備しっぱなしでいいやと開き直って大剣を装備してる、以上!」
「じゃあさっきの研がなくてもよかったんじゃないの?」
「それはそれ、今までのパ-トナーに感謝の意味もこめてね」

私は背中の相棒に軽く手を当てアピールをした。そんな私の言葉に、リズは頭を抱えやれやれとため息をつく。

「ていうかあんたたちいつかとんでもなことやらかすと思ったけど、まさか本当にやっちゃうとは……」
「やりたくてやった訳じゃないし……」

と呟くがリズはハイハイと聞く気がないようだ。私たちは商品が置いている先ほどの部屋に戻る。
するとバーンっという音とともに店に入ってきた小柄な影が突っ込んでくる。

「リズざ~~~~~ん!!」

涙声とともに影はリズに突撃した。
くぐもったうめき声を残して倒れたリズはモロに体当たりを喰らって悶絶している。
もちろん街中なのでダメージはゼロです。

「いったたたた、シリカいきなりなによ!?危ないじゃない!」

小さな影もといシリカを引き剥がし注意をする。

「だって~」

と言うシリカに私も近づき涙を拭いてあげ、頭をなでて声をかける。

「こんにちはシリカ、とりあえず落ち着こうか。それからなにがあったか説明してほしいんだけどなぁ」

私の声にシリカは頷き気持ちを静めてから話し始めた。

「実は……」

シリカの話によると、現在所属しているギルドのリーダーが自分の武器破損のカバーに入り瀕死にしかけてしまったらしく、それをその恋人にひたすら責められたらしい。
そしてリーダーと他の仲間に少し時間をおいて関係を落ち着かせようということになった。
時間ができたのでまず壊れた武器に変わり新しいメイン武器を用意する為ここに来た、ということらしい。泣いていたのは自分のせいという気持ちに押しつぶされそうになり、武器職人兼仲のよい友人(?)に頼って思わず飛びついた……だって。
話を聞き、早速リズは仕事モードに入る。
もちろんシリカは私が慰めていつもの明るいシリカに戻ったし、私が大剣装備の理由も話して顔を青くしたりキラキラと輝かせたりとめまぐるしい変化を見て楽しみました。
持ち帰って妹にしたい。

「で、今回はどんな武器がいいの?」
「できればいつもよりもう一つ……いえ、もう二つくらい上のものを希望で。あっ!お金は大丈夫です!!」
「うーん、なら素材取りに行かないとなぁ」

そう言うと二人は私の方をチラチラと見てくる。

「あー、はいはいわかりましたわかりましたよ。お手伝いしますって」
「やったー!!」

私の返事にピョンピョン飛び跳ね喜ぶシリカに

「なら他にもうちょい難易度の高いあそこもついでに・・・・・・」
「ちょーしに乗らない」

さりげなく私を利用しようとするリズに釘を指す。するとチェッという舌打ちが聞こえた。
リズ……、もう少し私にも優しさをください。
さすがに今日は時間的に厳しいので明日、《リズベット武具店》の前に九時集合することにして私は殺風景な自分のホームに帰った。

そして次の日―――

装備を調え私たちは六十二層のクエストに参加することにした。今回のクエストは主街区から北西にある洞窟の最奥に瑠璃色のインゴットがあると近くの村の古文書に書いてあったのが見つかったというクエストだった。
クエストが出てきたのは最近で、最奥の扉には少し大きな鍵穴があり、その洞窟のどこかに鍵を持つモンスターがいるのではといくつものプレイヤーがモンスター狩りをしたが、結局鍵は出てこず皆断念したという。
時間がかかりそうだなぁ。とぼやく私に気づかず二人の少女は俄然やる気である。
素早くフラグを立てに村の集会場にいる村長さんたちに話を聞きに行った。
フラグ立てはさくっと終わり早速例の洞窟に向かう。

「そう言えば二人は今レベルいくつ?」
「あたし六十八」
「最近六十二になりました」
「足りない!?安全マージンは+十だって知ってるでしょ?」
「ダイジョーブダイジョーブ。そんなのあんたがいるから問題ないでしょ」
「はい!ブラウさんがいるからあたしたち心配ありません!!」
「はじめから人任せですか……。やっぱり解せぬ」

