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ソードアート・オンラインー神速の剣士

作者:秋馬
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第三話

「それにしても君たち、いっつも同じ格好だねぇ」
「「うっ」」

迷宮区へ続く森の小道でアスナが私たちに言ってきた。

「い、いいんだよ。服にかける金があったら、少しでも旨い物をだなぁ……」
「私は単純に黒が好きって言う理由と、隠蔽ボーナス高いし……」
「なるほどね、ブラウ君はわかったけどキリト君はキャラ作り?」
「なんでだよ!今説明したじゃないか!ってそんなこと言ったらあんただって毎度そのおめでたい紅白……」
「仕方ないじゃない、これはギルドの制服……、ん?どうしたの?」
「アスナこれ見て」

私はアスナにマップを呼び出して可視モードで見せる。

「多い……」
「これじゃちょっとしたレイドだよ」

アスナの言葉に頷きつつ呟く。そこでキリトが提案をしてきた。

「この並び方から考えて、おそら《軍》だろうけど一応確認したい。その辺に隠れてやり過ごそう」
「そうね」
「OK」

と背丈ほどの高さに密集した灌木の茂みの陰にうずくまる。がアスナが「あ……」と言い自分の格好を見下ろす。赤と白の制服が目立つのだ。

「ちょっと失敬」

キリトが自分のレザーコートを脱ぎアスナの体にかける。
二人のやりとりについ心が疼いてしまった。

「おあついですなぁお二人さん。邪魔者は去った方がよろしいですか?」

二人が顔を真っ赤にして否定するがその姿がまたおもしろく、我慢するのに苦労した。
これだから二人のそばにいるのをやめられないね。
そしてまもなく集団が姿を現、予測通り十二人の集団は巨大ギルド《軍》のメンバーだった。
過ぎ去ったあとアスナは納得したといった表情で言う。

「……あの噂、本当だったんだ……」
「「噂?」」
「うん。ギルドの例会で聞いたんだけど、《軍》が方針変更して上層エリアに出てくるらしいって」
「ああ、前にアスナから聞いたやつだね」

《軍》は二十五層攻略時に大きな損害がでてから前線に出てこなくなった元攻略組織でもあった。
そのことが内部で不満となり以前の大人数スタイルではなく、少数精鋭で戦果を出しクリアの意志を示すという方針になったと少し前にアスナに聞いていたのだ。

「ということなの。その第一陣がそろそろ現れるだろうって」

アスナがキリトに説明をし終わったようだ。

「実質プロパガンダなのか。でも、だからっていきなり未踏破層に来て大丈夫なのか……?レベルはそこそこありそうだったけどな……」
「ひょっとしたら……ボスモンスター攻略を狙ってるのかも……」
「それであの人数はキツくない?七十四層のボスはまだだれも見てないから見つけてもまずはボスの戦力と傾向確認でしょ、それにほかのギルドとかも集めて協力するのが当然じゃないかな」
「だな……。まあ、連中もぶっつけでボスに挑むほど無謀じゃないだろ。俺たちも急ごうぜ。中でかち合わなきゃいいけど」

そういってキリトが立ち上がり、私たちも迷宮に向けて先を進んだ。


◇◆◇◆◇◆


「えー、ただいま戦闘中ですがワタクシことブラウのやることか全くありません」

現在迷宮区の最上部近くだが、キリトとアスナというバトルマニアーズが二人で戦い私来た意味あるの?と言うかんじなので剣の柄をマイク代わりにレポーターのように解説?をしている。

「今戦っているのは昨日私がソロで倒した《デモニッシュ・サーバント》です。まずアスナが《バーチカル・スクエア》を舞うように華麗によけて《スター・スプラッシュ》を決めます、完璧なタイミングでしたね。おっとどうやらキリトとスイッチをするようです」
「キリト君、スイッチ行くよ!!」
「お、おう!」
「キリトが前に身体を突っ込み先ほど《デモニッシュ・サーバント》も使用した《バーチカル・スクエア》を放ち四発ともしっかりヒットします一撃の重さが見ただけでもわかるいい仕事してますね。そしてとどめに使うのは、あーっと《メテオブレイク》だ!これは体術スキルもないと使うことができない少しレアな技です!!あっもちろん私も使えますよ。そして今、敵のHPバーが無くなり戦闘シューリョー!」
「余裕だな、ブラウ」
「そういうなら私にも戦わせてよ。それにアスナ、前線は私とキリトって自分でいってたのに自分が出てるじゃん」

