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戦姫絶唱シンフォギア/K

作者:tubaki7
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EPISODE21 笑顔


~AM 10:00 特異災害対策機動部二課~


先日の一件から一夜明けた朝。雄樹は二課にて響のことを聞いて肩を落とす。弦十郎の話によれば先日の暴走のことでかなり落ちこんでいるとのこと。行って励ましてあげたいが親友の未来でさえ取り合ってはくれないと翼から聞かされどうしようもない状況となっている。未来がダメなら自分が行ったところでは目に見えている。何もできない自分がもどかしいが、今は時の流れに頼るしかない。


「・・・・雄樹さんでも手におえないこと、あるんですね」


がっくりとして出て行く雄樹の後姿を見送りながら翼が呟く。その声色はどこか明るいものだった。


「なんだか嬉しそうだな?」


不謹慎だった。心の中で彼に謝罪しながらもこぼれる笑みを抑えようとはしない辺り彼女には大きな変化があったかもしれないと緒川を含めた二課のスタッフは思う。これがいい傾向なのかどうかはまだ確信するところではないが、それでもいい方向であってほしいと思う。

ともあれ、彼女のこういった雰囲気は珍しい。それが喜ぶべきところではないのが少々ひねくれている気もするがこれはこれでいいのかもしれない。


「あの人も人間なんだなって」


続けられた言葉から翼が雄樹のことをどう思っていたのかが分かる、そんな一言だった。


「誰でも笑顔にしちゃうような人だから、てっきり何かしらの妖術でも使っているのかと」

「翼、さすがにそれは酷くないか?」

「そうですか?」


少なくとも自分と同じ考えの人はいるはずと疑わないあたり性質が悪いかもしれない。


でも、


「この世に完璧な人間なんていないさ。みんな悩んで成長していく・・・・そういうものさ」


どこか自分も経験しているかのような口ぶりに翼は首をかしげる。それを見て弦十郎はニッと笑い翼の頭を荒く撫でる。その姿は二課の司令としてではなく一人の叔父としての男の姿があった。













~AM 11:00 公園~

「はぁ・・・・」

「雄樹さんが落ち込んでる・・・・だと・・・・!?」

「俺未来ちゃんのキャラが時々わからなくなるんだけど」

「それは多分まだまだ雄樹さんが子供だってことですよ」

「俺、一応年上なんだけどなぁ・・・・」


中身のない会話をしながら休日の公園でベンチに腰掛ける雄樹と未来の二人。この組み合わせが非常に珍しく見えるのは響が間にいないからだろう。なにか物足りない感じがするのは本人たちも感じることである。


「響もそですけど、雄樹さんまで悩んでるなんてホント何があったんですか?」

「話せば長くなるんだけど」

「あそこのクレープが食べたいです」

「俺人付き合い考えようかな」


だが聞いてもらうのだからお礼はしなくてはならない。雄樹はクレープを買って未来に手渡すと淡々と語り始めた。もちろんシンフォギアだの聖遺物だのは別のものに変えてだが。


「そんなことが・・・・だから響、昨日は遅かったんですね。寮長さん丸め込むのに大変だったんですよ?」

「丸め込むって部分が非常にきになるんだけど」

「気にしたら負けですよ」


でも、ホントに苦労しましたと未来が少々ふくれっ面になる。それを見て苦笑しんがらごめんと言うと別にいいですとクレープを頬張る姿はどこか響に似てきたなと少しだけ微笑ましくなりつつ視線を空へと投げる。


「・・・・父さんだったら」

「え?」

「父さんだったら、こんな時どうするのかなって」


今はいない父の姿を思い浮かべながら空を見上げる。どこまでも透き通った曇りない青空の向こうに逝ってしまった存在に想いを馳せながらつぶやかれた雄樹の言葉に反応したのは父ではなく隣でかわいらしく小さな口でクレープを頬張る幼馴染だった。


「雄介さんがどうとかじゃなくって、雄樹さんはどうしたいんですか?」

「え?」

「なんていうか、響も雄樹さんもらしくないです。二人して“本当は何に悩んでいるのか”は訊きませんけど、二人がくよくよしてるとこっちまで曇ってきます」


クレープを平らげてスッと立ち上がり雄樹の前に仁王立ちする。そしてビシッと効果音でもつくくらいに此方を指差して、


「二人にそんな姿は似合いません。いつもニコニコ笑って、他の人も笑顔にする・・・・それが二人の魅力だって思います。そんな人がくよくよしてたらこっちも沈んできちゃいます。だから、笑ってください。私にはこれくらいしかできませんけど、でもこれくらいなら、なんとかできますから」