 二人の小悪魔にいきなり心が折れそうな私だっだ……。


◇◆◇◆◇


洞窟内は以外と明るく、エンカウント率はそこそこ高めだが敵もそれほど強くなかったのでかなり楽だ。私が敵を切り、吹き飛ばして大暴れした。たまに少しHPが残った敵を二人が倒すという形で先に進む。今もちょうど《ナイトゴブリン》という騎士甲冑を着たモンスターを剣で貫き倒したところだった。

「いやーホント楽ねー、まさに黒兎様々って感じ?」
「褒めてもなにもでませんよーっと」

大剣を戻し私たちは先に進む。ダンジョンはある程度マッピングをしたが、まだ例のモンスターと出会ってはいない。一応周りを警戒しつつ会話をしていると前から人の気配と足音が複数聞こえてきた。
現れたのは五人組の男性プレイヤーたちで年齢は十代後半から二十代半ばといったところだろうか、装備の質を見るに中層プレイヤーの中でも少し上くらい。
彼らは私たちを見ると近づいてきた。その内の先頭にいる爽やかな片手剣と盾装備の人が笑顔で声をかけてくる。

「こんにちは、もしかして君たちもここのクエストを?」
「えぇそうよ。アンタたちも?」
「うん、まあ三日前から来てるんだがまったくでね」

やれやれとが肩をすかすようにしてアピールする。

「そぅ、ま、根気とリアルラック値に期待ってかんじね」
「そうだね」

私とリズが話していると一番年上っぽい眼鏡をかけたメイスと盾装備の人が話しかけてくる。

「自己紹介がまだだったな、俺はアクセル。ギルド《明の星》のリーダーだ。長槍装備がジンとレノ、刀使いがデューイ、そして君たちと話してたのがナンパ男レイヴン、君らは?」
「ウス」
「よろしく」
「……」

アクセルさんは私たちにお仲間さんを紹介してくれた。そのとき「おい、アクセル!人聞きの悪い言い方すんなよ!」とレイヴンさんが言っていたがギルメンのスルーしているところを見るにいつものことなのだろうと推測する。

「あたしはリズベット。リズベット武具店の経営者よ」
「あたしはシリカと言います。この子はピナ」

シリカの紹介にピナが一鳴きする。

「私はブラウ、一応私たちの関係は友達です。今日はこの子のクエストの手伝い出来ました」

と言ってシリカの頭にポンッと手を乗せる。その時「ふみゅっ」とかわいらしい声が聞こえた。
そしてジンさんが話しかけてくる。


「あ、シリカってあの《竜使いシリカ》ッスか?」
「はい、ご存じでしたか」
「知ってるよ知ってる、超有名じゃん。それにリズベット武具店ていったら結構質の良いものがそろった店だろ。どっちもすごく可愛いって聞いてたけど本当だったんだねぇ」

とレイヴンさんがジンさんに続いて話し、二人をほめだした。

「なんだか照れますね」
「ま、あたしの評価は当然よね!」
「リズ…謙虚って言葉知ってる?」
「なによ、ケチつけるの?良い度胸じゃない」

いやいやそういう意味じゃないんだけどね、っていうかそんな禍々しいオーラ出してメイス構えないでください。

「そっちのブラウさんってのは聞いたことないけど、見た目的に女子高生くらいかな?すごい美人だよ、あのKoBの副団長さんに負けないくらい!どう、よかったら俺と付き合ってみない?」