キリトとアスナが「「アハハ……」」と言う笑い声に呆れつつ、私たちは先に進むのだった。
不気味な彫刻が施された円柱の立ち並ぶ回廊を進んでいる。現在までの戦闘で私が前線に出たのはたったの一回ぶっちゃけ暇で帰りたい感満載である。そんな意識を奥へ押しやり迷宮の先に進む私たち三人。
迷宮のマップデータの空白部分もだいぶなくなり残りはこの先にある長方形の広場サイズの部分のみだ。
さらに先を進むと突き当たりで、灰青色の巨大な二枚扉が嫌な存在感を放っていた。

「……これって、やっぱり……」
「多分そうだろうな……ボスの部屋だ」
「一応軽く見ていくのは……ダメ……かな?」
「ドアを開けるだけなら多分……だ、大丈夫……だろ」

私のお願いにキリトが弱々しく答え、アスナが残念そうな顔をする。
クラディウスと戦っているときはあんなに格好良かったのになぁ。あれ、クラディールだっけ?

「一応転移アイテム用意しといてくれ」

キリトが万が一に備えて言い「うん」と頷くアスナ。私が全員持ったのを確認し扉に手を添える。

「じゃあ……開けるね」

ゴクリと生唾を飲み震える両腕に力を入れると、扉がすっと滑らかに開き衝撃とともに止まる。三人で見守る中、突然入口からわずかに離れた床の両側に二つの青白い炎が燃え上がる。連続的に炎がつき、まっすぐの道が生まれて最後に一際大きな火柱が部屋を照らす。
現れた巨大な姿は、鍛え上げられたような筋肉に、青い肌、後ろに向かってねじれた角を持つ山羊の顔という特徴のRPGでよくでる悪魔型だけど実際に見ると真剣に怖すぎる。
ボスモンスターの名前は《グリーム・アイズ》と言うらしい。―――輝く目ですか。確かにその目はビームや呪いでも出そうなくらい怪しげに輝いている。
その怪物は右手の巨大な剣をかざしてこちらに突撃してきた。

「うわあああああ!」
「きゃあああああ!」
「こないでええぇぇぇ!」

私たちはボスに背を向け、一心不乱に全力で逃走した。


◇◆◇◆◇◆


迷宮区の中に設けられた安全エリアの広い部屋に入ると私はその場にぺたりと座り込んだ。キリト達は壁際まで行き二人で並んでへたり込んでいる。なにげに私は逃げてるときに側でターゲットにされたので素早く剣を降り敵を倒しました。自分でも剣の軌道が追えないくらい速かったです。
そんなことを考えるくらい余裕ができみんなでお互いの顔を見合わせると、笑いがこみ上げてきた。

「あはは、やー逃げた逃げた!」

アスナが愉快そうに笑う。

「こんなに一生懸命走ったのすっごい久しぶりだよ。まぁ、私よりキリト君の方が凄かったけどね!」
「いやいや、俺よりブラウの方が「私はなにげに敵を倒してたりするよ」……」

まぁ意識して倒した訳じゃないんだけどそれは言わないでおこうっと。
私の言葉に押し黙るキリトに私とアスナはくすくすと笑い続けた。一頻りキリトをからかい笑いを収めると、まじめな話をする。

「……あれは苦労しそうだね……」
「そうだな。パッと見、武装は大型剣一つだけど特殊攻撃アリだろうな」
「前衛に堅い人を集めてひたすらスイッチっするしかないね」
「盾装備の奴が十人は欲しいな……。まあ、当面は少しずつちょっかい出して傾向と対策って奴を練るしかなさそうだ」

あっまずいという顔をしたのをアスナがキラリと見た。

「盾装備、ねぇ」

その言葉にたじろぐキリト。

「君たち、なんか隠してるでしょ」

その言葉に私の心臓がドキリと跳ね上がる。

「いきなり何を……」
「か、隠すって何を隠すのかなー?」
「だっておかしいもの。普通、片手剣の最大のメリットって盾持てることじゃない。でも二人が盾持ってるとこ見たことない。」
「な、なんだそっちの方か……」

私の安心に「そっち?」と聞くアスナに

「何でもない何でもない」

といって私は答える。

「私はスピードと手数で勝負してるから、盾は邪魔なんだよねえ」
「ふぅん、私と一緒か。でもそれなら私と同じ細剣の方がいいんじゃないの?」
「思ったんだんだけど、スキルの構成慣れしてるのと体になじんじゃってねぇ」
「ふーんそう言うこともあるんだ。キリト君はそう云うことでも、スタイル優先で持たないって訳でもないよね。……あやしいなぁ」