笑顔でサムズアップ。その姿にしばし見入ったあと何かを見出したように明るくなり立ち上がる。


「わかったよ!やっぱり未来ちゃんは頼りになる!」

「これでも二人の保護者してませんから」

エッヘンと胸を張る未来にうんうんと頷く雄樹に期待した返しがなかったことと、自分の言葉と行動に恥ずかしくなって笑う。やっぱり見様見真似でこの人とマネはするもんじゃないなぁと軽く後悔するも、いつの間にどこかかぎこちなかった笑顔も自然と――――いや、もっと笑えるようになっていたことに気づく。


 やっぱり敵わないや・・・・。


と、そこで携帯のバイブレーションが鳴ってところで雄樹は少し席を外す。戻ってきた雄樹の顔が少し真剣なものになっていることに「ああ、またいつものか」と納得する。


「また“お仕事”ですか?」

「え、あうん。ちょっとね」

「・・・・わかりました。響のことは私に任せてください」

「うん。ありがとう―――――あ、未来ちゃん!」


去り際に此方に振り返る。


「響ちゃんに伝えてほしいことがあるんだ」

「いいですけど、なんて?」

「えっとね・・・・・――――、だよ!」

「・・・・わかりました。いってらっしゃい!」

「行ってきます!」


まったくもう・・・・。しょうがない人だと笑いながら背中を見送ると未来も少しだけ気合いを入れ踵を返す。さて、部屋で布団の精になりつつある親友にどうやってこの一撃をお見舞いしてやろうかと危ない方へ思考を変換しつつ未来はもう一度だけ振り返って雄樹が去ったあとを見る。


「・・・・ちょっと倍率高いかな?」


そんなことを呟いた。














街中を疾走する黒いマシン。緊急車両扱いとなっている為信号や渋滞でもスイスイと駆け抜けながら目的地へと向かう。ノイズ発生の知らせを受け現在は翼が先行中。しかしキメラに苦戦しているとのことで雄樹はアクセルのスロットをさらに開く。人気のない場所に近道で入るとクウガに変身するとその意思に反応してゴウラムが現れて合体する。

 見えてきた光景にスピードを緩めることなく突き進みノイズを灰へと変える。翼の近くまで接近すると程よい距離でバイクから立ち上がり、跳んで蹴りを繰り出す。吹っ飛んだキメラを翼が追撃し雄樹は近くの棒を掴んで青へと変わる。その際、またしても電撃が走りベルトと武装、そして身体に金色の装飾が加わる。

飛び上がった翼が頭の部分に跨って剣を突き刺す。しかしそれでもキメラを灰へとかえることは難しい。


『翼ちゃん、一緒に!』

「はい!一、二の三で行きましょう!」


首から飛び降りて背後へとまわる。大刀をその手に携えて構え、二人同時に踏み出す。頭に刺さった剣に悶え苦しむキメラはこれに反応すらできずに二人の攻撃を喰らう。雄樹がさした部分からは封印エネルギーが身体に広がる。二人で声を合わせて「せーのッ!」で放り投げる。空中で爆発し、大量の灰が降り注ぐのを見て息をついた。


「その様子だと吹っ切れたみたいですね」

『うん。まあね』

「それから、立花から連絡です」


そう言われてメールを見る。いつの間に連絡先を交換したんだろうと思いつつその内容を見る。


――――ありがとう


その一言だった。


「それと、こんな画像も」


添付されていたのは未来とクレープを食べている写真。楽しそうなその笑顔に顔が綻ぶのを耐えることなく仮面の中で笑った。











~PM 18:00 公園~


クレープが食べたくなったのでとりあえず公園に来てみるも案の定この時間帯だ、移動ワゴンももうない。だよなぁとため息をついてまた明日来ることを固く誓うとどこからか泣き声が聞こえてきてあたりを見回す。だいたいの位置を絞るとそこへと向けて足を運ぶ。見えたのは幼い二人の子供。男の子はまだ小学生、女の子は男の子よりもまだ下に見える。そして泣く二人を見てどうしていいかわからずにあたふたする銀髪の少女が一人。


「あの、どうかした?」

「え・・・・・って、おまえ!」


 遭遇したのは迷子で、宥めていたのはあのネフシュタンの少女で名前は雪音クリスという女の子だった。迷子になっていたこの兄妹を発見したクリスは関わりたくないとスルーしようとするも泣きわめく女の子に耐え切れずに関わってしまった。事情を訊くと父親と逸れてしまい迷子になってしまったとのこと。なだめようとするクリスと男の子だったがやがて男の子ももらい泣き。どうしていいかわからずにいるところに雄樹が通りかかったという経緯だ。