リズとシリカが笑いこらえてるし、それとレイヴンさん軽いです。
男の人に告白されるのもどうにかならないかと頭で考えつつ、しかし顔に出さずに

「ありがとうございます。でもごめんなさい私、実はこう見えてもおと」

と話してるそのときに、レイヴンさんの頭をアクセルさんが殴り、無理矢理私たちから引き剥がした。

「いい加減にしろ!そうやって美人見つけたらところかまわず声かけやがって!……ウチのバカがすまん」
「い、いえいえ」
「べ、別に大丈夫よ。きき、気にしないで」

笑いを我慢しながら言う二人に

「よくあることなんで、あと私お」

男という真実を教えようと私が話そうとするがその前に

「じゃあ俺たちはそろそろ行くことにするよ、お互い頑張ろう」
「はい、では」

とシリカとアクセルさんが言ってお互い分かれるが、レイヴンさんは

「俺まだ諦めてないからー!!」

と引っ張られながら私に向かって言い去ってゆく。

「私、男なんですけど……」

彼らが見えなくなって私のぽつりとした声とシリカたちのくすくすという笑い声だけが残った。
そして二人は私に向かい

「アハハ、ブラウさんまた告白されちゃいましたね」
「いやー、何度見ても面白いわね。あんたさ、そろそろ誰かの気持ちに答えてあげたら」
「私ノンケなんで、同性と付き合うとか絶対嫌だ」

お腹を抱えるリズの言葉にゲンナリとし、答えた。

「でもブラウさんってほんとに綺麗ですよね、睫毛長くて、顔は整ってますし、体の線も細くてスレンダー……」
「確かにそうね、アスナと同じレベルの美人っぷりだわ。つか何でそんな顔して男なのよ!!」
「いや、親の遺伝?」
「あたしもブラウさんみたいになりたいです!」

両手を胸の前で握るシリカは大変可愛く、小動物を連想させた。

「シリカは今のままが一番だよ」

と言いシリカの頭をワシワシとする。するとリズが

「ねぇ、あたしは?」

と聞いてきたので、

「あー、リズも超可愛いよ」

と言うと「なんかお世辞臭くてムカつくのよ!」といきなり怒り出して殴られた。
 ……なんか理不尽。


◇◆◇◆◇


「じゃあ気を取り直して鍵探しを再会しよっか」

リズの言葉に釈然としないが、とりあえず同意して探索を再び開始することにした。
現れた敵をひたすら倒し続け、リズがレベルアップしたがまだ鍵は見つからないままだ。
リズがスキルに割り振りをしている間に私たちは小休止を入れることにした。私が壁に体を預けているとシリカが声をかけてくる。

「もう、だいぶ時間がたちましたね」
「うん、確かに。そろそろ帰らないと今日は家で眠れなくなるね」
「そうね、今日は無理しないで明日にしよっか」

と帰る段取りを話しているとき、リズは何となくふとよぎったように言った。

「あのさ、一回例の最奥の扉に行ってみない?何かヒントがあるかもしれないし」
「そういえば私たち、まだ例の扉を見てなかったんだっけ」

リズの言葉に私はが思い出すようにして言った。

「だからさ、最後にそこまで行って明日に持ち越ししない?」
「いいですね、そうしましょう!」
「キュルル!」

シリカの言葉に同意するようにしてピナが鳴いた。
私は手を顎に着け考える。

「じゃあ、行ってなにもなかったら帰る、それでいこっか」
「OK」
「わかりました!」

そして私たちは噂の最奥の扉へ向かったのだった。


◇◆◇◆◇


「はぁー、でっかいわねー」
「大きいですねー」
「ほーら二人ともさぼってないで一緒に探してよ」

私の言葉にはっとした二人は探索を開始した。
何かフラグや見落とした条件が書いた文が壁に書いてあるかもとあたりを探してみるが、あるのは美しい彫刻が施された巨大な扉のみ、ハッキリというと収穫無しの無駄足だったようだ。

「はぁ、やっぱ何もないか~」

と言って太陽の彫刻が施された壁にリズがもたれかかった。
すると彫刻が光り、ガコンッ!と大きな音とともにリズがもたれ掛かった壁が消えた。

「えっ!?ちょっま・・・・・・」

と手をバタバタさせ堪えようとするリズだが、抵抗むなしく倒れる。
ガンという音が響きリズが頭から落ちてうずくまっている。もの凄く痛そうだなぁとか思う余裕のある私におろおろするシリカがそこにいた。
ついでに音の割にHPゲージの減少は微々たるものだったりする。