私の疑いが晴れキリトに流れる。
キリトが何か葛藤し、やがて口を開こうとしたときアスナが話を終わらせる。

「まぁ、いいわ。スキルの詮索はマナー違反だもんね。それより遅くなったけど、お昼にしましょうか」
「なにっ。て、手作りですか」

キリトがっつきすぎ。まぁ気持ちは分かるけどさ、アスナの手作りはすごくおいしい。

「アスナ、もしよかったら私のお弁当と分けっこしない?アスナほどおいしさは期待しないでほしいけど」
「ちゃんとブラウ君の分も作ってあるよ。味より分けっこするのが楽しいんだから気にしない!」
「余った分は俺が食べるから全部出してくれ」
「キリト意地汚いよもう」

私は二人の側によって腰を下ろす。
メニューを操作してバスケットを取り出すアスナと私。
ついでに私のお弁当の中身は卵焼きと俵型おにぎりだ。
簡単に食べられる形を選んだらこれになっただけで他にもいろんなものを作れますから!
誰に言うでもなく自分の心の中で勝手に言い訳する私、今日なんかおかしいかも。
アスナは中にある三つの大きな紙包みの二つを取り私とキリトに手渡した。
そのときキリトとアスナの手が当たって一イベントがあればよかったのになどと考えているとアスナに睨まれた。

「……なんかまた悪いこと考えてるでしょ」

私はぶんぶんと首を振り否定のサインをする。
何でわかったのさアスナ……
私の前には中身を取り出し大口を開けかぶりつくキリトがいた。
中身は丸いパンにたくさんの具が入ったサンドイッチ――どちらかというとハンバーガーってかんじだった―だ。

「う……うまい……」

キリトの言葉に私もさっそく一口。

「ホントにおいしい。アスナ、この味どうしたの?」
「一年の修行と研鑽の成果よ。アインクラッドで手に入る約百種類の調味料が味覚再生エンジンに与えるパラメータをぜ~~~んぶ解析して、これを作ったの」
「すごいね!やっぱりアスナは料理の天才だよ!!これならいつお嫁さんになっても大丈夫だね♪」

私の言葉に

「そ、そんなお嫁さんだなんて……」

とキリトの方を向き、顔を赤くするが当の本人は料理に夢中で気づかない。キリト……アスナが可哀想だよ。
ほんわかとした食事の余韻を楽しみ小休憩をしているとガチャガチャと音を立ててプレイヤーの一団が入ってきた。
現れたパーティーのリーダーの顔を見ると見覚えのあるスケベ顔だ。軽く挨拶しアスナを見たクラインがラグる。
そして勝手に自己紹介を始めた。最後に二十四歳独身というのを忘れないところがクラインだ。
ほかのメンバーも我先にと挨拶をしている。
反応が私を女と思って初めてあったときと変わってない。さすがクラインのギルメンだと称賛を送ろう。

「……ま、まあ、悪い連中じゃないから。」
「まあ確かにいい人たちだよねえ。リーダーの顔とスケベ心以外は」
「おい!ちょっと待てブラウ!!お前最近俺やエギルにつめたくないか!?」

私たちの話し合いにアスナが我慢しきれないという感じで笑い始める。
クラインのだらしない笑顔に呆れていると彼が私とキリトの腕を掴み、さっきのこもった声で聞いてくる。

「どっどどどどういうことだよ二人とも!?」

私が答える前にアスナが進み出て答えた。

「こんにちは、しばらくこの人たちとパーティー組むので、よろしく」
「目的はキリトだけどね」

私はぼそっと付け足しアスナが慌てて私の口を手でふさぐ。

「キリト、てンめぇ・・・・・・」
「俺かよ!!」

キリトがクラインに捕まれて何か悟ったように肩を落とした時、別の足音と鎧などの音が響いてきた。

「キリト君ブラウ君,《軍》よ!」

ハッとしてアスナの手から脱出し、入り口を見ると森で見た一団が二列縦隊で入ってきた。しかしその姿は見るからに疲弊している。
リーダーっぽい人が「休め」と言った途端に残りが崩れ落ちるように座り込み、それを見ずに男の人がヘルメットを外しこちらに来た。

「私はアインクラッド解放軍所属、コーバッツ中佐だ」
「チェンジでお願いします」

つい私の口から洩れた言葉をアスナが慌てて止める。
中佐とか……ない。というか《軍》というのは集団外部がつけた呼称のはずだったと思うんだけど。
私たちの代表でキリトが「キリト。ソロだ」と対応する。
コーバッツさんは横柄な口調で聞いてきた。

「君らはもうこの先も攻略しているのか?」
「……ああ。ボス部屋の手前まではマッピングしてある」
「うむ。ではそのマップデータを提供してもらいたい」

・・・・・・ハ?コノヒトハナニヲイッテルノ?

