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戦姫絶唱シンフォギア/K

作者:tubaki7
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EPISODE10 青龍


~同時刻 公園~


普段はカップルで賑わっていることでちょっとしたスポットな公園。私立リディアン音楽院からほど近いこの場所ではそんな噂もありこんな時間でも比較的人通りはある場所なのだが今はその気配は微塵もない。発せられた第一級特異災害警報により周辺の一般人は避難を完了し人影はなし、その報告を聞いて五代雄樹、クウガは安堵の息をつく。誰も巻き込まれい、そのことが彼にわずかながらの安心感を与える。

 だが、焦りは消えない。


「どうしたよ!?テメーの実力はやっぱその程度かァ!?」


空中に浮かぶ一人の少女の声。白いパーソナルカラーに紫色の装飾の入った特徴的な鎧は一年前に奪われたあのネフシュタンの鎧だ。記憶の中から今目の前で猛威を振るっている少女があの時鎧を奪取した犯人だと確定する。話してわかる――――相手だったらよかったがあいにくと彼女に自分の言葉が届かないのは一年前の接触で知っている。今回は本格的に戦わなくてはいけないのだが・・・・


『クッ・・・・、やっぱり青じゃ弱い・・・・!』


報告を受け、現場について変身してみればいきなり青。スピードやジャンプ力、俊敏性は赤より優れている分、パンチ力が大幅に削られている。そのせいで一体のノイズを灰化させるのに何発も撃ちこまなければならない為あっという間に囲まれてしまった。

要因はこの青の力の特性を理解していないことと、あの“杖”。完全聖遺物――――“ソロモンの杖”。ノイズを呼び出し、意のままにあやつることのできるあの杖を破壊か奪取しない限りこの状況は続き、やがて万事尽きてしまう。幸い強化された俊敏性とジャンプ力のおかげでなんとか回避とキック技で凌いでいるもののこれでは最悪の事態は免れない。

なんとかしないと・・・・・。焦る雄樹に、さらにノイズが迫る。


『フッ!』


ジャンプして脱し、キックにて吹っ飛ばす。それでも、倒すまでにはやはり至らない。


「さっきっからポンポン飛び回りやがって・・・・!」


そこでシビレを切らせたネフシュタンの肩、備わっている棘が伸び、ミサイルのように発射された。


「消飛べ!」


弾数にして、約8発。無差別な軌道の為弾道計算はしていないのがわかるが、それはあえてのこと。計算された弾道であればこの青いクウガなら読んで回避は簡単だ、だがこの読みにくい弾道ではどう回避していいかわからない。防御はスピードが強化されているということはおそらく防御も削られている、その観点から推察すればこれを防ぎきるのは・・・・不可能。

思考の時間は1秒。この間に、ミサイルは眼前へと迫っていた。勝利を確信し歪んだ笑みを浮かべるネフシュタン。


「さ・せ・る・かァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」


けたましい二つの咆哮、聞こえたと思った直後に目の前に現れる二つの影がミサイルを全て撃ち落とすのが見えた。巻き上がる煙を剣を振るうことで薙ぎ、そのシルエットが月明かりに照らされる。

