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美しき異形達

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第十五話 白と黒の姉妹その八

「ああなったんだよ」
「全然違いますね」
「魔改造だよな」
「本当にそうですよね」
「まあとにかくな、肉じゃがもな」
「海軍さんなんですね」
「あそこ由来なんだよ」
 実際にそうである、実は軍隊から出て来た食べものも多いのだ。
「乾パンとかもそうだしさ」
「あのビスケットみたいなのね」
「そうなんだよ、牛肉の大和煮とかも」
「大和煮ね、私あれ好きなのよ」
 朱美は牛肉の大和煮と聞いてこう述べた。
「御飯によく合うから」
「あれ確かにいいよな」
「ええ、ただ海軍さんの食べものは多くても」
「陸軍さんは、っていうんだな」
「大和煮はそうかしら」
「缶詰だからそうかもな、たださ」
 薊も陸軍については首を微妙に傾げさせて述べた。
「陸軍さんって大抵白米ばっかりだったらしいから」
「脚気になるわね」
「そうですね」
 白米だけと聞いてだ、朱美も伸子もすぐに言った。
「栄養バランスかなり悪いわよ」
「ちゃんとおかずも食べないと」
「そうだよな、本当におかずも食わないとな」
 どうかとだ、薊もそのことは言う。
「駄目だよな」
「質素なのはいいけれど」
「ちゃんと栄養バランスも考えないと」
「さもないと満足に戦えないわよ」
「脚気って怖いですから」
「だよな、脚気は死ぬっていうしな」
 薊もこう聞いている、実際に脚気は死に至る病である。江戸時代では謎の死病としてかなり恐れられていた。
「だからな」
「そこもちゃんと食べないとね、栄養を考えて」
「脚気だけじゃないですけれど」
 栄養の関係でなる病気はだ。
「白い御飯は確かに美味しいけれど」
「それだけは絶対に駄目ですね」
「だよな、陸軍さんもそうした知識なかったんだろうな」
 薊は首をやや傾げさせつつ述べた。
「そこ気になるな」
「そうよね、じゃあそろそろね」
 ここで朱美は部屋の時計を見て二人に言った。
「時間だから」
「ああ、寝るか」
「もういい時間ですね」
「ええ、寝ましょう」 
 こう二人に言った、二人も先輩の言葉に応えてだった。
 三人共寝る準備に入った、薊の一日はこれで終わった。
 そして次の日だ、薊は一限目が終わると裕香と共に菖蒲のクラスに行った。裕香は付き合いで同行した。
 薊は菖蒲にだ、昨夜の朱美達と話したことをそのまま話した、すると菖蒲はその脚気についてこう答えた。
「日清戦争、日露戦争では脚気でかなり死んだわ」
「実際にそうなんだな」
「ええ、陸軍さんの方でね」
「白米ばかり食ってか」
「海軍では早いうちに脚気の原因がわかっていたわ」
 そうだったというのだ。
「食生活にそれがあったと」
「じゃあ白米止めて麦食ったんだな」
「士官は元々洋食だったからパンを食べていたわ」
 脚気は麦を食べていればならない、このことは既に三人の知識の中にある。
「そして兵隊さん達も麦飯を食べる様になって」
「脚気にならなくなったんだな」
「そう、ただね」
「陸軍さんはそれを知らなくてか」
「一人頑迷に海軍さんの主張を退けている人がいたのよ」
「誰だよ、その頑固野郎」
「森林太郎といったわ」
 菖蒲はクールな口調でこの名前を出した。
「当時の陸軍軍医総監よ」
「あれっ、確か」
 その名前を聞いてだ、裕香が言った。 
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