「な……て……提供しろだと!?テメェ、マッピングする苦労が解って言ってんのか?」

私たちの声を代弁するようにクラインが言う。私もこの人はバカなんじゃないかと思う。
しかしバカな人はさらに大声で信じられないことを言ってきた。

「我々は君ら一般プレイヤーの解放のために戦っている!」
「そうなんですか?最近まで全然最前線で見なかったんだけどな」
「少しブラウは静かにしててくれ」

私の言葉に片眉を動かすところを見ると聞こえてるんだろうけど、あえて無視し続ける。

「諸君が協力するのは当然の義務である!」

これは一発殴っても許されるね。
と私が一歩乗り出すとキリトが手で制した。

「どうせ街に戻ったら公開しようと思ってたデータだ。構わないさ」
「おいおい、そりゃあ人が好すぎるぜキリト」
「そうだよ、こんな偉そうな人に私たちのデータ渡す必要ないよ」

私たちの言葉をキリトが流し迷宮区のデータを送信した。相手は「協力感謝する」という欠片も気持ちのこもってない言葉だけ返す。
ハーっとため息をつき、アスナと諦めていると彼は仲間を連れ、進んでいった。だがお仲間さんのHPは満タンだが疲労は残ったままのようで動きが緩慢な気がする。かなり消耗しているね……。

「……大丈夫なのかよあの連中……」

クラインは人の言い言葉を言う。

「いくらなんでもぶっつけ本番でボスに挑んだりしないと思うけど……」

アスナの少し心配したような言葉に

「……一応様子だけでも見に行くか……?」

という風にキリトが言葉をかけみんなが頷いた。
私はいやな予感がし、気のせいでありますようにと願いながら私たちは先に進むことにした。


◇◆◇◆◇


私たちは、運悪くリザードマンの群れと出会い、蹴散らして回廊まで来た。
安全エリアから三十分も経過してしまい軍に追いつけなかった。

「ひょっとしてもうアイテムで帰っちまったんじゃねぇ?」

とクラインが言うが、あの偉そうな中佐さんが率いてるパーティーだからそれはないと思う。
半分まで来たところで人の悲鳴が聞こえた。
私たちの不安は当たってしまったらしい。私たちは駆け出し、左右に開いている大扉についた。

「おい!大丈夫か!」

キリトが叫びながら半身を出し声をかける。
中ではザ・グリームアイズが暴れ、軍の人間のHPが危険な赤になっている。対して青い悪魔は七割以上残している。
「急いで転移アイテムを使って!!」

私がプレイヤーに向け叫ぶが男の人が返した言葉は信じられなかった。

「だめだ……!く……クリスタルが使えない!!」

「「な……」」

私とキリトが絶句する。そんな中でコーバッツはあり得ないことをのたまった。

「何を言うか……ッ!!我々解放軍に撤退の二文字は有り得ない!!戦え!!戦うんだ!!」

このトラップ部屋で二人が居なくなったということは死んだということ。回避しないといけないはずのリアルの死だ。

「馬鹿!そんなこと言ってる場合じゃないよ!!」

私が叫んだとき、後ろからクラインたちが来た。キリトが事態を伝え、クラインの顔が険しくなる。
私たちがどうやって彼らを救うか考えているときにコーバッツが無謀なことをした。

「全員……突撃……!」

飛び掛かる八人に悪魔は口から眩いガスを吐き出し巨大な剣が一人を斬りとばす。
HPがなくなり消滅するリーダーを見て生き残っている人はパニックを引き起こした。

「だめ……だめよ……もう……」

掠れたようなアスナの声が隣から聞こえた。キリトがアスナを止めようとしたがその前にアスナが突っ込んでいく。

「だめ―――――ッ!!」

その声とともに閃光となり悪魔に攻撃するアスナを見て私とキリトは目で合図し抜剣してアスナを追う。
クラインたちも着いてきたようでクラインの声に続いて仲間の人たちが追撃する。
アスナの攻撃が不意打ち気味で決まるがHPの減少は微々たるものでグリームアイズを怒らせてターゲットが変わった。
振り下ろされる斬馬刀に回避を試みるアスナ、ステップでかわすが余波を受け地面に倒れる。グリームアイズは次の攻撃を行うため斬檄が降り注ぐ。

「アスナ―――ッ!!」
「やらせるもんか―――ッ!!」

キリトが斬馬刀とアスナの間に入り私が横から剣で一撃を叩きこみ、キリトと一緒に攻撃を逸らす。衝撃が体を大きく揺らしたが、剣激はアスナから離れた床に逸らすことに成功。

