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剣の世界の銃使い

作者:疾輝
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旧友との決闘

「で、何でいきなり決闘(デュエル)なんだ?」

場所は変わって、人目のない広い広場。

「そろそろ先輩に勝てるかなーと思いまして。先輩、そのローブまだ着けてるってことは、敏捷力特価のままですよね?」

「ま、俺が藍椿にいたころの名残だからな。別に守備力不足、というか防御することは考えてないし」

それに、あのころとは武器も性格も変わった。まあ、変わったのは俺だけだはないということか。
それにしても、レナが挑発とはな。昔からは考えられないほど変わったな。

「さて、お前の挑発に乗ってやるとするか」

いつもの短剣と投剣のスタイルをとる。念のため、あることを戦闘前に仕込んでおく。
メニューウインドウから決闘(デュエル)を選択してレナに送信。当然、初撃決着モードになって受託される。二人の間に開始のカウントダウンが表示される。

「シリカはもう少し下がってた方がいいぞ」

「あれ?先輩、余裕みたいですね?」

実際、いくらレベル差があるといっても、レナとまともに打ち合ったら俺の方が危ない。だから、なるべく広く先頭区域は取ったほうが、敏捷地の高い俺にとって有利。なので少しシリカには下がっていてもらう。
シリカがちゃんと下がったのを確認してから、レナに向き直る。

「そんな事言っといて、一撃で終わるなよ?」

「大丈夫ですって、先輩くらい軽く倒せますから」

「それで、今まで1対1で今まで勝てたことがないのは、どうしてなんだ?」

カウントダウンは進んでいくが、俺らは軽口をたたきあう。これも藍椿では普通だった。口一つで相手の集中が切れてくれれば儲けもん。これはリオンさんの常套句だったな。おしゃべりくらいで集中が切れるほうが悪いし、それを理由にするなんてみっともない。

「ハンデでもつけてやろうか?」

「それはこっちの台詞ですよ」

表面こそ言い合っているものの、俺はもう言葉は頭に入ってきていない。多分レナの方もそうだろう。見ているのはカウントダウンの数字だけ。

「さて・・・始めるか」

戦闘開始と同時に、先に動いたのは俺だった。短剣から放たれたいくつもの斬撃が荒れ狂う。先手必勝、
レナを近づけさせる前に倒す。

「うわ、いきなりですか。危ないですねー、っと!」

「さて、これの攻略は出来ているのか?」

実際、今までにレナと決闘(デュエル)したことは、何度もあった。しかし、レナはこの斬撃の前に近づくことを許されず、そのままジリ貧で毎回負けているのだ。今回もそれではつまらないし、対策ができているからこそ、俺に挑んできたのだろう。

「秘密兵器の投入と行きますか!」

レナが動く。背中に背負っていた大盾を左手に構えると、そのまま俺に向かって突進してきた。確かに、縦を正面に構えられれば、斬撃は通らない。俺の攻撃は威力ではなく切断力に特化しているから、盾の前では、斬撃ではどうしようもない。斬撃ではだが。

「確かに、それは俺にとって効果的だよ。だが、俺だってそれくらいの対策はしている!」

腰から一つの瓶を取り出すと、それを左の投剣に使う。確かに盾は硬いが、なら壊してしまえばいいのだ。今、俺が投剣に塗ったのは腐食毒。くらうと、装備の耐久値がガクっと落ちるスグレモノ。これを使って、盾をぶち壊す。
というか、これ、前のレナとの戦闘でもやった気がするんだが・・・。なにか引っかかる物を覚えつつも、レナの盾に向かって投擲する。放った3つの投剣はレナの盾を見事にこわ・・・さないだと!?

