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連邦の朝

作者:連邦士官
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第三十八話 工業化への道

 
前書き
スランプです。

毎回見ていただいて有り難うございます。 

 
ワイアットの政策は、概ねうまくいっていた。

ワイアット等の連邦高官は、コロニー落としで死んだ政治家代わりをしていた。その経験や記憶にない記憶が経験として、不毛な土地を開発、開拓していった。

「次の議題は、鉄の橋を数年間の間に建設すると言う事についてだが。」
ワイアットの議会に置ける腹心のゲオルグの顔には、自信が溢れていた。

「鉄の橋なら、世界に誉れ高い我が国のメイジ技術ならば直ぐに出来ます。それに鉄の橋を建設する意味が分からないのですが。」
細身の女性、ジュリアが話した。

何時もの裏の最高議会通りには行かなかった。最近の領土発展や防諜、他国の挑発行為などの対応に忙しく、ワイアットは側近中の側近ではなく、貴族議会でゲオルグの政党の議案として提案した。

「しかし、予算はどこから?鉄の橋より石の橋か、レンガの橋の方が安く済みますぞ。それこそ、今は農民が出稼ぎ先を探している時期ですからな。」
恰幅が良く気の良い商人の様な風貌のガルバルディがゲオルグの提案に難色を示した。

この発言に、議会全体から野次や賛同等で煩くなったが議長の「静粛に」と木槌を鳴らし注意した事によりある程度落ち着いた。

この議会内では、ワイアットの威光が存在するとはいえ、ゲオルグ自体は政党の単なる一党首であり否定的な発言も保証されていた。

急進的だがどこか保守だったりするワイアットの思想だが、貴族は邸宅と生活する上で必要な領地以外を買い上げられた為(借金の帳消し)に、ワイアットへの潜在意識下での反発は激しかった。

しかし、その収入に国からの施しで保障された生活を送る貴族達は同時にワイアットを認めていた。

ワイアットが執務をしても、彼ら貴族の精神に置ける長は、マリアンヌであった。

外国から来た若いワイアットより、マリアンヌが貴族の上に形だけでも立っているを方が反発も少なかった。

トリステイン貴族は、王に仕えている訳ではなく、トリステインの“正統”な血統を継ぐものに、何時も仕えてきたのだ。

故に、貴族達から見て、正統性を感じられなければ廃するのも辞さない他国から見てもなかなか過激な国だった。

貴族派閥が、暗躍暗闘するガリアや弱肉強食のゲルマニア、両国の特質を持つロマリア等灰汁の強い国々が競う、この世界では普通なのかも知れないが…。

「一般の民だけで、つまり魔法を使わずに鉄橋を作るのです。」
ゲオルグのこの一言だけで議会に激震が走った。

議会全体が絶句し、動かない中で
「そんな、ことが可能なのですか?」
まるでナナフシのような細さの男でジュリアの従兄弟、ジュリアンが聞いた。

「数年もあれば可能です。その時、我らがメイジは、今の様に資源の生産が主ではなく、高等な仕事を任されているでしょう。」
ゲオルグは、水を一口含み顔を歪めた。

「残念かも知れないですが、時間です。議決を取るので静粛に。」
貴族議会議長、ランドの声と木槌の音が動揺している議会を黙らせた。

「賛成挙手。」
ランドの声が響き、大多数の議員が挙手した。

「書記官、数える迄も無いな。」
ランドは、カツラを揺らしながら木槌を叩いた。

「本提案を賛成多数により、可決し今日の議会を閉廷する。」
ランドは、書記官から記録を貰い、閉廷を宣言した。

こうして、本日も茶番劇は終了した。

廊下を歩く中で、一人の議員がゲオルグに、
「根回しは出来ましたので、お約束通り貴族社交補助予算に、補正予算を明日の追加議案に。」

ゲオルグは、苦笑しながら
「約束は、果たす。紳士は約束を守るものだと、我が主の口癖だからさ。」
と言った。

この議員は爵位の割には、巨大な邸宅を先祖が作ったからものだから維持費とさる出来事で借金が出来ていたのだ。出来ていたと言っても露骨すぎる利権を急かす議員を見て、魔法の才能が無い貴族は生活が辛いを感じた。

「そうですか。」
安堵の笑みを浮かべる議員は、ゲオルグとは別方向へと消えていった。


ゲオルグは、議会の通路にある、歴代の王の像が飾られている部屋に入った。

「確か、ここに……。」
ブリミル像の裏側にある部分に、魔力を流すと歴代の王の像が動き、隠し通路が姿を晒した。

ゲオルグが、ブリミル像から離れ部屋の真ん中のタイルを杖で、魔力を通しながら叩くとブリミル像の沈み込み通路が出てきた。

ゲオルグは、この見事な仕掛けにほぅと感嘆の声が漏れた。

この通路は、ワイアットが以前使っていた通路に繋がっており、ゲオルグは通路の初めにある扉に、懐から首飾りを出して中央の飾りを動かし、中から宝石が顔を見せた。

その宝石を扉の窪みに押し付けると、扉が自ら動き出した。

迷いやすい地下通路をゲオルグが、歩きながら目的地に着いた。
そこは、鏡の前だった。ゲオルグは、鏡の縁を叩きながら何かを呟いた。

そうするとたちまち、ゲオルグはワイアットの執務室にある巨大な鏡の前に立っていた。

ワイアットは、ゲオルグの報告を受けながら次は、何の政策を通すか考えていた。 
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