「下がれ!!」

というキリトの声にアスナが反応し、私たちはボスの追撃に備えた。
単調に見えて少しカスタムされた攻撃が鬱陶しい。
振り下ろされた一撃を左に飛ぶように避け、着地した足に爆発的な力を込めて相手の足に突っ込む。
すれ違いざま相手のすねに向け《ソニックリープ》を当てそのまま股下をくぐり抜ける。
振り向こうとするグリームアイズにキリトが《バーチカル・スクエア》をヒットさせる。私が囮となって身を出し繰り出される攻撃をバック回避しながら軌道にあわせ撫でるように技をぶつけてズラす私の特技のシステム外スキル《柔技》を使って注意を逸らしてキリトがその隙に技をぶつけ、次はキリトが囮となり私が攻撃するというコンボを行うが、それでもHPの減少は芳しくない。

「ぐっ!!」
「キリト!?」

キリトが一撃を喰らいHPバーがガクッと減少した。
私たちの装備は基本壁向きではなく攻撃特化仕様だ。それを長年のコンビネーションでかろうじで前線を支えている状態だが、このままではやがて崩れてしまう。
背筋が凍り、冷や汗を流した私は唯一生き残れる可能性に欠けようと決意しみんなに大声で声をかける。ちょうどキリトも同じく叫んだ

「みんな!少しだけ時間を作って!!」
「十秒でいい!十秒持ちこたえてくれ!」

私とキリトの剣の軌道が重なり、巨剣の攻撃を弾いてブレイクポイントを作る。
その隙間にクラインが飛び込みカタナで攻撃する。
私たちは素早く下がり、メニューウインドウを開く。アイテムリストから大剣を取り出し装備、片手剣をなおしてスキルウインドウから奥の手のエクストラスキル<<瞬剣>>に設定。操作終了にOKをタッチしてウインドウを消す。
背中に相棒の魔剣《ラウドグラウル》のずっしりとした重量を感じ取る。キリトは一足先に終わったようでクラインたちに声をかける。

「いいぞ!!」
「お待たせ!スイッチお願い!」

私は柄を握り愛剣を抜く。
アスナが純白の光を残し、気合いの突き技を浴びせる。斬馬刀に決まり火花を散らしながら一人と一体のの間に隙間が生まれた。

「「スイッチ!!」」

そのタイミングに合わせて私たちは敵の前に出る。悪魔が硬直から回復し、圧倒的な一撃を振り下ろす。

「キリトッ!」

私の声にキリトが右の剣で弾き、隙間に滑り込むように私が全身を使った一撃をお見舞いし右に体をズラすとそこにキリトが左の剣で追撃する。初のクリティカルヒットに雄叫びを漏らす悪魔。次の上段切り下ろしに私は受け止め、キリトが決めて押し返す。

「さあ、もらった借りををたっぷり利子つけて返してあげる!」

そして私たちの|生きる為の抵抗(反撃)が始まった。
まず私は大剣を肩に担ぐようにして構え、アスナを超えるスピードで敵に突っ込む。柄を両手で持ち、勢いよく剣を袈裟斬りに振り下ろす。《瞬剣》の突撃技《レイジングセイバー》だ。愛剣の重量と重突進技の合わさった威力にライフが先ほどより多く減り敵が苦しさと怒りを混ぜたような叫び声をあげる。
私が硬直時間に入る間にキリトが両手の剣右、左、右と次々と閃かせる。硬直から回復した私が追いかけるように十四連続の上位剣技《アクセルスラッシュ》を放つ。右から左へ切り上げから始まり水平切り、切り下げ、右から左に薙ぎはらい、斜めに振り下ろしと残像と破壊の痕跡のみを残す勢いで剣を降り続ける。
剣と私が一つになり、剣速をより早くするイメージ。相棒が震え、猛獣のような雄叫びをあげた気がした。
敵を斬り、大剣を振るう仮想の全身の筋肉が悲鳴をあげるのではと思うくらいにひたすら酷使する。

「「…………ぁぁぁああああああ!!」」

私とキリトの雄叫びが重なり、キリトの十六撃目が入り、続いて私の突き

「これで・・・・・・終わりだ―――ッ!!」

そこから最後の切り上げが決まった。

「ゴァァァアアアアアアアア!!」

という大地を震わせるような悪魔の雄叫びが響き、輝く欠片となって爆散した。
視界には【You get the Last Attack!!】というメッセージが移るが、今私が気になっているのは私の仲間たちだ。
アスナが生き残り、キリトが寝転がる。そんな光景を見て安堵すると私はそのまま前のめりに倒れ、私の意識がそのままとぎれた。 
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