「何この地味なトラップ、思いっきり頭ぶつけちゃったじゃない!!」

後頭部をさすり、痛みを和らげようとするリズが怒りを壁にぶつける。

「っ!?リズ、それ隠し扉だよ!!」
「あっホントだ。しかもなんか宝箱がある」
「リズさんきっと中身は、先に進むヒントか鍵本体が入ってると思います」
「お手柄だねリズ」
「そ、そう?まぁ、あたしにかかればこんなものよ」

先ほどの怒りはどこに行ったのか、リズを褒める私たちに少し胸を張るリズ。万が一中身がトラップの可能性を考えて慎重に開いたがが、予想通り中には鍵が入っており、鍵はリズのアイテム欄の中に入っていた。私たちは早速例の扉に使用する。
扉はスーッと滑らかに開いたので先に進むことにした。

「それにしても、まさかこんな近くに鍵があるとはねぇ。盲点だったわ」
「灯台下暗しってこういうことを言うんだろうね」
「でも最後には見つけたんですし、良かったじゃないですか」

そう話して進んでいると、後ろの扉が大きな音を立てて閉まろうとしていた。

「えっ!?な、何」
「「扉が閉まる(わ)っ!?」」

そして、その閉まるギリギリに5つの影が体を滑り込ませてこちら側に来た。
影たちはもみくちゃになり、苦しそうに呻いている。

「あっあんたちは……」
「あ、アクセルさんたちじゃないですか!」

その塊は今日知り合ったアクセルさんたちだった。
一番下にいるアクセルさんが苦笑いで私たちを見る。そして上にいるレイヴンさんが現れた。

「やぁお嬢さん、運命の再会は以外と早かったみたいだな」

……再会早々台詞が気持ち悪いです。背中がゾワゾワする。

「それにしても、まさか君らに先を越されるとはな。どういう条件だったんだい?」
「そ、それは秘密よ!」

それぞれが立ち上がりアクセルさんが苦笑して私に話しかける。仲間の人も同じように笑っていた。

「見つけたのだって偶然で、運が良かったからですよ」

私とアクセルさんが話し、シリカはジンさんたちと話していた。……なぜか私のコートの袖を握りながら。
リズは未だ頭をさすっている。私は再び彼に話しかけた。

「アクセルさんたちはどうしてこちらの方に?」
「さっきデューイが帰ろうとした時にここに行くべきとか言い出してさ、こいつの勘は良く当たるから来てみたら扉が開いててビックリ!それで閉まろうとしたから急いで中に入って君らに合流っという感じかな」
「へぇ、デューイさんって不思議な人なんですね」
「あぁ、あんま喋んないがスゲーいいやつだし勘がハンパない」

私は無口でぽつんとたっている彼を見た。

「それでですね、いざ頼んだらコーヒーの上にクリームが乗ってるだけだったので『どこにウインナーがあるんですか?』って聞いたらその人とブラウさんが大笑いしたんです。ひどくないですか?」
「アッハッハッハ、シリカちゃん可愛いッスね。」
「うん、癒される」
「もう!ジンさんたちまで笑わないでくださいよ!!」

と横でシリカとジンさんとレノさんが楽しそうに話していた。
いつの間にかジンさんはシリカのことをちゃん付けで呼んでるし。
おそらく話の内容は、以前シリカが大人ぶって私とキリトの前でコーヒーが飲めると言ったので、私が現実と同じコーヒーのが味がする場所へ連れて行き、メニューにあったウインナーコーヒーにシリカが興味を持ったので注文をした。
商品が来たときのシリカの可愛い話を語っているのだろう。
あとから聞いたが私が思っていた通りで、シリカはウインナーコーヒーがウインナーがコーヒーの中に入っているおもしろい飲み物だと思っていたそうだ。
ついでにコーヒーは一応全部のんではいたが、クリームで甘くなったとはいえ苦いのを我慢してますって顔に書いてあり、飲み慣れてない感と一生懸命な姿にほんわかと優しい気持ちになりました。
閑話休題――
それにしてもあのシリカが仲良く話すとはジンさんたちは、よほど親しみやすい人なんだろうな。