「なっ!?」

「甘いですよ、先輩。それ、前も受けたじゃないですか」

それもそうだ。レナは一度失敗したことは二度と繰り返さない。だが、一体なぜ?腐食毒を、それもレベル5の奴をくらって耐久が落ちていないなんて・・・。

「まだ分かりませんか?じゃ、ひとつヒントです先輩、私の最も得意なスキル、それは何ですか?」

レナが最も得意なスキル!?あいつの武器は槍。いや、これじゃない。じゃあ、アイテム使用系の何かか・・・・?ん?アイテム・・・・!?そういや、そんなアイテムが有ったような・・・!!
そこで理解した。あのカラクリが何なのかを。それと同時にレナの最も得意なスキルを。

「永久保存トリンケットを盾に《装飾》したのか!!」

「あはは、正解ですよ先輩。でも、遅いですねっと!」

レナの射程内に入ってしまい、俺目掛けて放たれた渾身の突きをぎりぎり弾く。
知ってしまえば簡単なトリック。永久保存トリンケットは、SAO内での法則の一つ、全てのアイテムは徐々に耐久値が落ちていく、というのを無効化してくれる小さな箱だ。それをレナは大盾に装飾スキルでもって取り付け、短剣をそれにぶつけることで腐食を無効化した。簡単に見えるが、十センチ四方程度しかない大きさの箱に、俺の投剣を全て当てるレナの技術にも驚かされる。

「この距離まで詰めてしまえば、もう逃しませんよ!!」

確かにこの距離まで来られてしまえば、勝負はもう目に見えてる。レナの猛攻を受け止め、弾き返す。一見互角のように見えるが、実際はそんなことはない。確実に、レナが俺を追い詰めていく。
そしてそんな膠着の終わりは、簡単に訪れた。

カァン

「はい、終いです」

俺の短剣が弾き飛ばされる。このまま一撃くらえば、俺のHPは簡単に半分を切るだろう。
目の前には、勝ち誇った顔のレナ。だがな、それは甘い。まだ終わりじゃないんだよ!

「ホントは使いたくなかったけどな・・」

「なっ!?」

俺の手が動いた瞬間、レナはすぐに槍を振りおろしてきた。いい判断ではある。だが、少し俺のほうが動くのが速かった。振り下ろされた槍は、瞬時に俺の手にオブジェクト化された双銃によって防がれる。
これが俺が戦闘前に仕込んでおいた策。《クイックチェンジ》である。クイックチェンジとは、あらかじめセットしておいた予備の武器を、ショートカット一つで顕現させることができるオプションの一つだ。
元々、俺の斬撃は突破されるだろうと予想していた。じゃなけりゃ、レナは俺に決闘を挑んできたりはしない。そして、ここまで距離を詰められた時、俺には対抗しえるだけの武器を持っていないとレナは思っていたのだろう。だから、武器を弾いてそこで止まってしまった。クイックチェンジ自体はそう珍しいものでもない。もしクイックチェンジされても、俺が普段使う武器なら難なく倒せる、そういう油断が出来てしまっている。だが俺には、これ(銃)があった・・・。

「エクストラスキル、《銃火器》。の、派生《銃衝術》だ。これが俺の秘密だ。さて、仕切り直しと行こうか」

「ちょ、先輩、銃って卑怯臭くないですか!?」

「問答無用だ」

双銃を交差させて受け止めていた槍を弾き、そのまま追撃に移る。片手で槍を受け、もう片方でレナに向けて突き、斬る。手数の差で上回り、今度は徐々にレナを追いつめていく。槍の内側にもぐりこみ、レナの本領が発揮できない距離を保つ。一度離れようとすれば、容赦なく銃弾をばらまき、近づいてくれば、パリィとカウンターの2連で圧倒する。
が、しかしレナもレナだ。至近距離から放たれる攻撃を、自分の感覚だけでかわし、隙あらば槍を払って俺を離そうとする。

「久しぶりだなっ、と、こんな、にも、打ち合うのはっ」

「それっ、には、同感、ですっ」

少しずつだが確実にレナのHPは削れていき、時折、俺のHPがガクッと減少する。
もう俺もレナも残りのHPを気にせず、打ち合い続け、その結果・・・・

「あー、今回もだめでしたか・・・倒したと思ったんですけどねー」

「まだ、お前には負けられないさ。ま、結構危なかったけど」

この決闘に勝ったのは、俺だった。  
 

 
後書き
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