青とオレンジの二色。風鳴 翼と立花 響の二人だ。


「おまたせユウ兄!助っ人響参上!」

『た…助かったぁ~・・・・死ぬかと思ったよ』

「その割にはそう見えませんけど」

『…信じてたから。二人なら、きっと来てくれるって』


並ぶ雄樹の言葉に翼は小さく笑う。それを見て雄樹もまた笑う。どうやらうまくいったらしい。


「テメーら・・・・よくも・・・・!」

『翼ちゃん、相手はあのネフシュタンだけど…行ける?』

「当然です。私は・・・・もう、大丈夫ですから」

『・・・・そっか』


再び安堵の息を漏らす。やっぱり響にまかせてよかったと呟いてから、その響から「そうだ!」と声があがる。


「了子さんからの伝言。邪悪なる者あらば その技を無に帰し 流水の如く邪悪を薙ぎ払う戦士あり、だって」

『・・・・えっと、どういう意味?』

「さっぱりわかりません!」


サムズアップ。使いどころ間違えてるような気もするがここはスルーしよう。


「さっきっからあたしのこと無視してんじゃねー!」

「すまんな。これがこの二人の空気感だ。どうすることもできん」

「おまえは至ってまともなんだな」

「こういうのが増えるというのはどうも、な。それに、私にはやるべきことがある・・・・」


静かに剣を構える翼。しかしネフシュタンは翼のことなど眼中にないようで真っ先に鞭で雄樹を攻撃し、あっという間に孤立させる。


「おまえらに用はねぇ。アタシが用あんのはアイツだけだ!」


杖からノイズを放ち二人を抑えて雄樹の方へと向かう。追撃しようとするも行く手をノイズに阻まれて身動きが取れない。毒づく翼に響が背中合わせになる。



「翼さん…」

「・・・・飛ぶぞ立花。今は私とおまえでツヴァイウィングだ!」

「ハイ!!」


同時に踏み出し、歌を奏でる。それは天高く昇り、夜の公園に響く。翼を得た雛鳥はその身を軽やかに躍らせ、闇を無に帰す。その身を逆光で照らし背に纏うはまだ幼きフリューゲル。しかし力強く耳に聴こえてくるその歌には――――たしかな“血”が通っていた。


『すごい・・・・凄い!』


興奮にテンションを上げる雄樹。あのツヴァイウィングがまた見れるとだけあって戦いの中であることをすっかり忘れてその歌声に聴き入る。


「だから無視ぬんなー!」


鞭による攻撃を回避し、ネフシュタンと対峙する。曲にテンションをあげている場合ではない。今目の前にいるのは発動した完全聖遺物二つ。いくらアマダムがおなじ完全聖遺物だとしてもまだ使いきれていない内は・・・・!


《雄樹君、聞こえる!?》


通信で了子の声が聞こえてくる。


《響ちゃんに伝えたのともう一つ!水の如き戦士、長き物を用いて邪悪を払う。いい!?長き物よ!》

『水の如き戦士!?長き物!?』


そんな難しいことを言われても・・・・と思考する雄樹の目に飛び込んできたのは池の手すり。それに何かをひらめいた雄樹はそれを蹴りあげて握る。


『これか!』


軽く使い勝手を確かめる。すると手首の青い結晶が輝きただの棒が青い、武器へと変わる。


「そんなもので!」


再び放たれるミサイル。それを携えた棒で薙ぎ払い、地面へと逸らす。その光景を見た響が「かっちょいい~!」と目を輝かせる。


「だったらこれでどうだァァァァァァァァァ!!」


これでもかと杖からノイズが放たれる。ふつうなら悪夢以外の何物でもないが今の雄樹にはそんなものはなんの意味もなさない。武器を縦横無尽にふるって次々に灰に変え、跳躍。ロッドの先端を雄叫びとともに突出し、間合いに入られたネフシュタンはそれをもろに喰らう。胸に古代文字が浮かび上がると鎧に亀裂が入る。それに伴い、本部でその映像を見ていたオペレーターの藤尭が報告をあげた。


「ネフシュタンの活動レベル、著しく低下!」

「他の浮遊機能を除いて全て停止、これは・・・・!?」

「やはり了子君の推察通り・・・・アマダムは本来対ノイズ用ではなく、対聖遺物用の聖遺物・・・・!」


毒づく相手にチャンスの状況。これなら一気に勝負を決めることができる。だが雄樹はそうとはせず、あろうことか構えを解いた。そのことに翼と鎧の少女は驚愕する。


「・・・・どういうつもりだ?」

『俺はきみと戦いたいわけじゃない。だからこれ以上は(こっち)じゃなくて言葉にするよ』


棒を捨て、敵意がないことを示す雄樹。その様に少女はただただ驚くばかりだ。以前の翼であればここで一括するか自らが変わって戦闘するところだが、そうとはせず二人の行く末を見守りつつ自分は目の前のノイズを倒すことに専念する。そのことに心の中で感謝しつつ雄樹は仮面越しに相手を見る。サングラスのようなバイザーだ表情を読み取ることまではできないがよく見れば響や翼と同年代くらいの女の子だ。