「ねぇブラウ、そろそろ行きましょ」
「あうゎ、髪引っ張んないでよリズ。シリカ、そろそろいこっか」
「はーい。あっ、ジンさんたちも同じクエストしてるんなら……」
「いや、俺たちはいいよ。扉開けたのは君たちなんだ」
「そうそう。それにかわいい子たちには優しくしないとね」
「レイヴンはいっつもそれだな」
「しかし報われないのがむなしいッス」
「ほっとけ!!」

するとデューイさんがレイヴンさんの肩に手を起き、グッとサムズアップした。

「デューイもかよ……」

みんなが笑い出し良い雰囲気になった。
そしてレノさんが私たちに聞いてきた。

「まぁでもどんなお宝なのか見学だけさせてくれないかい」
「あぁ、俺も結局どんなのか実物見てみたいわ」
「じゃあ一緒に行きましょう」

と私が言い、みんなでゾロゾロと先に進む。
歩きながらさらに話をして仲良くなった私たちとアクセルさんたちはお互いをフレンド登録することになった。
扉の中にはモンスターがいないのか全く遭遇しないままお宝のある祭壇の前まで来ることに成功。祭壇は少し長い階段の一番上にあった。

「中はそこそこ広いのに何もないなんて拍子抜けね」
「いやいやリズベットさん、危険なことは無いに越したことはないさ」
「そりゃそうだけど」
「そうそう、危険がないことはいいことだよリズ」

アクセルさんと私が不満を漏らすリズを諭す。
そしていざ祭壇へ行こうとするとどこからともなく声が聞こえてきた。

『汝、祭壇の秘宝を欲すものか』

「ん?どこから話してんだ?」

レイヴンさんが辺りを見回し声の主を捜す。
私もマスターした索敵スキルを使ってであたりの気配を探るが何も引っかからなかった。
すると再び声が私たちに語りかける。

『今一度問おう。汝、祭壇の秘宝を欲すものか』

リズは一歩前へ行き声が響くように高らかに答えた。

「えぇ、そのためにあたしらはここまで来たの!だからお宝は頂戴するわ!!」
「ねぇシリカ、すっごくいやな予感がするんだケド・・・・・・」
「奇遇ですね。あたしもです・・・・・・」
「俺らも以下同文・・・・・・」

すると声はリズの返答にズシっと響く声で答えた。

『ならば我を倒してゆけ!我は秘宝を守りし守護獣なり、挑戦者にその資格ありしか見届けさせてもらう!』

守護獣と名乗る声の主が言い終わると祭壇の上に四つ足の影が立ち上がり私たちの道に立ちふさがる。あの姿はモン○ンのティ○レッ○スに似ている。

「やっぱこんな展開……か」
「あんな簡単にレアアイテムがもらえるわけないもんね」

後ろで何か諦めたようなレイヴンさんの声が聞こえた。
本音を言うと連日でのボス戦はキツいので私は一応リズに聞くことにする。

「質問、今から私たちはあれ倒さないと駄目?」
「うーん、ぶっちゃけあたしも帰りたい」
「けどあのモンスター、逃がしてくれそうにない……ですよね」
「クリスタルも使えないし」

と私たちは話しながらそれぞれの武器を手に持つ。
その時、後ろの五人が前にでて武器を構えた。

「じゃあ俺らも討伐を手伝おう」
「女の子たちを守らなきゃな」
「やってやるッス!」
「あの姿のモンスターなら別のゲームで滅茶苦茶狩ってたしね」
「(コクン)」
「いいんですか?」

私が聞くと、「当然!」と力強く答えてくれた。

「では申し訳ないんですが、私は超攻撃特化なんで前線で暴れます。皆さんはすきをみて攻撃、二人は支援で。質問は?」
「あぁOK!」

私の真剣な姿に何か感じたのかアクセルさんがすんなりと頷く。
私のわがままをみんなが了解と返事をくれた。
私は相棒を一度「もう少し頑張ってね」と気持ちを込めてなでた後、左足を前に体を半身にして大剣を握りなおす。大きく息を吸い、吐き出す、そして剣先を敵にあわせて構えた。
 さぁ昨日に続いてボスとの死合い、最初から全開だ!!
 
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