それを見て何かないかと探った結果取り出したのはお手玉。なんでそんなものがポッケのなかから出てくるんだと軽く不審に思う。


「よっほ、はっと」


ぽいぽいとジャグリングする雄樹。それを見た兄妹はやがて泣き止み、「おお~」と拍手する。よく見るとクリスもやっており目が合うと顔を紅くしてサッと目を逸らした。それから兄妹の父親をさがすこととなり、クリスと共に公園を歩く。薄暗くなる公園内をぐるりと一周するかというところで、待望の父親と対面。兄妹を無事引き渡した後、クリスと公園をフラフラと歩く。その際、二人に会話はなかった。というのも、先ほどまではあの兄妹が雄樹と会話して盛り上がっていたくらいで実質クリスは相槌を打つていどで会話には参加していない。

なのでその要因がいなくなったことですっかり静かになってしまった。雄樹も雄樹で彼女からの言葉を待っているため会話はなおさらない。

 しかし、しばらくしてクリスがようやく口を開いた。


「・・・・アタシさ、追い出されたんだ」

「どこから?」

「フィーネのとこから。失敗続きな使えない子はいらないって」


フィーネ・・・・それが彼女の上司か。そう探りを少し入れたところで雄樹は思考を切り替える。これ以上はしたくない、と思ったからだ。


「酷い上司だね」

「・・・・でも、アタシにとっては全てなんだ」


その言葉がどんなことを意味しているのかは分からない。だが、それに込められた重さはなんとなく伝わってきた。


「・・・・だったら戻ればいいんじゃない?」

「おまえ、アタシのこと捕まえなくていいのか?」

「俺、別にそんなことしたくてお話したいって言ったわけじゃないから。ただ君のことが知りたかっただけ」

「・・・・ヘンな奴」


よく言われると苦笑。


「・・・・おまえのせいだぞ!おまえが訳わかんねーことばっか言うからいろいろ考えてあたまの中ぐちゃぐちゃになっちまったじゃねーか」


どうしてくれるんだと詰め寄ってこられても雄樹になにかできるわけでもなくまた苦笑するしかない。それにクリスは「うぅ~」っと唸りベンチに座る。


「ンでこんな悩まないといけねーんだよ・・・・」

「・・・・たぶんさ、今まで君は素直すぎたんじゃないかな?・・・・もっともっと悩めばいいんだよ」

「此処で悩んでたら、答えがでるのか?」

「でないだろうねぇ・・・・」


のんびりとした口調にがっくりとため息をつく。


「だって、そんな簡単にでたら悩む必要ないじゃない。何年かかったっていいんだよ。みんな悩んで大きくなるんだから。俺も、君もね」

「・・・・けど今のアタシには、悩む場所さえない。全部、ホントに失くしちまった・・・・」

「なくなってなんかないよ。だって、今君はここにいるじゃない」

「え・・・・?」


ふと雄樹を見るクリス。そこには穏やかな顔で笑う雄樹の笑顔があった。


「きみの場所はなくなってなんかない。だって、こうして今俺の隣にいるんだし。クリスちゃんが生きている限りずっと、今立っているそこが君の場所だよ」

「・・・・アタシの、場所・・・・」

「その場所でさ。自分が本当に好きになれる自分を目指せばいいんじゃない?ねっ」


笑顔でサムズアップ。それをまじまじと見つめ、クリスは問う。


「・・・・おまえは、今の場所に満足してるのか?」

「・・・・実は言うと俺もまだまだなんだよね。だからまだ探し中なんだけど、今はみんなが笑顔でいられるようにしたい、っていうのが目標かな」


笑顔―――――自分はいつからそんなことを忘れてしまったんだろうかと考える。フィーネに拾われて、いろいろとあって、沢山酷いことをしてきた。そんな自分に、居場所なんてあるのだろうか?


「それにさ」

「ん?」

「俺はクリスちゃんにも笑顔でいてほしんだ」

「アタシにも・・・・?」

「うん。だって、みんなに笑顔でいてほしいから」


そう言って何やらメモを書いて渡す。


「困ったらいつでもここに来なよ。あんまりおもてなしらしいものはできないけど、俺にできることがあったらなんでも言って。もう友達なんだし」

「は?イヤ、アタシは――――」

「それじゃ、またね!」


そう言って去っていく雄樹。強引に渡されたメモにはとある住所が記されているとともに軽い自己紹介とイラストが。そのイラストがおかしくて、笑う。


ああ、なんだ。まだアタシ、笑えるんだ・・・・


「・・・・五代雄樹、か」


自分のものとは思えないくらいに優しい声色が闇に溶けた。  
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