さっきの一撃は痛かっただろうか。怪我はしてないだろうか。そんなことを考えていると相手から反応が返ってきた。


「なんなんだテメーは!?さっきっからやる気あんのか!」

『戦うつもりはないよ。だって、同じ人間だから』

「・・・・それだけか?」

『うん、それだけ。他に理由なんてないよ。だから戦わない』


キッパリと言い切る雄樹に少女はギギギと呻る。

 調子が狂う。さっきの一撃のせいか?それとも今日はそういう日なのか。そもそもこいつはなんでさっきっからこうなんだ。命のやり取りをしてるってのにまるで恐怖とかがない。まるで、その行為そのものに対しての拒絶があるみたいに乗り気じゃない。さっきもあの二人が来た時に心の底から安堵したと同時に少し悲しそうにため息をついていたのを少女は思い出す。


「あ、アタシはアンタの敵で、あの殺戮を起こした張本人だぞ!なのになんでそんなのんきにしてられんだよ!?ここのノイズ達だって、アタシの命令一つですぐにほかの人間を襲い始める!これがどういうことを意味すんのかわかってんのか!?」

『うん。わかってるよ』

「だったらなんで――――」

『理由なんてないよ。だから殺させないし、これ以上きみに人殺しもさせない。そんな悲しい顔で笑ってるきみに、こんなことさせない』


力強い言葉と意志に押し黙る。

 アタシが悲しい顔してる・・・・だと?なんで・・・・なんでそんなことがお前にわかるんだよッ!


「ふざけんなァァァァァァァ!!」


杖からノイズを発射して空中へと逃げる。雄樹はそれをもう一度ロッドを形成して灰にするが、もう気づいたときには彼女の姿はなく、辺りを見渡しても影すらない。通信からも反応をロストしたと報告があった。

 これにて、戦闘は終了。一連の騒動も無事納まったかのように見えたが・・・・――――


「ハアァァァァァァァァァ!」

「おりゃァァァァァァァァ!」


何故か直後に拳と剣をかわす二人。さっきまでのコンビネーションはどこえやらだが、雄樹はそれをにこにこしながら見つめているばかりでとめようとはしない。事後処理に来た弦十郎と緒川もそれに割って入ることはせず、雄樹と同じように見ていた。焦りまくるスタッフを尻目に、どこか楽しそうにする二人を見る。


「・・・・翼さん、やっぱり変わりました」

「そうだな。・・・・若干キャラがブレつつある気もするが」

「でもいいことですよ。やっぱり笑顔が一番ですから!」


そう言ってサムズアップする雄樹に二人は呆れたようにため息。


でもま、二人がいいならそれでいか。


「って、ああ!響ちゃん時間!もう未来ちゃんカンカンだよ!」


送られてきたメールの内容から未来の機嫌が最悪になりつつあることを響に伝える。肉体言語で語り合っている最中だがそれでも響からしてみればかなりの重要度、途中でやめたことに「ええっと・・・・」とあたふたするが翼の笑みに表情を明るくして「ありがとうございました!」と勢いよく一礼し、雄樹と一緒に駆けて行く。騒がしい奴だと背中を見送りながら、自身もギアを解除する。


「…立花 響、か」


呟いて、雄樹がこちらを振り向いているのに気づき小さくサムズアップをする。それを見た雄樹が笑顔で同じように返す。


「ホラ、ユウ兄早く!あ、翼さん、また後で~!」

「気を付けて行くのよ~!」


手をふる響にそう言う。


「・・・・奏。私、もうちょっとだけ素直になってみるよ」


遠い空の向こうにいるであろう親友にそう呟き、翼は踵を返した。  
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