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万華鏡

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第七十八話 バレンタインデーその三

「ホラー映画かよ」
「アニメらしいわよ」
「ホラーアニメかよ」
「恋愛アニメらしいわよ」
「ってこういう手のかよ」
 弟はテレビ、ゲームの画面に顔を戻して言った。
「それで包丁に刺されたりか」
「鉈でお腹斬られたりね」
「嫌な結末だな」
「あと飛び降りして死ぬ瞬間に目が合うとか」 
 そうしたこともある、というのだ。
「後はね」
「まだあるのかよ」
「首を鉈で斬られて」
「また鉈かよ」
「切断はされていないけれど」
 それでだというのだ。
「半ば斬られて血を噴き出してね」
「死ぬんだな」
「そうしたアニメ、ゲームでもあるらしいけれど」
「嫌なアニメだな」
「原作はゲームらしいわよ」
「それ何てアニメだよ」
「スクール何とかっていうらしいわ」
 琴乃はチョコレートを作りながら弟に話した。
「何でもね」
「スクール何とかなあ」
「私は観たことないけれど」
 それでもだというのだ。
「クラスの男子で観てた子がいて」
「その人から聞いたんだな」
「凄いアニメらしいわね」
「聴いてるだけでそれがわかるよ」
「そうでしょ、とにかくね」
「女の子を怒らせるとか」
「大変なことになるわよ」
 そうなるというのだ。
「そこまでいかなくてもね」
「鉈で腹斬られたりとかか」
「ちなみにそれやられたのは女の子だから」
 男キャラではなく、というのだ。
「何か鉈でお腹斬られて。中見られて」
「斬ったその中を!?」
「そう、それで誰もいませんよって」
「おいおい、それ怖いにも程があるだろ」
「どういうことかわかるわよね」
「女の人のお腹の中だよな」
「そうよ」
 琴乃はこのことをあっさりと、自分でも想像すると怖いものがあるのであえてあっさりと話した。
「女の人のね」
「それって赤ちゃんだよな」
「そういうことよ」
「それもう恋愛ものじゃないだろ」
「ホラーに思うわよね、あんたも」
「マジで怖過ぎだろ」
 ゲームをしながら言うのだった。
「俺そんなの観たくねえよ」
「プレイすることもよね」
「絶対ににしたくねえ」
 断言した言葉だった。
「何があってもな」
「あんたの趣味だとそうよね」
「俺は純愛なんだよ」
 そういう方向性が好きだというのだ。
「例え女の子と同時に何人も付き合っててもな」
「それで純愛!?」
「恋愛ゲームはそうなんだよ」
 数人のキャラの同時攻略を進めていく、恋愛育成ゲームにおいてはそれも当然のことである。
「だからな」
「あんたみたいなのでもいいのね」
「そうなんだよ」
 こう姉に力説するのだった。 
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